ルミア・カリアロード
数週間後…… 防衛軍の講義室にて
「ルミア・カリアロードはどうしたァ!? 4日連続で無断欠席とはいい度胸じゃねえか! おぉ!?」
講義室内にヘンリー隊長の怒声が響き渡る。
「おいジーク! ジーク・フリードリッヒはいるか!?」
「はい。 ここにいます」
ジークはびしっと勢い良く手を挙げた。
「手前はこん中で最も成績がいい。 だから今日の授業は受けなくていいから次の訓練までにルミアの野郎を引っ張って来い!」
「すみません。 俺この異星人についての授業が大好きなんで絶対サボりたくないです!」
教育者としてこの上なく嬉しい言葉に、隊長は目をごしごし擦った。
「べ、別に泣いてなんかねえんだからな! しかし残念だがジーク、この時間は俺も用事があるんでな。 今日は自習だ」
隊長の言葉に、ジークはがっくしと肩を落とした。
ルミア・カリアロードは三度の飯より読書が好きだ。
訓練や授業をさぼって図書室で本を読むほどだ。
現在、彼女は図書室の奥の椅子に足を組んで座りながら本を読んでいた。
その姿は、まるで美貌で名高い女神のようにも見えた。
『がちゃ』
図書室のドアが開き、誰かが入ってくるがルミアは微塵も気にしない。
そして、その人物は彼女の目の前にやって来た。
「何か用かしら? お姉さんが大好きなジーク君?」
彼女は本から目を離すことなく尋ねる。
「そりゃどうも。 隊長がお怒りだ。 次の訓練には絶対に出ろ。 そうしないと俺が隊長に殺される。 俺の命運はお前にかかっているんだルミア!」
「ねえ、私にとってアンタと本。 どっちが大事だと思う?」
突然の彼女からの問いかけにジークは自分自身を指差した。
「信じてるぜ」
「答えは本でした」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああん!!」
ジークはその場に崩れ落ちた。
ルミアはふう… と溜息をついて本を閉じる。
「オーバーリアクションは周囲の迷惑になりかねないわよ? 自重しなさい」
「お前が悪い。 俺を選ばなかったお前が悪い!」
「アンタ、もしかしてメンタルとか弱かったりするの?」
「普通自分より本の方が好きと言われたら悲しくなるだろ!? 誰だって!」
ルミアはそんなジークを見て微笑を浮かべた。
「あーあ。 アンタのせいで本どこまで読んだか忘れちゃった。 さて、アンタは私に何をしてくれるのかしら?」
「ほえ?」
思わずジークは間抜けな声をあげる。
「分かってないみたいだから分かりやすく説明してやるわ。 アンタが原因で私が本を閉じてしまって読んでいたページが分からなくなってしまった。
だからそのおわびに私に何かしなさいってことよ。 分かったかしら?」
「それはただお前がドジっ子なだけであって、別に俺のせいじゃないと思うんだが如何でしょうか?」
やれやれといった感じのジークに、ルミアはお怒りになった。
「あ、アンタね! だ、誰がドジっ子よ! 私のような天才美少女がドジなんてするわけないでしょ!?」
「自慢乙。 じゃあお前が天才美少女なら異星人の特徴を一言一句漏らさずに言ってみなさい」
「いいわよ。 異星人は攻撃的であり個体によって知能の違いが激しい。 彼らの唾液は強酸性であり塩酸と似た性質ーーー」
それからルミアは1時間もの間、ジークの知らない異星人の知識まで休む間もなく喋り続けた。
「ど、どうよ…… これで私が… 天才美少女だと理解したで… しょう?」
息継ぎもせずに喋っていたので彼女の息はは絶え絶えだ。
「す、凄え…… 凄えよお前! 何でこんなことまで知ってんだよ!? 本当に勉強になった!」
目をキラキラさせながらジークはルミアの手を握った。
「せ……」
「どうした? 顔が赤くなってるぞ? そうか分かったぞ。 お前は男に手を握られたことがないんで恥ずかしいんだな?」
「せ………」
「ふっふーん! 俺は鈍感ではないからお前の気持ちなど簡単に読み取ってしまうんだなー?」
「セクシャル・ハラスメントーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
彼女は図書館内に響き渡るほどの大声で叫んだ。
「五月蝿いな! 夫婦喧嘩なら他でやらんかい!」
司書らしき初老の男が奥の部屋から出てきて文句を言った。
「す、すみませーん」
「ったく…… 近頃の若いもんは授業サボっていちゃいちゃしおって……」
それだけ言ってまた部屋に戻る司書に、「だったら何でほったらかしにするんだ?」 とのジークの心の声は届かない。
「た、確かに私は天才美少女だから欲情したからって文句は言えないけど、セクシャル・ハラスメントをしていいなんて言ってないわよ!」
「再び自慢乙。 そして略せ」
そんなジークを無視してルミアは話を続ける。
「どうやらアンタは自分のしでかした罪に気付いていないようね。 女性に許可を取らずにその体を触ることはセクシャル・ハラスメントなのよ!」
「……正しい。 そのはずだが何か納得できない」
「反省の色が全く見られないわね。 いいわ! 次の訓練の時間を利用して私がアンタを徹底的にぶちのめす! 首を洗って待ってなさい!」
そう言い残してルミアはどしどしと歩きながら図書室を後にした。
「ま、何とか目標は達成って訳だな。 宣誓! 俺は今日の訓練をサボることをここに誓います!」
ジークは勝手に宣誓すると椅子に座って眠りに入った。