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◇ミランジェ・リ・ラドランシュ


兄がゲームの内容を思いだしたのか、痛ましい顔をしている。そんなに酷いことが待ち受けているのかと思うと、私は断罪の内容を聞く気にはなれなかった。


それに私は混乱していた。兄の話ではここはゲームの世界だという。これには私も賛成だ。それというのも私が知る(・・・・)ゲームと、ここは酷似しているのだから。


でも、兄が話したゲームと私が知るゲームとは、内容が違うのだ。


兄がこの話をしたのは、私が将来、断罪されないようにという兄なりの配慮なのだと思う。だけどもし、この世界が兄が知るゲームの世界ではなくて、私が知るゲームの世界だったら、断罪をされるのは兄ということになってしまう。


その懸念があるのならば、私も兄に話すべきだろう。


「あの、お兄様、私も、お兄様に話さなくてはならないことがあるの」

「ミラもかい。なにかな、それは」

「えーとね、私もあるゲームのことがすごく気になっているのよ」

「ミラもゲームのことが? それはどんなゲームだい」


私は少し言い淀んだけど、ゴクリと唾をのみこんで言った。


「えーと、それも恋愛シミュレーションゲームなのよ。この世界と酷似しているの。それで、そのゲームではお兄様が悪役として出てくるのよ」

「はあ? 俺が悪役? どうして?」

「えーと、さっきお兄様が話してくれたことと一緒で、従僕が恋愛するのを邪魔するのよ」

「従僕の邪魔……」


そう言って少し考えこむ兄。伏し目がちになったことで、長いまつげが瞳に影を落としている。兄はお父様にそっくりな金髪に青い瞳をしている。今はぽっちゃりとしているけど、顔の造作は悪くない。ううん。悪くないどころか、多分痩せれば極上になると思うの。


その兄に懸想したあいつらが、寄ってたかって兄のことを……。


「なあ、ミラ。それって可笑しくないか。従僕になるのなら男だよな。これが何かの理由で男装している女の子だって言うならわかるけどさ。男が主人公で男の俺が邪魔をするということは……」


そう言いながら私のことを見る兄。私は冷や汗が流れ出すのを感じた。視線をテーブルに向けたまま兄のことを見ないようにした。


「まさかとは思うけど……BLか?」


私の頬を一筋の汗が伝って落ちていった。答えたくない。でも、答えないわけにはいかない。返事を待つ兄に視線を合わせないまま、私はコクリと頷いた。


「マジか~。それだけは勘弁してくれよ~」


兄は頭を抱えて呻きだした。うん。私だってそう思うもの。


ゲームでの兄の断罪シーンの後に兄は……。あの鬼畜副会長が捨て台詞で『女より抱き心地がいいな。また抱いてやるよ』と言っていたのよ。兄はぽっちゃりしていたからね。その言葉を聞いた他の奴らが……というものだったのよね。確か裏設定で妹のミランジェも同じ目に合わされたのよ。なんでBLのゲームで妹の凌辱シーンが出てくるのか謎だったんだけど……。


……あれ? もしかして、私やばくない。どっちのゲームだったとしても、悲惨なことになるということ?


気がついた私はゲームと同じ目に遭いたくないと、涙が込み上げてきた。


「どうしよう。どちらのゲームでも、私の立場って最悪じゃん」

「ミラ?」


私の呟きに兄は顔をあげた。そして慌てた様に私の隣に移動してきた。


「ミラ、どうしたんだ」

「お兄様、どうしよう。ねえ、どうしたらいい? 乙女ゲームで私は断罪されるんでしょ。BLゲームもお兄様のとばっちりで酷い目に遭うのよ。いやよ、私」


兄に縋ってぽろぽろと涙をこぼす私を、抱きしめる兄。そして頭を優しく撫でてくれた。


「大丈夫だよ、ミラ。いいかい、ゲームが始まるのはミラが十八歳になってからだ。まだ十年あるんだよ。それまでに対策をしておこう」

「でも、ゲーム補正とかあるんじゃないの」

「その時はその時だよ。というかさ、何もしないうちから悲観することはないよ。とにかくゲームの内容を思いだせる限り思いだして、対処していこうよ。大丈夫。ミラは一人じゃないよ。僕もいるんだからさ。二人なら大丈夫さ」


頼もしい兄の言葉に、私は潤んだ瞳で兄のことを見つめた。真剣に見つめてくる綺麗な青い瞳に、ドキリと心臓が音を立てた気がした。


カチャリ


ドアが開く音がして、ビクリとなった私は兄にまた縋りつくようにした。


「あらあらヴェイン。ミランジェを泣かせたりして、駄目じゃないの」


姿を見せたのは母、シェイラだった。母のスカートの陰から三歳になる弟のマリクと二歳になる妹のシュリナが顔を覗かせていた。


「ち、違います、母上。僕が泣かせたわけではないですよ」

「そうです、お母様。怖い夢を見たので、その話を聞いてもらっていたのです。それで思い出して、涙が出ただけなのです」


慌ててしまい変なことを言ってしまった。嘘をつくにしても、もっと他に言い方があっただろう。


「あら、そうだったのね。それならその状況もうなずけるわね」


母がゆっくりと頷いた。その状況が何なのかと思い、母の視線を辿ってみれば、兄に縋りつく私がいた。慌てて手を離して、兄から離れた。その様子を目を細めて見ながら、私達の向かいの席に座る母とマリク。シュリナは私達の方にトコトコと来て、間にちょこんと座ったのでした。


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