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僕には霊が視える

これはホラー小説でしょうか?

リアル小説だと言いたいです。

 僕には霊が視える。

 霊は、一般的に認識されているような人型のものだけでなく、ただそこにある思念のようなものを含めた、目には見えない何かのことだ。

 少なくとも僕はそう考えているし、そういったものが常にではないが、視える。

 僕が霊を視えるようになったのは小学三年生の時からだ。

 きっかけは、僕の母親が交通事故で死んだことだろう。当時まだ幼かった僕は、母の死を受け入れることができず、学校へ行くこともなく母が死んだ場所を毎日訪れていた。そこに行ったからといって何をするわけでもない。ただ、本当に母が死んだのか、本当に母をもう二度と見ることはできないのか、母の声を聴くことはできないのかをただただ考え続けていただけだ。

 そんなある日、僕は母の声を聴き、母の姿を視た。母は、事故現場にいつまでも立ち続け前に進もうとしない僕に、もう一度前を向いて歩きだしてほしかったのだろう。立ち尽くす僕の目の前に突然、普段と何も変わらない姿で現れ、一言、

「私はいつでもそばにいるわ」

 と呟き、僕を抱きしめた。

 僕はそのとき、母からの強い愛情を感じ、再び日常を送る勇気を与えてくれた。

 いつでも母は僕のそばにいる。そう思うと今までの虚無感が嘘のように消え、不思議な話だが母が生きていたころよりもはるかに充実した毎日を送れるようになった。

 ただ、それと同時に、僕は今まで見えていなかったものが視えるようになっていた。今までは特に何も感じなかった場所が、普段とは全く違う見え方をしてくるようになったのだ。人があまり寄り付かない場所や、暗い表情の人がよく現れる場所。そういったところには、霊がいるのだと。それは朝であろうが夜であろうが関係ない、何もないはずの空間に薄ぼんやりとではあるがもやがかかっていたり、色が周囲とは全く違っていたり、時には人の姿をした何かがじっと立ち続けて行きかう人を見ていたりする。

 今まで見えなかったはずの何かが、霊と呼ぶ以外に適切な表現が存在しない何かが視えるようになったが、そのことで僕が大きく変わることはなかった。母の霊を見た瞬間から、僕はそちらの世界と確かにつながりを感じたのだから。視えるようになったことは必然であるとさえ感じていた。

 霊が見えるようになったからといって僕の生き方は特に変わらなかったけど、霊について話す友人やテレビ番組には馬鹿馬鹿しいという気持ちを隠せなくなっていった。視えないのだから仕方がないことではあるけれど、彼らは霊のことを全く理解せずに好き放題に言っている。

 真実の世界を知っている、いや、視えているのは自分だけであるという事実は、僕から人間に対する興味を失わせていった。

 友人はいる。知らない人とも仲良く話すことはできる。夢を語り合って馬鹿なことをすることはできる。でも、心を開いて話せる相手は、思ったことを素直に話せる相手は一人もいない。

 僕は自分に対しても他人に対しても、ひどく嘘つきな人間になっていた。


 

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