妹の時間
土曜の夜
「お兄ちゃんどうしたの?」
「妹か。随分と遅くまで起きているのだな」
「いつにも増してキモいね。でなにやってるの」
状況的には京平が明日の私服をどれにしようか悩んでいる最中、我が妹が夜食をせがみに来た。
ふつうの家系の場合、ここで兄貴が私服を広げようがそれをとがめる妹はいないだろう。我が家の妹はどこぞのブラコンシスターではない。
我が家の兄はぼっちであり、休日一緒にに遊びに行く友達がいないことなど家族は知っている。
元に行ったことがない。
迂闊だった…。
妹が近づき、京平の手元の服を覗き込む。
「へぇ、お兄ちゃんこんな色物出してぇなにやってるのかなぁ?」
まるで浮気調査だ。
「お前は夜食を作って欲しいんだろ?この服たちは関係ない」
「女の子、男の子のどっちの友達?」
服からのいきなり性別選択肢登場!?
これ最近流行りのバーチャル世界に飛ぶ前のキャラ設定ですか?
まさかのラノベ展開をスタートしたのは妹であった。
「お兄ちゃんに友達はいないぞ?」
「で、その人可愛いの?」
今度はヒロインの美人ですか?設定ね
あいつをヒロインにすると、まず清楚でおしとやかと言うヒロイン必須要素消えるから無理だろ。降板だ降板。
生きてるけど、死して尚、妹は鋭い。長く一つ屋根の下に暮らしているからだろうか。一つ屋根の下というワードにブラコン、シスコンスキルを足せばラノベキャラは頬を赤らめるかもしれないがリアル世界でそれはありえない。
人間の本能は長くいるとその相手に対する好意の感情が消えていく傾向があるため、普通家族内での恋愛感情は発生しない。まあ例外はあるだろうけど俺は例内だ。
ていうか、自分に似ている時点で好意など抱けるわけがない。
おっと話しがそれた。
「なんでそう思う」
「服を出して悩むお兄ちゃんはお兄ちゃんじゃない。それはさておき。んで、男の人と出かけるなら夕飯の時そわそわしたりしないし、てかしてたらまじキモいってゆーか、そしたら女の人じゃん?で、お兄ちゃんは画面の女の子とそれよっか可愛い妹を毎日見てるわけさ、だから基準値を越える美人さんだろーなって」
度々挟む、兄を小馬鹿にする表記と
度々挟む、妹の美人説は放置するとして
いもうと、いもうと、いもうとよ最強の法医学者ですか?
お前刑事ドラマによくいる、めっちゃドンピシャな長文推理、かなでる人よ?
「とにかく美人でもないし、そんな奴は友達じゃない」
「どこに行くの?」
またもや設定画面!?
今度は異世界に飛びます。二度と戻れません的なあれか?あれ現実になったら、ラノベ読んでる奴強そうだよな〜。
「ふ○Qです」
もう面倒くさいので答えた。
「へぇ、てかさ服はそれにするの?」
「そうだな、今んとこは」
我が妹は布団に上下揃えられた、明日の1番候補である京平のプロデュースしたファッションである。
調子のって、俺ファッションセンスあるんじゃね?とか言いながら並べたやつ。
実際自分では良く出来たほうだ。と思っている。
「ださい、お兄ちゃん妹のために美味しー夜食を作ってくれるならその時間にうちが明日の服考えてあげる」
うわ、ださいとか言いやがった。
しかしまぁろくに制服とスウェット以外に手をかけたことのない京平は要求を飲むしかなかった。
「取り引き成立?お兄ちゃん」
「しょうがねぇな、最高にうまいやつ作ってやるよ」
「いやっほぉーい」
「お前もな?」
「まっかしてよ!さあさあ、終わるまで絶対開けないでくださいね」
「このやり取りは鶴の恩返しか、んじゃまあ頼む」
(しっかしなぁ、何作っか。今夜の夕飯で材料ほとんど切らしてたよな、明日の帰りスーパー寄る予定だったし。今からスーパーは開いてないしコンビニは距離がある。さぁどうやってあいつを満足させるか)
(いやぁ、あのお兄ちゃんが女の子とデートねぇ。相手の方はどのようにしてお兄ちゃんを休日に部屋から出す事に成功したのやら。まっ今はいっか、それよりこの私服の少なさ、流石お兄ちゃん。どうプロデュースしようかしら)
(久々に料理人の腕がなるぜ)
(久しぶりに、コーディネーターの力量が試されるわね)
兄妹、似た物同士。
案外、この二人息ぴったりかもしれない。
ここまで画面をスクロールして下さって、ありがとうございます。
京平の妹、ついに初参戦!
料理人VERSUSファッションコーディネーター
闘うわけではないですが、引き続きお楽しみいただければ幸いです。
では!また次回話で!