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五人の入隊希望者

 防衛軍本部訓練場にて

 


「今回入隊希望の者はこの3656名か。 どいつもこいつも浮かれた面してやがる」

 ガラの悪い隊長らしき男は呟いた。

「おい手前ら! 俺は手前らの隊長のヘンリー・タイラーだ! 今から手前らには代表で五人、段上に出て自己紹介をして貰おうか!」

「はい!」と入隊希望者達は一斉に返事をした。

「返事だけは一人前だな。 じゃあ前から五列目のゴーグル野郎! 手前からだ!」

 隊長に指名されたゴーグルを着けた少年は怯えたように段上に立つ。

「さて、自己紹介をして貰おうかァ!」

「ぼ、僕はグーフ・ムセイオンです! 好きな物はお金です! よろしくお願いします!」

 そう言ってグーフは隊長に向かって頭を下げる。

「向きが違う。 俺は手前のことなんざこれっぽっちも興味ねえんだからよぉ?」

 隊長はその鋭い眼でグーフを睨み付けた。

「す、すみませーん! 僕はグーフ・ムセイオン! よろしくお願いします!」

 グーフは入隊希望者達に向かって頭を下げた。

「最初からそうしてろってんだ。 うし、手前は元居た場所に戻れ。

次! 七列目ののツイン! 手前の番だ! 5秒で段上に来い!」

「了解です!」

 まるでボ〇ロの歌い手を彷彿とさせる可愛らしい少女が急ぎ足で段上に上がる。

「4秒だ。 遅えぞ!」

「ええ~。 言ってたことが矛盾してますよ~?」

「俺が今遅えと言ったら遅えんだ。 んなこといいからさっさと自己紹介を始めやがれ!」

 理不尽な隊長にツインテールの少女は不満げな様子を見せる。

「あたしはシャリア・ホルテンシウスだよ。 よろしくね!」

「じゃあお前は3.5秒で元居た場所に戻れ! いいな!」

「了解しました! 今度こそ達成してみせます隊長!」

 隊長に向かって敬礼すると、シャリアは猛ダッシュで元居た場所に戻る。

「3秒だ。 だがお前は猛ダッシュで戻った。 それなら2.5秒で行けるはずだ! 結論を言うと遅え! この鈍足が!」

「口惜しいー! 脚には自信があったのにーっ!」

 シャリアは口惜しそうに地団駄する。

 そんなシャリアを見ながら、ジークはいい意味でピュアな奴だと心の中で思った。

「次は四列目の黒マントのロン毛男! 手前の番だ!」

「なぜ俺が頭の弱そうな貴様の言うことを聞かなければならない?」

 黒マントはその場から一歩も動こうとしない。

「おい手前。 隊長の言葉が絶対というルールを知らねえのかァ!? ああ!?」

「貴様の元々の身分は何だ?」

黒マントは腕を組みながら尋ねる。

「普通の一般家庭だ!」

「なら俺の方が身分は上だな。 俺はジュリウス・クロウザ。 名門貴族クロウザ家の出身だ。 貴様も知っているだろう?」

「それがどうした。 外では知らねえが、ここでは俺の方が身分は高い」

 隊長がそう言うと、ジュリウスは彼を鼻で笑う。

「これだから一般庶民は困る。 例え貴様が隊長だろうと、俺が貴族だと言う事には変わりないだろう。 所詮一般庶民は一般庶民のまま。 貴族よりも格下なのだよ」

「手前……!」

 隊長は腰の日本刀に手をかける。

「ほう。 この俺に隊長様の実力というものを見せて貰おうではないか」

 ジュリウスも護身用のナイフを取り出した。

 突然の事態に、周りの入隊希望者達はどよめく。

 そんなジュリウスの前に、一人の女性が現れた。

「止めて! 見方同士で争って何の価値があるの!?」

 その女性は、さっきまでジークの隣にいたはずのマーベルであった。

「ジュリウス君。 今のは貴方が悪いよ。 隊長さんに謝って」

「し、しかしだな…… 一般庶民ごときにこの俺が頭を下げるなど……」

 ジュリウスは頬を赤らめながら頭を掻く。

「そんなこと関係ないでしょ! 貴方が悪いんだから謝って!!」

 マーベルはもの凄い剣幕でジュリウスに怒鳴る。

「……今回のところは俺に否があったと認めてやろう。 すまなかった隊長」

「随分と都合のいい野郎だな。 まあいい」

 どうやら両者は手を引いたようだ。

「良かった…… ジュリウス君が貴族のプライドを捨てて隊長さんに謝ってくれて、私嬉しいよ」

 まるで女神を思わせる笑顔を浮かべるマーベルに、ジュリウスの心は奪われた。

「じゃあ次はさっきの女。 手を引いてやったんだから手前は自己紹介をしやがれ」

「お安い御用です」

 マーベルはすたすたと段上に上った。

「私はマーベル・テレヴィアです。 皆さんの足を引っ張らないように精一杯頑張ります。 よろしくお願いします」

 謙虚な彼女の自己紹介に、男共が歓声を挙げた。

「ええい五月蝿い! マーベル! 席に戻れ! 

 次は一列目の赤髪。 さっきから敢えて黙っていたが、俺が話している時に読書なんていい度胸してるじゃねえか?」

「ええ、気に障ったのならごめんなさい。 謝るわ」

「どうやら自覚がねえらしい。 まあいい。 さっさと段上に上りやがれ!」

 赤髪の少女は溜息をつきながら段上に上った。

「私はルミア・カリアロード。 まあ基本本の虫だけど、よろしく頼むわね」

「よし、手前は席に戻れ」

 言われたとおりにルミアは席に戻った。

「(なあ、あいつってライラ姉の妹じゃねえか?)」

 ルミアを見ながら、ジークは隣のマーベルに耳打ちした。

「(そうかもね。 名字が同じだし、顔もラインもそっくりよ)」

「(後でちょっと声掛けてみる。 お前もどうだ?)」

「(私はいいわよ。 ジークの邪魔をするわけにはいかないし)」

「(何でキレ気味?)」

「(別にそんなことありません!)」

 そう言いながらもマーベルはふてくされたようにそっぽを向く。

 その直後、隊長が再び口を開いた。

「これから手前らは一ヶ月間、ここで修行をしてもらう! 今日のところは解散だ! さっさと散りやがれ蛆虫度もが!」

 なぜか怒り口調で叫ぶと、隊長は奥に入っていった。



 

 



 


 

 

 

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