妹の策略の時間
「な、なにこれ、チョー美味しいんですけど」
妹が夜食を食べているのをリビングの机を挟み眺める京平。
褒めの言葉に対し口角のつり上がりが自分でもわかる。
我が妹が汚物を見るような目でこちらを見ているが、見てないことにする。
「ホント、美味しい」
バカめ。俺が渾身注いだ料理が不味いわけ無いだろ。
誰か漫画でクッキングぼっちとか連載してくれねぇかなあ。題名見る限り一人で作って一人で食ってない?見たいに思えないよね!ね!因みに俺、主人公希望ですけどね!
間違っても背景の木とかやめてくださいよ、イラストレーターさん。それ幼稚園のお遊戯会「よくある黒歴史説集数から抜粋した名言」。てか、漫画は背景担当って人だっけ?まあいいや。
「お兄ちゃん。このハヤシライスどうやって作ったの?」
「ふふふ……知ってるかい、妹よ?ハヤシライスってな市販のルウをそのまま使うと水っぽくてあまり好きじゃない人もいる。だからそんな人のためにお兄ちゃん料理ペディアP30参照。これを混ぜたのさ」
稀にP60ページとか言うページ大好きな人がいるけど、今さらそれを「ページ60ページとかなくねっ!」なんて、とがめる人も人で何か哀れだ。
※。リア充が言っていたため過剰反応しています。
「え?!カレールウじゃん。それを混ぜるだけでこんな、美味しくなるのっ!!」
「まあ、今回は量が量だからそれしかできなかったけどな」
妹は「美味しい美味しい」と言いながら食事をしてくれていた。
料理した者にとって美味しいと言うひとことはとても感慨深いものだ。
だから、作った人に対して美味しいと1言入れておけば、モチベーションを保ったまま料理してくれる。
あれ?なんか黒い話に入ってる。
「それより妹よ、お前はどうなのよ」
「まあ、期待しときなさいってーの」
こいつに任せておけば
『えぇ、ナニソレ?!ダサスティックダサすぅぅう~』
とか、言われないからまだいいか。
ていうか、そんな口調をした時点で俺は関係を解消してやるけどな!
妹が夜食を食べ終えた後、兄の手をむりやり引っ張られ千切れそうになりかける思いをした兄、いや、気分的には千切れたのだが、そして部屋のドアの前まで連れられる。
「ひっひー、まあニートのお兄ちゃんにはファッションセンスないから分からないかもだけど、きっといいことあるよ。私がコーディネートしたんだもん」
まあしかし上から物を言うようになったな妹。
知っているぞ、兄は。
キサマはリア充とかふざけた民族に自らを売ったな?
ブーム遅れの語尾にポヨををつけたり、
朝から読む週刊誌『モテ術教えちゃう』的なのをお兄ちゃんの目の前で広げるのはやめてほしい。
モテて結果どうする?いやそれはどうでもいいが、一人の男がモテる事で一体何人の男に女の子がいかなくなる?
結果的にモテる奴が間接的に俺みたいなやつから異性を奪ってるていじゃね?
「そう言えばさ、出かける人って彼女じゃないの?」
「なわけねぇだろ。俺、久々に神に誓うよ」
「ふーん。で?付き合ってもいないのに遊びに行くような仲なの?」
ここで『ちげーし。むしろあいつの事嫌いだから』とか迂闊に口を滑らすと以降、妹の食い付きが面倒なので
「まあ、なんつーの。よくわからん」
と返すのがベスト。
「へぇそっか!今はお兄ちゃんの恋愛事情はスルーして、妹のコーディネートご覧あれ!」
まばゆい光が部屋から差し込むようであった。
翌日
「ちゃんと妹のセレクト守ってくれたんだ!」
「まあ、その、俺から見ても周囲と差異なくふつーに見えるから。サンキューな」
「いえいえー。さっ、もたもたしていると遅れちゃうよー」
「あぁ、行ってくるわ」
兄が急にしょぼくれた顔をするが妹が無理矢理玄関まで押す。
「いってらっしゃーい」
兄が、完全に見えなくなるのを確認すると戸を閉めた妹は、ふーっと息を吐く。
「へへ、お兄ちゃん。妹の策略に気づいてなかったね」
と、不敵に笑うのであった。
ここまで画面をスクロールして下さって、ありがとうございます。
ハヤシルウ+カレールウ
↑これ、うまいです。はい。
では!また次会話で!