武器選び
翌日、訓練場にある段上にて
「今日は手前らが使う武器を選んでもらう!本当に自分に合った武器を選らばねえと命に関わるからな!」
隊長がそう叫ぶと、奥から大量の武器が運ばれてきた。
その種類は豊富で、見慣れたものからまだ見たことが無いものまであった。
「ちなみに俺の日本刀ぱくったら潰すからな!」
子供かよ…… とジークは心の中で呟いた。
「手前ら!武器を選んだら図書館に行って使い方を学んで来い!使い方を知ってる奴は実戦訓練として異星人と実際に戦ってみろ。捕獲してきて薬品を打ってあるから相当弱ってるけどな」
それを聞いてジークは胸が張り裂けそうになるほど嬉しかった。
「ねえジーク?銃剣付きのアサルトライフルって私に合ってると思う?」
「お前は銃器の扱いは上手かったからな。でも弾切れには気を付けろよ。銃剣術だけじゃとても異星人は倒せないからな」
マーベルは嬉しそうに首を縦に振った。
「じゃあ私早速異星人と戦ってくるね」
「待て!お前の身が心配だ!俺も一緒に行く!」
まるで親バカのようにジークは叫ぶ。
「大丈夫だよ。本当に危なかったら試しに戦わせようなんてしないわよ。薬品で弱らせてあるって言ってたしね」
「でも、本当に気を付けろよ!」
「分かってるよ。心配してくれてありがとね。私はとっても嬉しいよ」
そう言ってマーベルは去っていった。
「ジーク。貴様はなぜマーベルと親しげに話している!? マーベルは貴様のような庶民とは釣り合わん!このジュリウス様がマーベルには一番ふさわしいのだ!」
ジュリウスは細長いレイピアをジークに突きつけながら叫ぶ。
「鬱陶しいのが来たな……」
「貴様!この俺を鬱陶しいと言ったな!?」
どうやらジュリウスは相当お怒りモードのようだ。
「はあ…… さっき聞いたけど、マーベルはお前のこと嫌いだってよ」
「う、嘘だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
衝撃の一言にジュリウスはその長い髪を掻き乱し、近くの壁に頭をガンガンぶつける。 嘘だとも気付かずに。
「マーベル、ああ愛しのマーベル!一体俺の何が悪いと言うんだ!?教えてくれマーベルゥゥゥゥゥゥ!」
(よし、馬鹿は処理した。さて、よさそうな武器は……)
荒れ狂うジュリウスを無視してジークは自分に合いそうな武器を探し始めた。
(この剣は何だ?)
ジークは一つの剣を手にとって首を傾げた。
(刃身が細い割に重量はなかなかだな。そしてスイッチまで付いてやがる)
「それは電流剣よ」
背後から女性の声。
ジークが振り返るとそこにはルミアが立っていた。
「る、ルミア!?」
「人を見て驚いたような反応をとらないでくれるかしら?」
どうやらルミアはジークが昨日訓練をさぼったことは覚えてないらしく、彼はほっと溜息をついた。
「てか電流剣って何だよ?聞いたことねえぞ?」
「刀身の中に発電機が入っていて、スイッチを押すと電撃が発生する仕組みよ。高電圧スタンガンが武器になったような感じかしら」
ほう…… とジークはまじまじと電流剣を見つめた。
「よし!俺の武器はこれだ!」
「なら早速スイッチを押して見なさいよ。どのくらいの電撃が発生するにかは私もまだ知らないし」
「騙されないぞ!」
突如ジークはそう叫んだ。
「はあ?」
「どうせゴム手袋とかしないと自分ごと痺れるとかいう設定だろ?はっはっは!俺を騙そうとしてもそうは行かない。お前の考えることなんて全てお見通しなんだよ!」
ルミアとしては騙しているつもりは全く無いのだがジークは気付かない。
「何か誤解しているみたいね。ちょっと貸しなさい」
ルミアはジークから電流剣を受け取ると、柄のスイッチを押した。
『バチッ!』
「あれ、何で痺れてないのお前?」
「当たり前のことだけど、柄は絶縁体でできているのよ」
そう言いながらルミアは電流剣をジークに返す。
「さすが異星人用の武器だけあってけっこう威力はは強いからしばらくの間刀身には触れないのがいいかもね。わずかに電流が残っている可能性があるわ。たぶん静電気くらいの威力だとは思うけれど」
「よく知ってるなお前?」
「本に載っていたのよ。興味はあったけど重くて使う気にはならなかったわ。アンタもよくそんな重いもの持てるわね」
「フフフ、これが男の力よ……」
格好つけるジークだがルミアは気付いていない。
「ところでアンタこの後図書館行くの?」
「勿論だ。早く異星人を殺したいがまずは電流剣について詳しく知っておくのが一番だしな」
ルミアは残念そうに溜息をつく。
「他の連中もだいぶ行くらしいし、私は誰もいない資料室で本を読むとするわ」
「お前も図書館行けばいいのに」
「私は一人で本を読むのが好きなの。他の奴らがいると集中できないし」
そう言って背を向けて歩いていくルミアに向かって木陰はぎりぎり聞こえるくらいの声で呟いた。
「ボッチなんだなお前。分かってはいたが」
直後、「ビクッ!」と彼女は反応した。
「う、五月蝿い! 確かに私は社交性のない方だと少々自覚はしているけど別にボッチじゃないわよ!本という親友がいるもの!」
「ボッチを通り越して可哀想な人だな」
「あ、アンタはどうなのよ!?言っとくけどマーベルさんは入んないからね!幼馴染はカウントなしよ!」
「無茶苦茶な理論だな…… こう見えてもけっこう他の奴らとは話してるぞ?今度誰か紹介してやろうか?」
気を遣うジークに向かってルミアは首を振る。
「別にいいわよ。読書の時間が少なくなるのは苦痛だし。それに、アンタとは友達だとは断じて認めないけど普通に話せるしね」
「俺だけでいいのか?同姓のマーベルとかは?」
「別にいいわよ。何か嫉妬されてるみたいだし」
ルミアはいまいち分かっていない様子で呟いた。
「じゃあ俺そろそろ行くわ。サボりが見つからないように頑張れよ」
「私を誰だと思っているのよ?見つかっても上手くやり過ごすわ」
そう言って、ルミアは資料室に向かって歩き始めた。