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お兄様も私もゲームの悪役にはなりません!  作者: 山之上 舞花
裏本編!(本編に入らなかったあれこれ)
23/51

17 初夜 - 二人の夜に - 

◇ミランジェ・リ・アソシメイア


両親も弟妹もラドランシュの屋敷に帰ってしまい、侍女たちにされるがままに支度をされて、夫婦の寝室へと私は足を運んだ。ヴェインはまだ来ていなくて、私は部屋の中で立ち竦んだ。ベッドに近寄ることもできず、さりとてソファーに座って待っているべきなのか、考えても答えは出なかった。誰かに聞こうと思っても、侍女たちは私を部屋に案内すると、早々に立ち去ってしまっていたのだ。


別にこの後に起こることに、私は悩んでいるのではなかった。前の世界ではしっかり致していたことだし、そういう知識はちゃんとあるもの。


ただ、昨日母から聞いた話を、早くヴェインに伝えたいと思ったのだ。だけど……。


「お待たせ、ミランジェ」


考え事に熱中していた私は、扉に背を向けていたこともあり、ヴェインが部屋に入ってきたことに気がつかなった。声を掛けられてビクリと体が跳ねるように反応をした。振り返るとヴェインは微笑むように私のことを見つめていた。


夜着の上に羽織っていたガウンを脱いで、ソファーへと放り投げながら近づいてきたヴェインからは、今まで感じたことのない色気が漂っている気がした。私を見る眼差しには甘さと共に情欲の色が見える。


捕らわれるように抱きしめられ、左手が腰に、右手は私の頬に触れてきた。


「やっと…‥やっとだ、ミランジェ。お前のことをこの腕に抱ける」


掠れた声で言うヴェインに、私も「ヴェイン」と囁くような声で返した。軽く唇が触れ合ったと思ったらすぐに離れ、真直ぐな眼差しが私の目を見つめてきた。右手が私の後頭部に移動したと思ったら、また唇が塞がれた。


今度は、先ほどや今までとは違う激しい口づけに、呼吸がうまく出来なくて口を開けたら、ヴェインの舌が口内に侵入してきた。


まるで嵐のよう……。


呼吸まで奪われてしびれる頭でそんなことを思う。唇がやっと離れて、肩で息を吐く私は抱き上げられて、すぐにベッドへと降ろされた。いつの間にか涙で潤んだ瞳で、ヴェインのことを見上げた。薄い膜越しに私に覆いかぶさるようにヴェインの顔が近づいてきた。


先ほどの絡みつくような口づけと違い、今度は角度を変えたり食むような口づけをされた。翻弄されるしかない私は、ヴェインの夜着を掴むことしかできなかった。


口づけに満足したのか、ヴェインの顔が移動した。ハア~と耳元に吐息が掛かり、聞こえてきた呟きに、蕩けかけていた私の思考ははっきりと覚醒し、体は硬直した。夜着を掴んでいた手からも力が抜けて、パタリとベッドの上に落ちた。


耳たぶを軽く噛んでから首筋に唇を這わせていたヴェインは、突然反応が無くなった私に気がつき顔をあげて見つめてきた。


「ミラ? えっ? ミランジェ!」


訝しげな問いかけは、すぐに焦ったような声に変わった。ヴェインは私の顔に手を当てて、溢れてくる涙を指先で拭おうとした。だけどすぐにそれでは駄目だと思ったのか体を起こし、私のことも起こして抱きしめてきた。嗚咽を漏らす私に、頭の上でため息が聞こえた。


「ごめん、ミランジェ。怖がらせるつもりはなかったんだ。やっとミラと夫婦になれたと思ったら、抑えが効かなくて。もう少しゆっくりじっくりするから、泣かないで」


ヴェインの言葉に私は、顔を上げた。


「ち、ちが……そうじゃ……い」


気が昂って言葉が出てこない。こんなことなら部屋に入ってきたヴェインに見惚れてないで、話があると言っておけばよかった。


みあ(・・)……って……ってくれた。……ゆうじ~」


何とかそれだけ言って、私はしゃくりあげるままに泣いた。


ヴェインが抱きしめる手に力が入った。けど、すぐに力を弛ませて、私の頭や背中を落ち着かせようと撫でてくれた。



どれくらい経ったのか、やっと涙が止まり落ち着いたと見たのか、ヴェインは私から離れベッドから出て行った。用意されていたグラスに水差しから水を入れて持ってきてくれた。


「ありがとう」


私がグラスを受け取ると、ヴェインはもう一つのグラスに水を注ぎ一息で飲み干した。タンと音を立てて置くと私のそばへと来て、同じように飲み干したグラスを手に取った。


「もう少し飲むか」

「ううん、もう、いい」


グラスをテーブルに置くと、ヴェインはベッドの中に戻ってきた。私をもたれさせるように抱きしめると言った。


「どうやら、先に話をしないといけないみたいだな」

「ええ。……ごめんなさい」


私は俯き気味に返事をした。そうしたら頭にヴェインの大きな手が乗った。髪を梳くように手が動く。


「謝るのは俺だよ。この部屋に入った時に、ミランジェが何か言いたそうにしていたのに、欲望に負けたんだからな」

「ううん。私も名実ともにヴェインの妻になりたかったから。……嫌ではないのよ」


伺うようにヴェインのことを見上げたら、「ウッ」と呻いた彼に、下を向くように頭を押さえられた。


「ミラ、俺の理性を飛ばしたくなかったら、話が終わるまで俺の顔を見るのは禁止、な」

「えっ、どうして」


少しだけ振り返りちらりとヴェインのことを見ようとしたら、ヴェインの手が伸びてきて私の顎を掴むと咬みつくような口づけをされた。


「こういうことをしたくなるからだ。それとも先に続きを済ませて、明日以降に話すことにするか?」


唇を離して、覗き込むようにして言われたけど、今から続きをするということは、明日の移動は辛いものになる気がする。……いや、辛いだろう。


私がブンブンと首を振ったら、ヴェインは残念そうに笑ったのだった。


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