林間学校『後半!』の時間
高校というものは先生が先立ちイベントに熱を入れるものではない。基本的に生徒の自主性が重んじられる。
中学校みたいに体育祭の練習をアホみたいに重ねない。係を持たない者は、やって前日のリハーサル程度だ。
『ねぇ暇なんでしょ。来なさいよ』
現在時刻は午後8時過ぎ当たりは暗くなっている。関口からの電話が無く、日常を取り戻した俺ならこの時間は楽園に行く予定だった。
今、京平は1人でラノベを片手に部屋として与えられた314号室でくつろいでいた。
『暇でも体の調子が悪いんだよ』
特に関口。お前のせいだ。
昼飯作るとき火加減に手加減できねぇわ写真係の仕事全部俺やってるんだからね?
『お化け怖いの?』
怖いの?じゃねぇよ。
現在ホテルの敷地内で我が校主催肝試し大会が開幕している。
同じクラスの鶴見くんと鶴見くんフレンズには「お腹痛い」の1言追っ払えたが、しばらく経ってこの有り様だ。
今更肝試しとか乗り気になれない。
人間の仕掛けるお化けのクオリティなどFPSのゾンビでとっくに耐性なんかついてる。
お化けより怖いのは、ぼっちが肝試しやって帰ってこなくなっても人数確認の時忘れられてリアルお化けになるかもしれないって事くらいだ。
『文化祭の時とかでお化け屋敷でも何でも入ってやるから今日は勘弁してくれ』
『…。分かったわ。じゃあ文化祭、楽しみにしてる』
『おーおー楽しみにしとけ』
やっと追い払えたぜ。今日は何だかんだいって1人の時間がなさ過ぎてぼっち成分不足していた。何より班員みなリア充だ、見ているだけで疲れる。
場所は移り 肝試しスタート地点付近
「三笠くん来ないって?」
電話を切った後タイミングよく話しかけて来るのは大野塚 瑠美。
林間学校は同じグループに居る、私の幼なじみの様な存在。
綺麗なセミロングの黒髪その細身の体躯はジャージ姿でも尚、妖艶さを失わない。
「うん。調子悪いから部屋で休んでるってさ」
「ふーん。……あ!下着お風呂場に置いてきちゃった。ごめんね、取ってくる」
「ちょ、ちょっと瑠美!?」
「見つけたらすぐ戻ってくるから、ごめんあれ高くてさ」
「なら、うちも行く」
「はいはいダメですよー。女の子同士とはいえ恥ずかしい」
「早く戻ってきてね?」
「りょーかいっ」
敬礼ポーズの全てをとっても瑠美に欠損が見当たらないどころか余計可愛く見える。
かく言う、ひがむ彼女は自分の容姿に無頓着なのだろうか。それまた彼女の魅力でもある。
宿泊施設入り口
ロビーから二手に別れる通路が見える。
(さあて部屋番号はっと……314号室ね。じゃあ右から行ったほうが近いかしら)
スタスタと風呂場とは全く逆方向の314号室へ向うのは忘れ物を取りに行くフリをした黒髪の大和撫子。
瑠美は1分もしないうちに目的の部屋へと辿り着く。
非常時に備え鍵は班員がいる限り解錠する事になっている。
ドアノブに手をかけゆっくりと中へ侵入する瑠美。
そこにあったのは読みかけと思しき本と白のガラケー、男子の乱雑さが出ているバックが2つ。
もう1つはキチンと整理が行き滞っていた。
てことわぁ隠れたかなぁ?流石に来ることはばれてないだろうし。
じゃあ出てきてもらおっか。
「あれ〜?これ誰のケータイかなぁ~」
瑠美の背後にあるタンスの隙間から息を潜めながらその様子を除く京平。
くそっ慌てて隠れたからガラケー置きっぱにしちまったじゃねぇか。
あの女の子確か、同じ班の人。あのおしとやかそうな子が夜這い?
まず相手が俺の時点でそれはないな。
ていうかほんと何でここに?!
足音がしてまず男2人はたった十数分で帰ってくる理由がないと判断して関口だと思いこんでたけど、まさかのダークホース登場!?
表では仲間の面してて最終局面の良い所のちょっと手前で暴露しちゃうアホキャラの立ち位置だな。
今はどっちかっていうと俺の方がアホキャラだろうけどなっ!
「このケータイで渚よべるかなぁ〜、渚がいないとうち何も分からないなぁ〜」
バタンッ
「さーせんしたっ!!」
速攻で出た。謝った。
タンスから出てインターバル無しで土下座した。
「やっと出てきてくれた、初めまして三笠くん。同じグループ同じクラスの大野塚 瑠美です」
「い、一体何の御用で?」
土下座を崩すタイミングを完全に失った京平を見下す目先の大和撫子。
ガラケーを摘みながら小悪魔のように大和撫子は言った。
「渚を変な風に呼ばれたくなかったら質問に答えてね」
「へ、変な風にとは、例えば……」
「襲われたっていっちゃうかも(はあと」
やばい。この人に。おれ。狩られる。
「じゃあ質問するよ準備はいい」
あぁ。
人生の最後くらいにネトゲやりたかったなぁ。
ここまで画面をスクロールして下さって、ありがとうございます。
初登場にして中々インパクトある、瑠美ちゃん。
引き続き林間学校編は少し延長気味に続きます。
ではまた次回話で!