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金目当てで嫁いだ私に、夫は毎日宝石を贈ってくる

掲載日:2026/10/10

 結婚して七日目、夫から届いたのは花の形のブローチだった。

 金の茎に翡翠の葉。花弁には薄紅色の石が嵌まり、角度を変えると朝の光が透けた。

 素晴らしい細工だ。

 私は心から喜び、胸元へ当ててみた。


「よくお似合いでございます、奥様」


 褒めたのは執事だった。

 贈り主の席は、今朝も空いている。


「モーリス。伯爵は?」

「すでに書斎でございます」

「あの方は書斎とご結婚なさったのかしら」

「いいえ。奥様とでございます」


 分かっている。私も式に出た。

 式に出た夫と、それ以来まともに話していないのだ。


 婚礼の夜には紅玉の首飾りが届いた。

 大粒の石を金の葉が囲み、その下に小さな真珠がいくつも揺れる。婚約中に私が店先で見とれていた品だった。

 私のために選ばれた。そう思うと嬉しくて、すぐ身につけた。

 夫は港の倉庫で起きた事故の知らせを受け、晩餐へ来なかった。


 二日目は翠玉の腕輪。

 私は緑のドレスへ着替え、夕食を待った。

 事故の後始末で帰りが遅くなるという。


 三日目は青玉の櫛。

 髪を上げ直した私に、執事が告げた。伯爵は書斎で夕食を軽く済ませるという。


「奥様はどうぞ、お好きなものを召し上がってほしいとのことで」


 そのとき初めて、鴨の焼ける匂いに腹が立った。

 私が料理人と相談して選んだ献立だった。焼き加減もソースも申し分ない。

 向かいに並んだ銀器だけが、一度も使われずに下げられた。


 四日目からは、贈り物に合わせて着替えるのをやめた。

 耳飾りも指輪も、その翌日の長い首飾りも、ちゃんと喜んで受け取った。

 礼状も書いた。もらった物は嬉しいし、お礼を言わない女ではない。

 ただ、伯爵の席に皿を並べるかと聞かれると、もう首を振るようになった。


 六夜続けて一人で食べた私は、今朝、ついに空席へ文句を言っている。

 新婚の朝としては、少々見栄えが悪い。


「お食事がご不満でしょうか」

「お料理は美味しいわ。銀器も綺麗。椅子の座り心地もよろしい」


 ブローチを箱へ戻した。


「全部、結婚してよかったと思うものばかりよ」


 モーリスは頷いた。

 頷かれると、それ以上を言いにくかった。


 私は金目当てで、この家へ嫁いだ。

 そのことなら夫にも正直に申し上げてある。


 ◇


「で、望みどおりじゃない」


 昼過ぎに訪ねてきたイザベルは、七つの宝石を眺めて言った。

 古くからの友人は遠慮をしない。


「毎日これだけいただいて、不幸だとでも?」

「不幸とは言っていないわ」

「そうよね。そんなことを言ったら、この腕輪に失礼だもの」


 私もそう思う。

 翠玉を一つずつ細い金で留めた腕輪は、手首に沿って滑らかに動く。どこから見ても石の緑を邪魔しない。

 飾り棚にしまっておくには惜しい品だ。


「ただ、一緒に夕食くらい食べたっていいと思うの」

「そう頼んだ?」

「お手紙に、早くお戻りくださいませと」

「戻ってはいらっしゃるのね。書斎に」


 なんて腹の立つ理解のよさだろう。

 私は茶を飲んだ。


「来てくださいと改めて頼むのも、何だか」

「何だか?」

「私の方だけ待っていたみたいでしょう」

「待っていたのでしょう?」


 返事をせず、砂糖入れを少し遠くへ動かした。

 イザベルは構わず手を伸ばす。


「あなた、縁談のときに何と言ったのだったかしら」


 よく覚えているくせに。


「裕福な暮らしがしたいと」

「ほかには?」

「綺麗な物も美味しい物も好きです。結婚してまで欲しくないふりをするつもりはございません、と」

