友人のお願い
ここは忘れさられた小さな社、草は生い茂り社は傾き鳥居は足が片方折れている。
この社、昔は子供達が遊び回ったり祈願を願いに来る人々が多く居た社なのである。
しかし、時は過ぎるものなのだ。
時代が進化するにつれ子供達は外で遊ばなくなり、大人達は車など文明を利用する様になり社へ訪れる人は減って行き今ではこの有様だ。
そんな社へも訪ねて来る物もいる。
「お〜い、ろ〜ん居るか〜?」
そんな緩い感じに社へ呼びかける一匹の青みがかった白猫が居た。
その呼び掛けに驚くように目を見開きながら一匹の狐が社から現れる。
「おぉ!どうしたんだよスグお前から訪ねて来るなんて珍しい事もあるもんだな」
「そんな事ないだろ?」
猫は笑いながらそう言った。
「いいやそんな事ある現に俺が呼んでも滅多に来ないじゃないか」
狐はどこかふてくされるように猫を見る。
「そうか?まぁいいやそんな事よりだろん!」
「そんな事ってお前な〜」
興奮気味に話しかけて来る猫に対して狐は困った用にその言葉を受け止める。
「俺、旅に出るわ!」
「はぁ!?」
猫の唐突な言葉に狐は目を点にする。
それはそうだ、誰しも予告も無しに旅立つと言われれば驚かざるおえない。
「そんでさ、ろんに頼が...」
「ちっちょっと待てスグ!今何て言った!?」
狐は器用に前足を出し猫の言葉を遮った。
「えっ?ろんに頼が?」
「そこじゃねぇ!?その前だ!そんなお約束はいらないんだよ!?」
前足を社の床にバンバンと叩きながら狐は言う。
「あ〜旅にでる?」
首を傾げながら猫が答える
「そう!それだよ!それ!旅に出るって急にどうしたんだよ!あれか?何時ものあれなのか?」
そう言いながら猫の肩を揺らす。
「あはは、そうだ!何時もの放浪さ!」
肩を揺らされながらも猫は何故かドヤ顔を決めながら言うのである。
そうこの猫、猫だけに自由気ままの神出鬼没物なのである。
「ドヤ顔するなし!あ〜!もう珍しく来たらこれだよ」
前足を目に当て空を見上げる狐
「そんな事はどうでもいいんだよ」
「よくねぇ!」
笑いながら言ってくる猫に狐はやや怒りながら言う。
「まぁまぁ、でさ頼があるんだわ」
「頼みってなんだよ〜めんどくさい事は勘弁だぞ〜」
狐はもうこの猫に何を言っても無駄だと悟り諦め気味に話を聞くのであった。
「流石俺の友人、でさ頼みってのがさ一応ろん神様じゃん?妖狐だけど?神様に願いを叶えて欲しい子を連れて来たからその子の願いを叶えて上げて欲しいんだよ」
「一応って...俺、普通に神様だからな?」
呆れた感じで猫の顔を見て狐は驚いた。
猫の顔が物凄く真面目なのだ。
いつもヘラヘラ、ふらふらしている猫が真剣な顔なのである。
いつになく真剣な顔でお願いしてくる猫に狐はただならぬ思いを感じる。
そんな顔を見ていると本当の頼みなのだとすぐに察しがつくのだった。
「それで?願いを叶えて欲しい子って何処にいるんだ?見た感じ誰も居ないが?」
ろんは辺りを見渡すが誰も見当たらない。
「居るだろ?お前の足元に」
スグが前足でろんの足元をさした。
ろんはスグが差す方に視線を向けて見るがやはり其処には誰の姿もない。
強いてあるとすればうちの神社に生茂っている雑草と風に載ってやって来た花達ぐらいだ。
「いや、誰もいないぞ?」
ろんは首を傾げる。
「お前はそれでも神様かよ」
スグは呆れたように言って前足を目元を覆った。
「失礼だな!? 神様だよ妖狐だけどな?」
社の床をベシベシと叩きながら抗議の声を上げる。
「妖狐だから分かるだろ、そこの花だよ」
スグは呆れたように言った。
「花? あーそう言う事ならそうと言えや〜準備がいるんだぞ?」
そう言ってろんは納得したように社から降りて花の前に座った。
「えいっ」
そんな可愛らしい掛け声と止めにスグに言われた花をむしり取った。
その瞬間スグは目を見開き叫んだ
「ちょっおま!? 何してるにゃ!」
相当驚いたのか語尾が猫に戻る
「大丈夫だって言ったろ準備がいるって」
ろんはむしり取った花を前足でクルクルと回しながら答えた。
「準備ってにゃんにゃ!?教えるにゃそんにゃ事しにゃくても声は聞こえるにゃ」
スグはろんに駆け寄り肩を揺さぶりながら抗議の声を上げる。
肩を揺さぶられながらもクルクルと花を回しながらろんは思うのであった。
『猫語になってる、相当焦ってるんだな〜』
心の中で少し笑いながら花をクルクルする
「にゃにが可笑しいにゃ!?」
心の中で笑っていたはずが思わず口元に出てしまったのかスグの猫パンチが頬に炸裂する。
「ごめん、ごめん久しぶりに聞いたからさつい」
笑いながらそんな事をろんが言って持っていた花をギュッと手に挟んで潰した。
「にゃぁぁぁぁ!!」
ろんが花を潰した瞬間スグは叫び硬直する。
それもそうだろ準備と言いつつろんが下のは花をクルクルして潰したのである。
「こうして、こうして」
叫び硬直しているスグを放置してろんは潰した花を鼻歌まじりでこねこねし始めた。そして2分と言う短い様な長い時間こねこねしていると硬直から戻って来たスグに再度猫パンチを食らった。
「まてまて!! 説明せずに始めた事は謝るから本気モードはやめろ!? 妖気が半端ない落ち着けなっ?」
猫パンチを食らってスグの顔見ると本気のお怒りモードであったためろんは慌てて止める
「説明ってにゃんにゃ!22秒いにゃいに答えるにゃ」
殺気を出しながらスグが言い放つ
「これを作ってだんだよ」
スグの発言から直ぐに答えないと本当にやばい事を察したろんは前足で捏ねた物をスグに見せた。
「にゃ?花の髪飾り?」
ろんが目の前に出して来たもの見て殺気を沈めた
「そうださっきの花の髪飾り、これを作る為にさっきの事が必要だったんだ」
殺気を沈め首を傾げるスグに答えた。
「これで、お前の頼みを叶える準備が出来た」
ろんは微笑みながらそう言った。
初投稿になります。
誤字脱字など多いかもしれないですがそこの辺りを温かい気持ちで読んでいただければ幸いです。
後こっそりと教えて下さるとありがたいです。
修正しますww