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◇ヴェイン・ラ・××××××


リーン ゴーン


教会の鐘が鳴っている。


リーン ゴーン


鐘が鳴り響く中、扉がゆっくりと開いた。中にいる人々は入口に注目をした。


入口に立った人影がお辞儀をして一歩、歩き出した。


背の高い男性に腕を預けてゆっくりと歩を進める、ミランジェ。白いドレスがミランジェのことを可憐に見せている。


そう、今日はミランジェの結婚式だ。ミランジェをエスコートしている背の高い男性は、もちろん父親のラドランシュ公爵。


一歩一歩祭壇へと近づいてくるミランジェに、俺はこれまでのことを思い、感慨深いものを感じていた。



アングローシアでは十五歳になると学園に通うことになっていた。俺が学園に通いだした一年後、ミランジェも入学してきた。案の定ミランジェの周りには王太子や他の者どもが近寄ってきた。


ミランジェの友人となったクールニッシュ侯爵令嬢とその婚約者のマホガイア公爵令息がガードしてくれたおかげで、俺は身分的に問題になる王太子だけを排除すればいいから楽だった。


だけどやはり父と危惧した通りに、花に集まる虫のようにミランジェの周りには、バカ野郎共が群がってきた。社交界に行く時には俺がエスコートしているというのに、俺のことを兄だと思っているからか、かっさらおうとする奴が絶えなかった。


父と話し合った俺は、計画を早めることを決めた。


この国の成人は十六歳だ。その歳を過ぎればいつでも結婚が可能になる。ミランジェの意志も聞いて、俺が学園を卒業すると同時に結婚式を挙げることにした。そのために学園の最終学年である年に、俺のアソシメイア公爵家の当主就任を公表したのだ。


そう、俺はラドランシュ公爵の子供ではない。理由(わけ)あって、ラドランシュ公爵家で育てられたのだ。それはミランジェも同じだった。だけど、俺とミランジェは兄妹というわけではなかった。


話すと長くなるから、簡単に要点だけを説明しておこう。


ラドランシュ公爵が妻であるシェイラと出会ったのは、ここより遥か北の地だった。そこの王族であるシェイラと運命的な恋に落ちたそうだ。この時その地には俺の両親であるアソシメイア公爵もいた。外交官としてこの地に赴いていたアソシメイア公爵には、息子である俺が生まれたばかりだった。


まあ、なんやかやとあったらしいが、何とかラドランシュ公爵とシェイラは婚姻を結ぶことが決まった。


だがここで彼らはある事件に巻き込まれることとなった。父が話してくれたのは魔術的な何かが行われたということだった。父にも詳細は判っていないそうだ。


ただその結果、北の地の国は消滅してしまった。生き残ったのはラドランシュ公爵とシェイラ、それから俺と、生まれたばかりのミランジェだった。


なんとかアングローシアに帰り着いたラドランシュ公爵は、事の次第を当時の王(現王の父)に告げた。


何が話し合われたのかは知らないが、アソシメイア公爵家の領地及び爵位をラドランシュ公爵が預かることになったそうだ。それと俺とミランジェの養育もラドランシュ公爵家ですることが決まったとか。幸いにも、俺とミランジェの髪の色は父似と母似だったので、親子と言っても疑われなかったらしい。


それに全くの血縁関係がないわけではなかったそうだ。アソシメイア公爵とラドランシュ公爵は従兄弟同士で、シェイラとミランジェは叔母と姪の間柄だ。


というわけで、俺とミランジェには全く血のつながりはなかったのさ。


王家から王太子との婚約の打診が来た時、俺はかなり動揺してしまった。あの時にはもう俺はミランジェのことを妹とは見ることが出来なかった。それでも血のつながった兄妹だと思って、ずっと気持ちを秘めておこうと思っていた。


その気持ちを父に気づかれていた。それに俺にはもう一つミランジェに惹かれる理由があった。ミランジェの前世の女性はもしかしたら、前世の俺の恋人だったのではないかと思うことがあったのだ。前世の話をしている時のちょっとした仕草が懐かしく感じられたから。


気の迷いだと思おうとしたけど、どうしてもその疑念は拭えなかったのだ。


父に詰め寄られたときに素直に前世のことを話してしまったのも、それが関係していたのかもしれない。


だから、父から俺たちの出自を聞かされて、ついでに非公式ながら俺とミランジェが婚約者であると告げられた時の喜びと言ったら。婚約の誓約書には国王陛下(前の王)と法王が署名してあるから、当人達がどうしても嫌だというのでなければ、何人も異議申し立ては出来ないと言われた。


ミランジェは俺の学園の卒業と同時に、学園を退学することにしてくれた。そして俺と結婚をしてアソシメイア公爵家の領地に行くことを決めた。


そうなんだ。学園に通うことに不安を感じていたのだから、学園に行かなければいいのだ。そうすればゲームの強制力は受けないだろう。俺たちはやっとそのことに気がついたのだ。


学園を退学して家に戻った日のミランジェのホッとした顔を、俺はいつまでも忘れないだろう。



祭壇のそばまで父と歩いてきたミランジェ。父から手を離し俺の腕へと、そっとつかまってきた。


二人で祭壇前と進んだ。法王自らの結婚式。ありがたい言葉が俺たちに掛けられる。


俺たちは祝福を受けて夫婦になる。

ヴェイン・ラ・アソシメイアとミランジェ・リ・アソシメイアとして生きていく。


だからもう、ゲームなんか関係ない。

俺もミランジェも、悪役にはならないのだ!


ここまでお読みいただきありがとうございます。


これにて本編は完結いたしました。

あと、もう1話おまけの話を投稿して終わります。


なんかいろいろあらすじ詐欺みたいな話ですみませんでした。

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