「立派ね」


 褒めている顔ではなかった。


 ロラン・ベルフォール伯爵は、船と倉庫をいくつも持っている。

 伯爵位を継いでから商いを広げ、父の代には傷んでいた屋敷を建て直した人だ。

 若い令嬢の好む舞踏会には滅多に出ず、縁談も長く決まらなかった。

 右の頬から顎にかけて、火傷の痕がある。


 初めて会ったときには、私も驚いた。

 けれど目を逸らすより先に、出された菓子の大きさを見てしまった。実家のお茶会で二つに切って出されるものが、丸ごと一つあったのだ。

 伯爵は私の視線に気づき、皿を近くへ寄せてくれた。

 無愛想だと聞いていたのに、その手つきは優しかった。


「ご存じだとは思うが、私はあまり面白い男ではない」


 そう言うので、私は答えた。


「面白い話でしたら、私がいたしますわ。お聞きになるのもお嫌い?」

「いや」

「でしたら結構です」


 それから暮らしの希望を聞かれ、お金と美しい物が好きだと申し上げた。

 伯爵は困りも笑いもせず、承知したと頷いた。

 気前のよさだけで選んだつもりだったけれど、あの短い返事も少し気に入っていた。


「あの方、私の話を聞くのはお嫌いではないそうなの」

「なら、宝石に向かって話していないで、ご本人に聞かせれば?」


 イザベルは腕輪を箱へ戻した。


「私なら今日のブローチを着けて行くわ」

「あなたならね」

「ええ。あなたなら七つとも着けるかしら」


 軽口のつもりだったのだろう。

 私は並んだ箱を見た。

 七つとも、まだ贈り主に見せていない。


 友人が帰ってからモーリスを呼ぶと、彼は私の質問に少し驚いた。


「贈り物は、すべて旦那様がお選びになっております」

「お店に任せているのではなくて?」

「最初の首飾りは、婚約中に奥様がご覧になっていた品を取り寄せました。青玉の櫛は、留め具が髪に絡まぬものをと、二度ほど作り直させております」


 私は髪に手をやった。

 たしかに使いやすかった。外すときに引っかからない。


「昨日の首飾りも、重さを気になさって」

「あれで?」

「もう少し大きなものと迷っておいででしたので」


 私は箱の中の宝石を見直した。

 受け取った私は喜んだ。伯爵はそれを執事から聞き、次を選ぶ。

 これでは私が店に注文し、執事が配達しているのと同じではないか。


「伯爵はいまも書斎?」

「はい。本日は来客もございません」

「では、後ほど伺います。少し準備が要るので」


 私は七つの箱を自分の部屋へ運ばせた。


 ◇


 紅玉の首飾りをつけ、その下へ長い首飾りを重ねる。

 腕輪と指輪は問題ない。

 耳飾りをつけ、髪を青玉の櫛で留め、最後に花のブローチを胸元へ置いた。


 鏡の中がたいそう眩しかった。

 一つずつなら自慢したくなるのに、七つ集まると互いに引き立てる気がまったくない。

 紅玉は紅玉だけを、青玉は青玉だけを見ろと主張している。


「奥様、お着けになるのを少し減らしては」

「これは装いの相談ではないの。話し合いの準備です」


 侍女は櫛の位置を確かめ、そっと手を離した。

 立ち上がると、二本の首飾りが胸元で重なった。耳元にも普段はない重みがある。

 歩くには歩ける。

 ただ、途中で踊れと言われてもお断りしたい。


 書斎へ向かう廊下でモーリスに会った。

 彼は一瞬だけ目を大きくしてから、いつもどおりに扉を開けた。

 立派な執事だ。笑わなかったことは覚えておこう。


「旦那様。奥様がお見えです」


 ロラン様が書類から顔を上げる。

 立ち上がりかけ、そのまま止まった。


「アデル。その……」

「いただいた物を、お見せしに参りました」


 一礼しかけて、やめた。

 櫛の先と耳飾りが触れたからだ。


「すべてか」

「ええ。一つも忘れておりませんわ」


 彼は私を見て、口元へ手を持っていった。

