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お兄様も私もゲームの悪役にはなりません!  作者: 山之上 舞花
裏本編!(本編に入らなかったあれこれ)
12/51

6 友人は無自覚な人、達 前編

おかげさまで『日間異世界転生/転移ランキング』に2018/12/27夜に5位になりました。

本当にありがとうございます。



こちらの作品は、そのお礼というわけではございませんが、本編に入らなった話を番外編として書かせていただきました。


12/28朝には3位、夜に1位となりました。

そちらのお礼という名の番外編は、後日書かせていただきます。


どうぞ、お楽しみください。


◇アゼンタ・リ・クールニッシュ


学園に入学して半年ほどが経つ今日、(わたくし)の前には長蛇の列が出来ていましたの。手伝いの女生徒五人が私の補助をしてくれていますわ。


「それで? 中身は何かと聞いていますのよ」

「あの、あの」


私の前にいる女生徒が泣きそうな顔で、胸の前で両手を握り合わせているだけではなく、涙目になっていますの。これでは、私がいじめているみたいではありませんの。


先に今日のことを公表しておいたのに、それでも私の目を掻い潜ろうとする者が後を絶たないのですわ。


「ねえ、アゼンタ、もう少し優しい言い方をしてあげて……くれないかしら」


隣から今日の主役が声をかけてきたのだけど、こちらの苦労をわかっていない発言に、思わずギッと睨んでしまったわ。一瞬怯んだのに、ちゃんと言い切るのは、さすが私の友だと思ったのよ。


私はアゼンタ・リ・クールニッシュ。クールニッシュ侯爵家の娘ですの。うちの家系は目力(めじから)が強いことで有名なので、睨んでいるつもりはないのに、いつも睨んでいると勘違いされて恐れられていますのよ。


べ、別に私は気にしておりませんわよ。


コホン。


えー、そう。今日のことを話しているところだったわよね。今日は我が友人であり、この国の至宝とも呼べる、ミランジェ・リ・ラドランシュ公爵令嬢の誕生日ですの。ただでさえこの国では珍しい、銀髪にアメジストを思わせる紫色の瞳という容姿をしていて目立ちますのに、公爵家令嬢という身分を鼻にかけることもなく、公明正大で強きを挫き弱きを助けるという心根に、彼女に憧れるものは数知れず。そんな彼女の一番の友人が私ですのよ。


彼女はすごい努力家ですの。彼女と親しくなったのは、今の彼女の姿からは程遠く、ぽっちゃりとなさっていた時でしたの。この国は昔から痩せた方が持て囃されておりまして、当時の彼女は陰で嘲笑されていたのですわ。


なんてバカバカしいのかしら。


さすがに騎士団に所属なさっている方は、それなりにいい体をなさっていましたけど、それ以外の方々はやせ細っていて顔色も青白く、ちょっとしたことですぐに倒れてしまうような方たちばかり。子供も親に倣って細い方達ばかりでしたの。


そんな中でラドランシュ公爵兄妹はぽっちゃりとなさっていたのよ。でもね、先ほども言いましたけど、青白い顔をした親の子供ですから、その子供たちは同じように青白い顔をしていますの。どうにも不健康に見えて仕方がなかったわ。そうしますと、ラドランシュ公爵兄妹のぽっちゃり……もとい、血色のいい顔色は見ていて気持ちのいいものでしたの。


それに甘味が貴重なこの国でラドランシュ公爵家では、毎食後甘いデザートが出ていたという噂でしたの。きっと他の人たちは羨ましい気持ちを誤魔化すために、ラドランシュ公爵兄妹のことを嘲笑していたと思うのよね。


ああ、いけない。つい、余計なことを言ってしまうわね。


そう、あれは王家主催のお茶会でのことだったわ。無礼にも、公爵令嬢であるミランジェに、紅茶をぶっかけるというバカをやらかした伯爵令嬢がいましたの。本当にね、身分というものをなんだと思っているのかしら? それに王家主催のお茶会という場もね。すぐさま私がその方に物申しましたの。その令嬢は私の言葉に顔を青褪めさせていましたわね。


