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お兄様も私もゲームの悪役にはなりません!  作者: 山之上 舞花
裏本編!(本編に入らなかったあれこれ)
18/51

12 告白 ― コチュリヌイ国消失の真実 その1 ―

◇シェイラ・リ・ラドランシュ


いつしか、世界中に召喚するための魔法陣が作られて、ほぼ毎日、召喚が行われた。そうして、異世界人の命は軽く扱われ続けた。


ある時、天命の力を持つものが、未来を予見した。


『このままではこの世界は滅ぶだろう』


と。声高に周りに説いて回ったけど、人々は聞く耳を持たなかった。


彼はいつしか諦めて、彼の言葉を聞いてくれた者たちと共に、北の大地に移っていった。


それから程なくして、全世界に神の声が響き渡った。それは魔導文明を終わらせるという、宣言だった。害悪となった人々を滅ぼすとも言った。そしてこの世界の中でも悪行を行っていた者たちは、ロンギリウス国へと移動させられた。彼らは国から出ようとしたけど、王都からでさえ出ることが叶わなかった。まだ、それほどの悪行と断じられなかったロンギリウス国の者は、七日の間にロンギリウス国から離れるようにと神に命じられた。


そして七日後、ロンギリウス国は消滅した。あと少しで国境というところで、国を出ることが出来なかった者たちも、滅する光に飲み込まれていった。


生き残った人々は、召喚魔法を放棄した。それだけでなく魔法陣を使う魔法を禁止にした。そして残された召喚魔法陣が書かれた建物を厳重に封印した。


二百年ほど経つと、この事を知らずに各地に残る建物を調べる者が現れた。何かの拍子に魔法陣が作動し、召喚された者が現れることが度々起こるようになった。


最初はそのことは見過ごされていたのだが、天命の力を持つ者の子孫に、同じ力を持つものが現れて放置することはまずいことになると気がついた。そこから、封印が解かれた建物を再度封印することにしたのだが、これがうまくいかなくなっていることに気づかされた。


この時はあの消失から六百年が過ぎていた。この六百年の間に緩やかにだが、魔素の濃度が薄くなってきていることに気がついた者がいた。それと共に召喚も失敗することが増えていった。


ここで天命の力を持つ者が悟った。神の言葉『魔導文明を終わらせる』というのは、この世界で魔法を使えなくするということだと。


この世界はまだまだ魔法に頼った生活をしている。それが無くなったらどうなるのか。今までは緩やかに魔素の量が減っていただけだが、もしかしたら急に魔素が全て無くなってしまうかもしれない。


天命の力を持つものはコチュリヌイの王だった。彼は各地に人をやって調べさせた。そして魔素がごっそりと減るのは、遺跡の魔法陣を動かした時だと知った。解放されている遺跡に行き、魔法陣を使えなくすることを始めた。


それからまた二百年が過ぎた。残った遺跡は五つだけになった。どれも封印がしっかりと施されていた。


また、コチュリヌイの王に天命の力が発現した。彼が見たものはこの世界の滅亡だった。このままでは避けられないことを知った王は、どうにか存続出来る道を模索した。いろいろな可能性を思案しては天命の力にかけてみた。今までに自分から力を使う者はいなかったが、王は何とか道を見つけようとしたのだった。


そして、細い希望の光を見出した。ただし、これを行うには代償が大きすぎるということもわかった。

王はまず、王妃と王子、王女たちに真実を告げた。それから、国の重鎮である公爵に伝えた。これによりさる公爵の令嬢がアングローシアの侯爵家に嫁いでいった。それから、国民に密かに天命の内容を伝えていった。他国の者には気づかれないように、伝えられたのだ。これにより、他国に出て行く者が密かに増えたのだ。


王が亡くなりその息子が王位を継いだ。彼は父親より天命の力を譲りうけていた。新しく王となった彼は、再度国民に伝えた。彼らの意思を問うそれは、残ることを決めた国民の意志を変えることはなかった。


この王も若くして亡くなり、また息子が王位を継いだ。準備は整っていた。あとは彼の血筋の者を呼び寄せるだけとなっていたのだ。ここで誤算が起こった。そのものは結婚をして夫と共にコチュリヌイの地を踏んだのだ。現王は困惑した。彼もまた父王から天命の力を譲りうけていたのだ。


彼の血筋の者とその夫にあった王は、その夜、不思議な夢を見た。それはこの世界の者ではない者のこと。それと共に、彼は一つの啓示を受けた。


王は子供を作るつもりはなかった。もう、遺跡はこの国のもの以外すべて破壊されていた。それが神のお気に召さなかったことは、国民が国から出られなくなったことで一目瞭然だったから。子供が生まれても国に殉ずるしかないのは、可哀そうだと思っていたのだ。


だが、ここにきて新たな天命を授かった王は、王妃と話し合い子供を作ることにした。王妃も子供が生き残るかもしれないという、万に一つの望みにかけることにした。王妃の妊娠が判った頃に、最後の人物がコチュリヌイの国にやってきた。


そこからは天命で見たとおりに事態は進んでいった。王妃が子を産んだ一月後、最後の召喚を行い、これが失敗したことによって、神の怒りによりコチュリヌイ国は消失してしまったのだった。


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