にんぎょうあそび
月のない夜
ぼくは道化師の人形を作ったんだ
白木を削って
絹を縫って
金と銀を結って
水晶を切って
出来た人形
素敵な道化師
そして心を込めたんだ
高鳴る思いを
一緒に笑って欲しかったんだ
そうしたら、道化師は手を挙げて
本を作ったんだ
金と翡翠が飾られた厚い装丁
表紙の中心にねじが透けた時計
上質な羊皮紙の、美しい本
代わりに、道化師が薄くなってしまった
白木と絹が透けた
金と銀と水晶も色あせた
違うんだ、そうじゃない
きみと一緒にいたいんだ
だから心を込めたんだ
沈む思いを
一緒に泣いて欲しかったんだ
そうしたら、道化師はまた手を挙げて
錠前を作ったんだ
ひびが入った厚い鋼
垂れ下がる重い鎖
正面に入った飾り彫りが泣いている
代わりに、また道化師が薄くなってしまった
白木と絹の向こうが透けて見える
金と銀と水晶は透かし紙のよう
違うんだ、そうじゃない
きみと手をつなぎたかったんだ
ぼくは心を込めたんだ
何度も、何度も
でも、道化師は薄まるばかり
そうして道化師はめっきり薄まってしまった
星が透ける薄い雲よりも
底が見えるせせらぎの水よりも
込める心も、もうなくなってしまった
ぼくは何を思ってたんだろう?
ぼくは何を持ってたんだろう?
もう姿もよく見えない
もう触れることもできない
もう何も分からない
違うんだ、そうじゃない
ぼくは一緒にいたかったんだ
ぼくは手をつなぎたかったんだ
ぼくと一緒にいてよ
ぼくを愛してよ
ねえ、お願いだから
ねえ……