05
夕暮れ時、私は神殿にやってきた。
ここを管理するのは、代々島主を輩出してきたシアン族。といっても四六時中いるわけでもないので堂々と、やっぱりこっそり入る。
「いつ来ても不思議な場所・・・。」
静まり返った神殿内は、なんともいえない孤独感に襲われる。まるで私以外誰もいないような、焦燥。苛立ち。でも落ち着く・・・?
長居しないほうがよさそうだ。あまり広くない神殿内を進む。誰かと鉢合わせしたら、軽く目を伏せていれば大丈夫だろう。この薄暗さならバレないさ。
「書物は・・・この辺か?」
とある一角に目を向ける。うん、あった。
さーて、お目当ての物はあるかな?
この島の歴史。そして民族について だ。
結論から言うと、なかった。
「いやなんで・・・?ここにあるのどーうでもいい記録ばっかじゃん・・・。」
この神殿は主に成人の儀に使われる。なのでここにある書物は、その儀に関するものが多い。儀式の手順、何年に誰が成人した、等々。お、ベルディさん2年前に成人してるな。私ももうじきか~。どうでもいいな・・・。
あとは・・・最近島主が代わってるな。うーんどうでもいい。他には子供に字を教える用の教材がいくつか。
ちなみに今は西暦8207年。この歴史を記したものが無いとはな・・・誤算だ。まあ私の知ってる限りじゃあこの島は大きな災害も事件もないし、記すほどの価値はないわな・・・。
いや、諦めないぞ。他の部屋も探してみよう。
礼拝堂、講堂、なんかの部屋、廊下、更にはお手洗いや屋根裏。隅々まで探したつもりだけど・・・。ないな・・・。もういっそ床剥ぐか・・・?
「もしかして島主の家じゃないだろうな・・・。うーんそこに侵入するのは無理だなー。そもそも存在しない可能性も出てきたし。」
・・・とりあえず今日は諦めて帰るか。私が出口に向かうと、
「誰だ。」
・・・こっちのセリフだ。