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お兄様も私もゲームの悪役にはなりません!  作者: 山之上 舞花
裏本編!(本編に入らなかったあれこれ)
10/51

4 ゲームの秘密? 前編

おかげさまで『日間異世界転生/転移ランキング』に2018/12/27朝に8位になりました。

その後、夜には5位にまでなりました。

本当にありがとうございます。


お読みいただいた皆様にお礼というわけではございませんが、本編に入らなった話を番外編として書かせていただきました。

こちらは8位のお礼です。

また明日に5位になったお礼の話を投稿したいと思います。


長くなりましたので前後編に分けました。

どうぞ、お楽しみください。

◇ヴェイン・ラ・ラドランシュ


ミランジェが学園に入学してきて一週間。ほんとに気が抜けなくて、たった一週間で俺はぐったりとしてしまったんだ。


「大丈夫ですか、ヴェイン、お兄様」


愛しのミランジェが心配そうに声をかけてきた。だらしなくソファーに寝そべっていた俺は、顔をあげてミランジェのことを見つめた。


「大丈夫だよ、ミラ」


そう言いながらも体を起こさないのだから、説得力はないだろう。ミランジェは向かいから、困ったような顔で俺のことを見つめ返してきた。


そうだった。こんな不甲斐ない様子を、ミランジェに見せるなんて。


俺は体を起こし、ソファーに座り直した。そしてミランジェに向かって手招きをした。ミランジェはその意味が分かったのか、微かに頬を赤くした。そっと辺りを見回して、どうしようかと迷っているのが伺える。


「ミラ」


甘い声でおいでと誘いかける。それでもためらっているようで、動こうとしない。


「ミランジェ、おいで」


根負けしたように立ち上がり、俺の隣へと座り直したミランジェ。膝の上で重ねられている手に、包み込むように自分の手を重ねた。ミランジェは困ったというような表情で微笑んでいる。


ここは学園内にあるサロン。その中でもいくつかある個室の中だ。ここにいるのは俺とミランジェだけ。もう少ししたらお邪魔虫……じゃなくて、友人がやってくる。それまでの貴重な二人だけの時間だった。


「ヴェイン、お兄様」


小さく間をあけて紡がれる言葉。前はただお兄様とだけ呼んでいたのに、一年前から名前を入れて呼ぶようになった。これはミランジェなりの意思表示だった。あと数年経てば俺たちは結婚をする。今はまだ周囲に兄妹だと思わせているのだから、いきなり名前だけを呼ぶわけにはいかない。だから名前の後にお兄様とつけるようにしたのだ。


たまに屋敷で二人きりになると、「ヴェイン様」とかわいい声で呼んでくれる。これがまた破壊力抜群でやばいのだ。言い慣れないのか、それとも恥ずかしいのか、頬を染めて小声で言う姿が、可愛すぎるのだ。


この国、いや、この世界では婚前交渉などというものは認められていない。婚約をしていても、せいぜい口づけまでしか許されていない。


この一年で少女から女性へと変わってきているミランジェは、とても綺麗になった。本人は意識していないようだけど、誘っているのかと間違えそうな目で俺のことを見てくることがあるんだ。


……そうだよ。これは俺の願望だよ。ミランジェは決してそんなことは考えていないだろう。ただ、溢れる恋心が瞳を潤ませているだけだ。ひと月に一度しか会えないことで、思慕の念が募っているだけだ。


ちっくしょう。父上が言うことは正しかったけど、これじゃあ、生殺しじゃねえかよ。隣にいるのに手が出せないんだぞ。だから、俺が卒業するまで待てって言ったのに。


いや、この一週間をみても、父上の方が正しかったな。ミランジェの周りに群がるあいつら。見目のいいやつらばかりだ。俺と兄妹だとミランジェが思い込んでいた場合、実ることのない恋より、身近なやつに心を移していたかもしれないんだ。


えっ? ミランジェが俺のことを好きなのを、いつから気がついていたのかって。そりゃあそうだろう。俺はずっとあの時からミランジェだけを見つめてきたんだ。ミランジェの気持ちは手に取るようによくわかったさ。


「あの、ヴェイン、お兄様?」


おっといけない。つい横事を考えてミランジェの手触りを堪能することを忘れていた。無意識に行っていた滑らかな手の甲を撫でるのをやめて、そっとミランジェの手を持ち上げた。細い指先にそっと口づけを落とす。


「愛しているよ、ミランジェ」


指先に唇をつけたまま、ミランジェに愛の言葉を囁いた。


「ヴェイン、お兄様。駄目ですわ。ここだと、誰かに聞かれるかもしれませんもの」


ミランジェが嬉しそうにしながらも、扉の方を見ながら言った。


「大丈夫だよ。周りには俺のシスコンは有名だからさ。こうして」


ミランジェを抱き寄せて、艶やかな髪に口づけを落とした。


「いるところを見られたとしても、いつものことだと思われるさ」

「もう、ヴェイン、お兄様は」


ため息交じりにミランジェが言ったけど、嬉しそうにされるがままに体を俺に預けるようにしている。


安心しきって身を任せるミランジェに、俺は改めて心に誓った。何があろうともミランジェのことは守ると。



俺はミランジェに話していないことがある。最初に前世の記憶を思い出し、二人の覚えているゲームの内容が違うから、紙に書きだそうと言ったあの日。俺は紙に翌日の昼前までかかって、覚えている内容をすべて書きだしたんだ。そして、ため息を吐き出した。


その結果、ミランジェには最初に話した、男向けの恋愛シミュレーションゲームの内容しか見せていない。


そうなんだよ。実はこの世界は他のゲームの世界であるかもしれないんだ。


前世の俺が勤めていたのは、ゲームの製作会社だった。自社で製作したものだったから、俺が語った男向けの恋愛シミュレーションゲームの内容を、すべてクリアをしていないけど十八禁の内容なども含めて知っていたというわけさ。


ついでにミランジェが語ったBLものもな。うん。ありゃあ、ひどいよな。思いだしたミランジェが泣いたのも頷けるってものだった。どこのどいつだよ。あんないらん要素をつけやがったのは!


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