襲撃
「ジーク! どこに行っていたの!? 心配したんだよ!」
金髪碧眼の人形のような真っ白な肌に、可愛らしい顔をした少女がジークに話しかけた。
「マーベル。 先に逃げてなかったのか?」
「ジークを置いて先に行くことなんてできないよ」
「なら行くぞ。 異星人の奴らが来る前にな」
「うん」
小さい体を生かして、二人は群がる群衆をくぐって先頭にとたどり着いた。
その時……
「異星人だ! 異星人が何でこんなに早く来てるんだよ!? ぐわあああああああ!!」
後方の方から絶叫が聞こえた。
それは次から次へとまるでやまびこの様だった。
そして、群衆は我先にへと逃げ始める。
他人を押しのけ、無理矢理活路を開いた。
そして、マーベルも後ろから来た男に突き飛ばされた。
「キャッ!」
「オイあんた。 マーベルに何してくれてんだ」
ジークはそのまま先に向かおうとする男の服のすそを掴む。
「離せクソガキ! 今はお前らなんかにかまっている暇なんてないんだよ!」
「マーベルに謝れよ!」
「あ?」
「マーベルに謝れって言ってんだよ!」
その言葉の直後、男はジークの顔面を力いっぱい殴った。
「命が危ねえ時に、どうして手前らにかまっている必要があるんだよ!? せいぜい異星人の尊い犠牲になりやがれ! ははははっ!」
男は笑いながら先へと走って行った。
「ジーク。 ごめんね私のためにこんな怪我負わせちゃって」
「お前は被害者だろうが。 加害者面すんなよ」
そう言ってジークはマーベルの手をとった。
「俺達も逃げるぞ」
「でもお母さんとお父さんが……」
「今は無事なことを祈るのみだ。 だから俺達は俺達で逃げるぞ。 いいな?」
「うん……」
マーベルはしぶしぶうなづいた。
(どうしてだ? どうして異星人がこんなに早く来てる!?)
ライラは両手の二丁ブレードを器用に使いこなし、異星人を片っ端から斬っていた。
(見張りは何をやっていたんだ!? 増援もまだ来ないし…… 私達に死ねと言うのか!?)
現在、ライラは一人で異星人と戦っていた。
共に戦っていた仲間は、ライラを除いて全員異星人に殺されていた。
それなのに、異星人は次から次へと現れる。
(このまま戦っていても死ぬだけだ…… くそっ!)
彼女は唇を噛み締める。
(そうだ。 ジークとマーベルは今どうしている? ここで死ぬのなら、命がけであいつらを救い出す!)
そう心に誓うと、ライラは異星人の群れに向かって飛び込んだ。
ジークとマーベルは、街の中を逃げ惑っていた。
当てもなく、ただひたすらに逃げていた。
「ねえジーク! どこに行くの!?」
「どこもくそもねえ! 異星人の居ないところに逃げるだけだ!」
実際、彼らが異星人に見つかるのに、そう時間はかからなかった。
異星人は彼らを見つけるや否や、まるで猫のような速さでジーク達に向かって来る。
勿論、ジーク達は逃げたが、あっという間に異星人に追いつかれた。
「くそっ!」
ジークは道端に落ちていた石ころを投げるが、異星人はそれをいとも簡単に避け、ゆっくりと二人に向かって来る。
「これで…… 終わりかよ」
「そうだね……」
彼らは、自分達がいかに無力であることを悟った。
「私、まだまだいっぱいやりたいことあったのに…… こんなところで死にたくなんかないよ……」
マーベルの碧眼から大粒の涙がこぼれる。
そんなマーベルの頭を、ジークは優しく撫でる。
「泣くなよマーベル。 お前には俺がついている」
「ついているって、ジークは武器も何も持っていないんだよ!?」
「ついているって言っても、死後の世界のことさ」
「そんな世界が…… あるなんて思えないよ」
マーベルは涙を拭いながら言った。
「あるさ。 少なくとも、今はそう信じたい」
「ジーク…」
「ただ絶望して死ぬより、こっちの方が何倍もいいだろ?」
「…うん、そうだね。 私も死後の世界を信じるよ」
そう言って見つめあう二人の頭上から、異星人がその鋭利な爪を振り下ろした。