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お兄様も私もゲームの悪役にはなりません!  作者: 山之上 舞花
裏本編!(本編に入らなかったあれこれ)
17/51

11 告白 ― 隠していた話 ―

◇シェイラ・リ・ラドランシュ


体が前かがみになり、テーブルに上半身が乗りそうになる。掴まれていない右手をテーブルについて、体を支えながら夫・ハロルドのことを睨むように見つめた。


ハロルドはしまったという顔をしてから立ち上がり、私の隣へと移動をした。


「すまない。歳は取りたくないものだな。若い時なら軽々とシェイラを持ち上げられたのに」

「あら。それでは私が太ったと、おっしゃっているみたいですわね」


からかうように言ったら、ハロルドも苦笑を浮かべて、私のことを抱き上げて自分の膝の上に乗せた。


「そんなことはないよ、シェイラ。初めて会った時と変わらずに、軽いままだ。ああ、そうか。体勢も悪かったのか。こうやって隣に居れば、難なく持ち上げられる」

「まあ、どうせならもう少し色っぽく言っていただきたいですわ」


クスクスと笑いながら言ったら、ハロルドは困った顔をした。


「困ったな。久しぶり過ぎて、口説き文句がわからないよ」

「あらあら。そうねえ、ヒントを差し上げましょうか。私は荷物ではなくてよ」

「ああ! それはすまなかった。そうか、持ち上げるではなく、抱き上げるか」


ハロルドは破顔してから、言葉を続けた。


「我が妻は二人も子供を産んだとは思えないくらい、未だに羽のように軽いものだ。このまま抱き上げて夢の世界へと連れ去ってしまいたいものだな」


そう言って、私の頬に口づけを落とした。私はクスクス笑いのまま、ハロルドの頬に口づけを返した。


「そうしてもいいけど、その前にお話をするのではないの」


私の言葉にハロルドは真顔に戻った。そして一度、ぎゅっと強く私を抱きしめた。


「無理に今、話さなくていいんだよ。ただ、私達の親としての役目はひとまず終えたと、言いたかっただけなのだ。シェイラが心を決めたら、話してくれればいい」


私はハロルドの膝から降りて、隣に座り直した。そしてハロルドのほうを向いて、その手を握った。


「いいえ。今、聞いてほしいの。私はね、最初は誰にも話さないでおこうと思ったのよ。だけど、ヴェインとミランジェが記憶を思い出したことで、二人に……いいえ、ミランジェに話さなければいけないと思うようになったの」

「それが昨日のことか」


ハロルドは私の目を見つめながら聞いてきた。私は頷いた。


「ミランジェにはすまないことをしたと思うわ。いいえ、ヴェインにもね。私は最初、話を聞いたミランジェに、罵倒されるものだと思っていたの。どんなことを言われても、耐えるつもりでいたのよ。だけどあの子は『今までお母様お一人に重荷を背負わせてしまってごめんなさい。もうこれからは、私とヴェイン様に起こったことについては、気にしないでくださいね。それよりも、この話をお父様やマリクとシュリナにも、伝えてください。家族なのです。重荷は分かち合うべきですわ。それで、お話をしたら忘れてしまいましょう。私達は過去に囚われるべきではありません。これからの未来には必要がない事です』と、言ってくれたの」


私は笑みを浮かべた。


「許してもらえると思わなかったわ。でも昨夜、ミランジェの言葉をずっと考えていたの。コチュリヌイ国(私達)は罪を犯してまで、未来を望んだ。それを当事者であるミランジェに許してもらえた。コチュリヌイ国(我が国)がしたことは、無駄にはならなかったのよ」


脳裏に幼い頃に亡くなった父や母、兄夫婦の顔が浮かんできた。他にも、国境を超えることが出来なかった人々の顔も。皆、ミランジェとヴェインに希望を託していた。それから、私にも。


「今からすべてを話すわ。この話を聞いたら、あなたは私を許してくれないかもしれないけど」


もう一度微笑んでから、私は語り始めたのよ。




私が生まれた国、コチュリヌイは魔導国家と呼ばれていた。失われた超魔導文明の後継国と自負した国だった。他の国々よりも魔力が強く、魔法の扱いにも長けている人々の国だった。


超魔導文明というのは、今より遥か昔に栄えた文明だ。だけどこの文明を主導していたロンギリウス国が一夜にして滅んだことにより、終わりを告げたと伝えられている。この文明の遺跡は各国に残されていた。だけど、あの事件が起こる数十年前に、崩壊してしまったという。


これが各国が認識している話だった。


我が国に伝わる話はちょっと違った。というよりも、後継国と云われた我が国にしか真実は残されていなかった。


超魔導文明が滅んだ理由は、神々の怒りをかってしまったからだった。


あの頃は魔素も豊富で、魔法を使用するのに呪文や魔法陣を使用し放題だった。ある時、召喚魔法を発見した者がいた。これは最初は離れた場所にある物を取り寄せるだけだったという。それが次元の壁を越え、物だけでなく人を召喚できるようになってしまったのだ。最初は偶然の産物だったそうだ。だが、研究熱心な者が安全に召喚できるように改良し、完成させた。


どこにでも悪用することを考える者はいる。召喚して現れた人を、召使いにした者が出てきた。勤勉に働く異世界人を見て、もっと悪いことを考える者がいてもおかしくないだろう。いつしか、召喚して現れた人は奴隷として扱われるようになった。この世界ではない、どことも知れぬ世界の人間など、人として扱う方がおかしいという、風潮が生まれていたのだった。


ド、シリアスです。もう少し続きます。

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