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アンデッドミートウォール   作者: まるへい
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01.日常

 「ヒュゥゥ……ヒュゥゥ…ヒュ……」


 僕、ライムはふかふかに耕した畑で死にかけていた。数秒前まで激しい頭痛で頭がおかしくなりそうだったが、今では痛みすら感じない、とても調子がいい感じだ。

 いや――違う、痛覚もなければ、聴覚、触覚、感覚、嗅覚すらも感じられない、まるで夢の中みたいだ。でも視覚だけは残っていた。視野がぼやけるが、うっすらと現実が映像として入ってくる。

 

「ヒュゥ……ヒュゥゥヒュ……ヒュ…………」


 綺麗に染まった赤色の畑の映像が、ぼんやりと流れる。


「ヒュッ………………」


 あっ……想い出した、なんで……あんなこ――うっ、今まで体験したことのない眠気が襲った。

 必死に抗ったが、それでも、まるで底なしの眠気は僕を包み込んでいき、抗いながらも永い眠りにはいっていった。



――1時間前


「いってきます!」


 早朝、眠気に耐えながら僕は、両親に一言、声を掛け、勢いよく玄関を出た。

 玄関の先にある3段ある階段を降りてる途中に、父さんと母さんの『いってらっしゃい』が耳に入る、それを聞いた僕は、今日も頑張ろうと自分で自分の頬を軽めに叩いて、気合を入れる。


「フフ、フフフン」


 僕は日課のように、その場の思いつきの鼻笛を奏でて職場に向かっていた。

 自宅から職場までは、とても近くて徒歩で4分くらい。職場と言っても大きな建物があるわけでもなく、木材で簡単に作られた10畳ほどの物置だ。そこでいつも親方と集合してから仕事現場へ行く。

 

「あっ」


 自宅を出て、300mほど進むと職場の物置が少し見えてきたが、大きな人影もあった。

 遠目から見ても人間の容姿ではない、毛むくじゃらで巨体のクマのような――親方だ。


「親方、おはようございます!」

「今日もよろしくな、ライム」


 親方はいつも少し遅刻するけど、今日は珍しく先に待っていた。親方の下まで小走りで向かい、簡単に挨拶をすると親方は、ニコッと笑顔で返事を返す。挨拶が終えると、今日に必要な道具を準備して、親方と一緒に現場に向かった。

 いつも親方と言っているけど、親方にも名前はもちろんある。名はオーガ、種族は魔獣のクマ科だ。

 外見はクマそのままだけど、知能が人間と同等で性格はとても社交的、だから誰とでも仲良くなれる。オーガさんも、しっかり遺伝子を受け継いでいるようで、とても優しい。


「今日は簡単な作業だから、楽だぞ」

「何、やるんですか?」

「ああ、畑を耕すだけだ、楽だろ?」


 さっそく、親方が仕事の話に移った。今日は、作物を育てる為に欠かせない工程でもある、耕しだ。硬化してしまった土を耕すことで、土と酸素が混じりあい、地中の微生物が活発になる。活発になると地中の栄養度が増して、作物が安定して育ちやすい。

 そんな仕事話や雑談を交えて話しをしていると、すぐに現場についた。

 現場はもちろん膨大な広さの畑。縦横400mはあり、ここで作った作物は村のみんなで分け合う。村直属の管理する畑なので、管理が行き届いていて、毎年、とても質の良い野菜が採取できる。


「さて――――やるか」

「どのくらいやるんですか?」

「ん、まあ、昼過ぎには切り上げようぜ」


 現場に着いてしまったからなのか、急にダルそうにする親方。それでやらなきゃ、終わらないと覚悟したのか、重い腰を上げて、作業が始まった。

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