創造主と悪魔
意識が目覚める。ここは魔法陣の上のようだ。 生まれて間もない悪魔の私は、創造主の人間を見た。
「僕は人間のイチ。君は悪魔のレイジだよ。僕は君の創造主。よろしくね」
「お前が私の創造主か。創造物を悪魔として誕生させるとは、怖いもの知らずなのか?」
私の創造主はイチという名のようだが。悪魔として生み出された私には、イチが創造主であろうとも、美味しそうに見えて仕方がない。
「君を悪魔として誕生させたのには、理由があるんだ。ナナという少女を僕は復活させたいんだけどね。僕一人の力ではどうにもならない」
だからねとイチは続ける。
「最初は神さまを創造して、ナナを復活させようと思っていたんだ。だけど、僕にはできないと思った。ナナは僕にとって神さま見たいな存在だから…。きっと創造物の神さまを裏切ってしまう」
「それでお前は悪魔を創造したというのか。もっと武器然としたものでも良かっただろう。私はいつでもお前を裏切ることができるぞ」
「それがいいんだ。僕は元勇者なんだよ。自慢じゃないけど僕は強い。自ら動ける創造物なら、僕がもう一度道を踏み外した時、僕を殺せるだろう。僕は君にいつでも僕を殺していいと約束する」
私という悪魔を創造しておきながら、何ということを言うのだろうか。創造主が死んでなお、この世に残れる創造物は数が少ないのだ。
「お前は悪魔をわかっているのか創造主。私がお前を死なすわけがないだろう。私からも約束しよう。私がこの世界に満足するまで、なんとしてもお前を生かしてやる」
「本当に悪魔みたいだね君は。僕は神さまを創造しなくて良かった。きっと悲しい思いをさせるだけだから。その点君は平気そうだからね」
「私は悪魔だからな。目の前で死のうとしたら、それ以上の苦しみを与えてやる。わかったな?創造主」
イチは首を上下に振った。言い聞かせておかなければならない。この創造主、気づいた時にはいなくなっていそうなのだ。私がきちんと監視しなければ。
「ナナを生き返らせるのに、存在しない神さまを創造しようとしてたんだよ。全部の罪を擦り付けようとしてた。僕が全部悪かったのに」
「創造物の私に聞くな。さあここから離れるぞ」
「…そうだね。儀式の場所にいるのはまずい」
私はイチを背負うと大きく跳躍した。あっと言う前に地上が遠くへいく。
「うっ。風が目に痛いよ。そろそろ降りてもいいんじゃないかな」
「仕方がない。少し待っていろ」
着地するのにちょうどいい場所が見つかった。人間たちが寝静まった建物の上だ。梟のように音もなく着地する。
「うう。あんな体験二度とごめんだよ。胃の中のもの全部出ていくと思った」
イチを肩から下ろしやると、よろよろと起き上がった。
「創造主は貧弱だな。少し飛び上がっただけだが、こんなに弱るとは。元勇者というのは嘘なのか」
「あのね。僕が勇者としての力を発揮するには、神血石の力が必要不可欠なんだよ」
「私が知っているのは、私自身の力だけだ。創造主の持っている力は知らん」
創造主の都合など関係ない。私が存在するために、創造主を生かすのだ。
「ナナを生き返らせるために、僕はこれから世界を巡る。君には力になってもらうよ」
「もちろんだとも創造主。私はお前の力。どこまでもお前についていく」