 肩がわずかに動く。


「お笑いになって構いません。ただし、椅子を先に」


 すぐに椅子を引いてくれた。

 私はゆっくり座り、首をまっすぐに保った。

 ロラン様が窓際からもう一脚を寄せる。机を挟まず向かい合うのは、結婚してから初めてだった。


「綺麗だと思って選んだが、一度に着けるところは考えていなかった」

「私もです」

「重いだろう」

「ええ。これ以上は持てませんから、今夜の贈り物はあなたがよいのです」


 彼の笑いが止まった。

 私は指輪の向きを直し、もう一度その顔を見た。


「今夜、一緒に夕食を召し上がってください。私、あなたをお誘いしに来ました」


 しばらく返事がなかった。

 聞こえなかったはずはない。廊下へ聞こえたのではと心配になるくらい、はっきり申し上げた。


「……それでいいのか」

「それがよいのです」

「分かった。今夜は一緒に」


 拍子抜けするほど、素直な返事だった。

 私は膝の上で指を組み直す。


「それなら、どうして今まで」


 ロラン様は私の顔を見た後、視線を少し下げた。

 たくさんの石が目に入ったのだろう。けれど今度は笑わなかった。


「最初の二日は、本当に仕事だった。三日目には戻れたが、君が私に気を遣いながら食べることもないと思った」

「気を遣う?」

「この顔を見ないようにして、話を探して」


 彼は右頬へ手を上げかけてやめた。


「以前、縁談の相手に言われたことがある。食事中は傷を隠してくれないか、と。君も同じだと決めたわけではないが……贈り物なら、喜ばせられると分かっていた」


 私は耳飾りの揺れが収まるまで黙っていた。

 それから言った。


「その方とは、ご結婚なさらなくてよかったですわね」

「ああ」

「私には気前のよい夫ができましたし」


 彼が顔を上げた。


「贈り物は嬉しいです。本当に。でも、あなたは一度も見に来てくださらない」


 首元の紅玉に指を添える。


「いただいた物に合わせて三日続けて着替えたのに、褒めたのはモーリスです。櫛を着けた日は、料理人まで私の髪を褒めました」

「モーリスから聞いている」

「私はあなたに見せたかったのです」


 言ってから、頬が熱くなった。

 七つも着けて押しかけたので、今さら取り繕えない。


「あなたの好きな料理も知りません。食堂の窓際と暖炉のそば、どちらの席がお好きなのかも。話さずに暮らすつもりでしたら、誰と結婚したって同じではありませんか」


 ロラン様は唇を結んだ。


「寂しい思いをさせた。すまない」


 言い訳が続かなかったので、私はかえって困った。

 もう少し文句を言うつもりで来たのに。


「私も、来てくださいと申し上げればよかったのです」

「そう言わせる前に、私が顔を出すべきだった」

「ええ。それはそうですわ」


 彼が小さく笑った。

 笑うと傷のある側の頬が少し引きつる。それでも、目の端は左右同じように下がった。

 私はその顔をもっと近くで見ようとして、首飾りを椅子の肘掛けに引っかけた。


「あ」


 慌てて動きを止める。

 ロラン様が身をかがめた。


「そのままで」


 指が金具を持ち上げ、椅子の彫りから外してくれた。

 顔が近い。

 焙った珈琲と、紙のような匂いがした。


「いくつか外そう。首が痛くなる」

「なくさないでくださいませ」

「持ち主から借りるだけだ」


 冗談らしかった。

 私が髪を片側へ寄せると、彼は後ろへ回って長い首飾りの留め具を外した。

 指先が首筋に触れる。

 七日分の贈り物を受け取るより、その一瞬の方がよほど落ち着かなかった。


 外した首飾りを置く場所を探し、私は机の方を見た。

 重ねた書類の脇に小さな額がある。

 中に白い雛菊が一輪、押し花になって収められていた。


