一話
場所は雪下高校。私――朝日奈葵はその学校の一年生で空がオレンジ色に染まったとある放課後に教室の近くに立っていた。
中では三人のクラスメイトが私への不満を口にしている。
「葵ってさぁ、うちらが先生の悪口とか言ってもへらへら笑うだけで乗ってこないじゃん?つまんないよね」
シュシュで髪を一つにまとめ左の前に流している子――高槻莉子が言うとそれに同意した二人も続く。
「わかる。いつも良い子ぶっているよね」
「そうそう、葵の前だと盛り上がらないからちょっとねー」
ポニーテールの子――雨宮颯希に続いて肩より少し長めのまっすぐな髪の子――白雪美樹が苦笑しながら言う。
「今言いたいってあるじゃん・それで盛り上がらないとなえるわぁ」
莉子が口をとがらせて盛り上がっていく。
不満から悪口に変わってきたところで私はきびすを返して帰ろうとしたら誰かにぶつかった。
「ごめんなさい」
無意識に謝ってからしまったと思った。
この距離だと教室にいるクラスメイトに聞こえた事だろう。
現に静まり返っている。
ぶつかった相手をよく見もしないで足早にその場を去る。
玄関から校舎を出て誰も来ていない事を確認して一息つく。
やってしまったなぁ。明日からどう接すればいいかな。まあ、いつも通りでいいか。
特に傷ついてはいなかった。人なんて生きていれば誰かを傷つけるものでしょ。
そういえば既視感があった。
あれは小学生の時だったな。あの時は友達だと思っていた子たちに悪口を言われていたりしたっけ。
今の私を作った原因でもある。
私はそれが原因で人間不信になり人と距離をあけているが明るい私を演じている。今では自然なそれは今のところ誰にも見破られてはいない。
そのためヒエラルキーの中ほどにいる。
もうそれが私になっている。分厚い仮面が私と一体化して元の自分に戻れなくなった。
でもそれでうまく生きていけるのならかまわない。
私には小学生の時、友達だと思っていた人が敵だった。そんな経験がある。
彼女たちにとって私は友達ではなくオモチャだったのだろう。
私は友達だと思っていて相手はそう思っていなかった時のこの一方通行の事をなんというのが適切なのか。
なんにせよ彼女たちにはさぞ私が滑稽で愚かに見えていた事であろう。
興味を持って読んでくださりありがとうございます。
長編ファンタジーの息抜きに執筆しました。