もちろん叔母様である王妃様も、ものすごく立腹なさっていたわ。伯爵家には王妃様とラドランシュ公爵様からの抗議文が送られたと聞きましたの。ふふっ、いい気味だわ。


この事がきっかけでミランジェと仲良くなれたのだから、その点だけは彼女に感謝してもいいわね。あの時に触ったフニフニの手の感触が、いまも忘れられないわ。


でもこの後、何故かラドランシュ公爵兄妹は痩せられてしまったのよ。でもね、さすがと言うべきかしら。痩せたお二人はとても健康そうでしたの。それどころか、どちらもスラリとなさって、すごく見ごたえのあるお二人になられたのよ。


それから……ある侯爵家の子供の誕生パーティーに呼ばれたときに、事件が起こりましたの。子爵家の令嬢のことをいじめている方たちがいましたわ。それに気がついた私がその方を助けに行こうとしましたら、一足早く助けに行かれた方がいましたの。そう、それはミランジェでしたわ。彼女はさりげなく子爵令嬢を救い出しましたの。


だけどこれで終わりではありませんでしたわ。数日後、子爵令嬢は暴漢に襲われかけましたの。それを助けたのがまた、ミランジェだったのよ。ミランジェにも襲い掛かってきた暴漢を……えーと、さんせつこんといったかしら? その木の棒を使って、倒したと聞いたわ。もちろんすぐにお兄様のヴェイン様もいらして、お二人で暴漢を倒したと言っておりましたけどね。


そしてこの時以降、町ではたまに金と銀の髪の男女が、悪漢をやっつけていると噂が広がりましたの。


ああ、そうね。子爵令嬢のことについて、まだあったわ。子爵令嬢を襲わせたのは、侯爵家のパーティーで令嬢をいじめていた方たちだったの。それをラドランシュ公爵家が調べて、騎士団に提出したそうよ。あまりにも悪質だからという言葉を添えて。その親たちは騎士団が来て驚いたでしょうね。中には力を使って揉み消そうとした家もあったらしいわ。


本当にバカよね。仮にも公爵家が問題提起をしたのよ。揉み消せるわけがないじゃない。その家は爵位の降格及び、当主の交代などが行われたと聞いたわ。


他にも数々の武勇伝があるのよ。そのことを知った、特に下位貴族の令嬢たちからミランジェは、絶大な人気を誇っているのよね。


というわけで、学園に入ってからミランジェの周りはいつも賑やかなの。でも、なぜかしら。ミランジェを慕って令嬢たちは集まっているというのに、ヴェイン様目当てにミランジェと仲良くしようとしていると、ミランジェは思っているのよね。


まあ、中にはヴェイン様目当てで、そばに来た令嬢もいましたけどね。でも、それはほんの数人だけだったの。


そういうミランジェだから、誕生日には贈り物をしようとする人たちでいっぱいなのは分かっていたわ。ミランジェが困らないように、私は先にプレゼントの決まりを作っておくことにしたのよ。


一つ。高価なものは贈らない。特に宝石は駄目

二つ。嵩張るもの、部屋に置くのに困る様な大きなものは贈らない

三つ。お金をかけ過ぎないもの。片手で持てる花束ならいいけど、部屋を埋め尽くすような量の花は駄目。

四つ。ドレスなどの服や靴は禁止。

五つ。髪飾りやリボンのようなものならOK。でも、高額な物は駄目。


とりあえずこんなものかと、学園長の許可をもらって張り出しておきましたの。


あと、当日は混乱を回避するために放課後にプレゼントを受け付けることと、受け取る前にプレゼントの中身を訊ねることを、明記しておいたのよ。


それでも、答えてくれない方がいるのは困ったものね。


おかしい。

もう少し常識人だと思っていたのに、友人大好きのへんた……コホン。

いえいえ。友人の為なら少し斜め上の行動をしているだけですよ。

ねえ。

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