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お兄様も私もゲームの悪役にはなりません!  作者: 山之上 舞花
裏本編!(本編に入らなかったあれこれ)
30/51

24 二人で決めたこと その2

◇ヴェイン・ラ・アソシメイア


俺の話を聞いた黒髪の神様は「それならばこちらの世界の本を閲覧できるようにしてあげよう」と、言ってくれたんだ。ただし、この世界に他の世界の本を持ち込むことは出来ないから、夢の中での閲覧になると言われたけど。本の取り寄せも召喚になってしまうそうなんだ。それなら仕方がないと夢の中での閲覧で我慢することにした。


それでも、都市作りの参考になる本を見ることが出来るのは嬉しい事だった。それにこれに付随して、俺とミランジェの記憶力を底上げしてくれたようだ。夢の中で読んだ本を現実で書く時に、細部まで思いだして書きだすことが出来た時には驚いたものだ。


あと、夢の中で調べ物をするということは、脳が休まらないということで、これにも何か手を回してくれたみたいなんだ。毎朝、疲れを感じることもなく起き上がることができるからな。


ミランジェと俺はあちらの世界の知識のことを、どこまでこちらに伝えるのかを、話し合った。


俺たちに求められたものは、魔法が無くなっても困らない世界にするための知識を提供することだ。今はまだ魔素がかなりある。だけど、それも少しずつ減っている。魔素を消費する魔道具は貴族だけでなく一般の人々にもかなり浸透していた。それらの物を、魔素を使わない道具に切り替えられるようにしなければならないのだ。


手始めに俺は水力発電をしようと考えた。


……のだが、ダムを作って発電施設までって、この世界の技術じゃまだ無理だろう。魔素頼りの機械が組み込まれかねないと、ミランジェに指摘された。それならばと、水車を作ることから始めてみた。あと、ついでに風車も作ることにした。まずは自然の力で小麦を挽くことから初めて見ることにしたんだ。


これが意外と村のほうで重宝されたんだ。貴族以外の人々はあまり魔力は多くない。水車や風車で粉を引くことが出来れば、粉を引く魔道具に魔力を割かなくてすむと喜ばれた。魔道具は使う時に最初に微量だけど、魔力を流さないと動かないようになっていたからだった。


こうやって少しずつ変えていくことにしたいと思う。


だけど、そのうちに必要になる時がくるだろうと、ダムの作り方や構造のことなどを書き残しておくことにした。図形などを書き残せば、より早くダムや発電所がつくられることになるだろうけど、そこは敢えて書き残さないことに決めた。もしも俺たちが生きている間に、発電所を作れるまでになればいいけど、そうでない場合は、後の世の人々の想像力に任せたいと思う。


そういっても、まだこれからどうなっていくのかは見えていないから、とりあえずは魔力に頼らない、都市作りを進めることにした。上下水道のことも古代ローマ時代の都市を参考にして、文章と図面を用意して人々に説明をした。かなり問答をすることになったけど、やっと納得してくれた。それには、先に作っていたアソシメイア公爵邸のトイレが役立った。


今でも思いだすんだよな。記憶を取り戻してから気がついた、この世界のトイレ事情。本当に衝撃だった。それを試行錯誤して、どうにかなるまでに二年かかった。まだ九歳という年齢だったのに、俺の話を聞いてくれた両親にはとても感謝している。


で、そのあともトイレにいろいろ改良を加えていった。それをアソシメイア公爵邸に作ったのさ。それを彼らに見せて、新しい街の各家々にも作ることを約束したんだ。



都市作りがどうにかなりそうになり、一息つける状態になった時に、ミランジェの妊娠がわかった。この事を喜んだ神たちは、至高の方と交渉をして、この世界……じゃなくて、俺とミランジェのところに来るようになった。人の姿に擬態してきていたけど、あり得ないくらいの美形たちだから、街の噂になるのは本当に早かった。


まだ、最初は一人ずつ来ていたから、うちの親戚が訪ねてきたんだろうと思われたようだった。


凄く気にかけてくれてんのは、わかるんだよ。それはすごくありがたいよ。だけどな、ミランジェが産気づいたからって、みんなしてくんなよ!


そりゃあ、こういう時頼りになる母のシェイラが来られないからというのも、あったんだろうけどよ。

だからって、六人全員でくんな! 

出産後、ミランジェと子供に会えるって呼ばれた時に、俺を押しのけて先に部屋に入りやがって~。


神たちの後に部屋に入ったら、茫然と神たちを見つめるミランジェと、神たちに囲まれて産まれたばかりの息子を抱いて困っている、助産師が目に入った。何の加護を与えようかとキャッキャッと騒いでいる神たちに、俺は唖然とした。常識神だと思っていた黒髪の神様まで楽しそうに話していた。


俺は、怒りのまま声を掛けようとしたら、神たちは突然動きを止めて顔色を青ざめさせた。慌てた様に俺とミランジェにお祝いの言葉をかけると、足早に帰って行った。


これが約ひと月前のことだ。今、思いだしても、腹が立ってしようがない。


なので、神たちのことをジロリと睨みつけてやる。


「ええっと~、ヴェイン。思いだし怒りを、向けないで欲しいな~。あの時は悪かったと思っているからさ~。あの後、至高の方に怒られてしまって、最後に一目君たちに会いたいと許しを得るのも、大変だったんだよ」


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