07
この島の時間の概念はゆるい。太陽の位置で判断し1~10に分かれており、それぞれ鐘を鳴らす。1は1回、5は5回。で、6にまた1回に戻り10に5回。なので太陽の出ていない夜には『今何時』ということはない。夜は夜。さらに季節によって変わってくる。
そんなわけで今は太陽が高い位置、鐘が1回鳴った。六の鐘、つまり待ち合わせの時間。私は神殿にいた。もちろん、ラセットとの約束だ。
「あれ、早いな。お待たせ。」
「あー…まあ、少しね。」
ほんとに来た。うむ、1人で来たな。
私は未だ彼を信じきれない。
今日だって、仲間を引き連れてリンチでもされるんじゃあないかと構えてきた。もしそうなった場合の逃走ルートと罠の設置は完璧だ。どうやら杞憂に終わったようだが。
そこまで警戒するなら行かなければいいとも思うが、彼の話には興味がある。はっきり言って私1人でできることはもうないだろう。だがラセットは島主の息子だ。有力な情報を得ることもできるかもしれない!
「まずは座るか。礼拝堂に行くぞ。」
「わかった。」
私たちは礼拝堂にやってきて、並んで座った。
そして話した。今まで疑問に思ってきたこと、何を知りたくて調べているのか、お互いの情報を出し合った。とはいえ、私が出せる情報はほぼないが…。まあ向こうも似たり寄ったりだ。
私としては、
・アサギ族が差別される由来。これは大昔になにか、大事件でもあったのかもしれない。なので歴史が記されたものを探している。
・その過程で興味が湧いた、この島の成り立ち。何事にも最初というものは必ずあるだろう。私たちのご先祖様はどこからやってきて、どういう歴史を辿ってきたのか。
「まあ、私が気になるのはこのくらいかな。」
「なるほど…。僕も、似たようなものかな。でも、あとひとつ気になることがある。」
「なに?」
「島の外はなにがあるのか」
「……?海…じゃないの?」
「そう、海だ。だから海の向こうだよ。」
………はあ。考えたことなかったな…。海の向こうは海だよ…。
私が呆けていると、彼が苦笑しながら語った。
「まあ実はそう考えたのは昨日なんだ。君と話した後、家でじっくり考えてたらふと思いついてな。君もさっき言っただろ。『ご先祖様はどこからやってきたのか』と。
それこそ、海を渡ってきたかもしれないだろ?」
「つまり、海の向こうには…同じように島があって人が暮らしているかもしれない?」
「たぶんね。それも、いくつもあるかもしれないぞ?」
…あらまあ。あらーあらららら…。なにそれ凄い。確かに…あり得る話だ。
私たちはそのまま、外の世界について語り合った。ほとんど空想だったが、とても盛り上がった。
見たことがない植物、動物がいっぱいかもしれない。人間だって蒼い目は別にありきたりなものかもしれない。海を渡る術はあるのだろうか?もしかして…空を飛べたりして…!おおーーー!!
それはもう大騒ぎだった。全て想像の話だが、この時間はとても…楽しかった。こんな風に誰かと語り合うことなんて今まであっただろうか。しかも、敵対しているような相手と…。
しかしいつの間にか私は、彼に警戒心を抱いてなかった。
「……脱線したな。」
「……そうだね。」
正気に返った私たちは、話し合いを再開した。
「この神殿が怪しいと思ったんだよねー。とはいえ私は気軽に街に入れないから、外を探してただけだけども。」
「そうだな。僕もここが気になる。まあ街の中といっても、探す場所は限られてるしな。僕の家か、鐘のある塔だろう。」
「そっか…まあそっちは任せるよ。とりあえず今日は、ここを調べよう。でも私ひとりじゃあなにも見つからなくて、床を剥ごうかと思っていたよ。」
「…それは最終手段にしておこうか。やはり気になるのは…ここにある石像たちだな。」
そう。この礼拝堂には11体の石像がある。見たところ男性が7、女性が4だ。もちろん私はこの石像も調べてみた。なにもなかったが。
「まあ調べたといっても、足しか見えないけどね。大きすぎるよ石像たち。」
「うーん…よじ登ってみるか?」
「いけるかな?よし、ちょっと肩貸して。」
「…靴は脱げよ。」
ラセットの肩にのぼり、上のほうまで調べてみる。
「ちょい、右、右に移動して!」
「無茶言うな!あと頭を踏むんじゃない!!」
「じゃあもっと背を伸ばしてよ!」
「アホか!」
「あと…少し…!よっしゃ!」
なんとか石像の肩に登れた。ひゃー高い高い。でもまあこれくらいなら飛び降りられるな。さて、調査開始!
とりあえず中でもひと際巨大な石像を選んだが、さて。
まず顔。うん、美人だ。こんな美人さんがいたら男どもはみーんな骨抜きだね。ケッ。そして出るところは出て締まるところは締まってる。完璧なプロポーションじゃないか。まったく羨ましい!
…っと、違う違う。そのことは後で考えるとして、今は調査!