「それ、私が飾った花では?」


 婚約が決まって間もない頃、屋敷を案内されたことがあった。

 庭の雛菊を一輪もらい、この部屋の小瓶へ挿したのだ。

 立派な書斎だったけれど、茶色いものばかりで少し寂しかったから。


「そうだ」

「残していらしたの」

「捨てるには、惜しくて」


 ロラン様は額を伏せようとして、途中で手を止めた。

 私は見なかったふりをしてあげなかった。


「あの花も、私が選んだ物ですものね」

「ああ」

「宝石だけでなく、お花を選ぶ目もございますのよ」

「知っている」


 短い返事が嬉しかった。

 私は額の向きをそっと戻した。


「今夜は温室で食べませんか。夕方でも暖かいですし、花もよく見えます」

「用意を頼んでおく」

「私がいたします。あなたのお好きな物を教えてください」

「君の好きな物で」

「それはもう、六日続けて食べました」


 彼は少し考えた。


「牛肉の赤葡萄酒煮が好きだ。汁にパンを浸すので、行儀はよくない」

「パンを多めに頼みますわ」

「君は?」

「鱒の香草焼き。骨を外すのが得意でしたら、なお嬉しいです」


 ロラン様は初めて、少し得意そうな顔をした。


「それなら役に立てる」


 私は今夜の献立を決めた。


 ◇


 温室に小さな卓を用意し、料理人に二人の好物を頼んだ。夫は根菜も好むと教わり、煮込みへ加えてもらう。パンも多めにした。

 自室で待っていた侍女に、紅玉の首飾りの箱を渡した。婚礼の夜に見せられなかったものだ。

 耳飾りは小さな真珠だけにする。今夜は、顔を近づけても石がぶつからない。


 七時より少し早く温室へ行った。

 窓の外は青暗く、硝子にろうそくの火が映っている。葉の大きな鉢の間から、土と花の匂いがした。

 私は椅子に座らず、並べた銀器の間隔を直した。


 来ると言った。

 あの方は来る。


 料理を運ぶ使用人にも、モーリスにも、そのたびに顔を上げてしまう。

 入口でまた足音がした。今度は、ロラン様だった。


 仕事のときとは違う濃紺の上着を着ている。

 片手には花束があった。


「待たせた?」

「まだ七時になっておりません」

「では、間に合った」


 そんなふうに安心した顔をなさるから、私も安心してしまった。

 差し出された花束は、白と淡い紫を集めていた。


「庭師に名前を教わった。好きな花を、まだ聞いていなかったので」


 私は花束を胸へ寄せた。


「好きです。今度は一緒に選んでくださいませ」

「ああ」

「時間がかかりましてよ」

「今日も庭師をずいぶん待たせた」


 花を受け取りに来たモーリスが、今回は少し笑った。

 私は夫の腕へ手を置いて席へ向かった。

 ほんの数歩でも、そうしたかった。


 ◇


 夫は、魚の骨を外すのが本当に上手だった。

 銀のナイフを入れて皮を開き、身を崩さず背骨を持ち上げる。

 空いていた皿へ半分を移し、私の前に置いた。


「ありがとう。では、こちらを」


 私は煮込みを取り分けた。人参は夫の皿へ多めに載せる。


「お好きだと伺いましたもの」


 彼は私の皿を見た。


「それなら、その一つも欲しい」


 私は匙を止める。


「一つくらいは、私にも残してくださいませ」


 笑いをこらえる顔を見て、からかわれたのだと分かった。

 ずるい方だ。私はいちばん照りのよい肉を自分の皿へ取った。


 ロラン様が笑った。

 私も笑った。温かいうちに口へ運んだ肉は、簡単にほどけた。


 最初は少しずつ話した。

 温室の椅子が意外に硬いこと。書斎では昼食を食べ忘れやすいこと。

 夫が仕事で一番困るのは嵐ではなく、ある船長だという。良い知らせも悪い知らせも、途中から自分の自慢に変えてしまうのだそうだ。


「話を聞き終える頃には、いつ出港したか忘れてしまう」

「最初に日付を聞けば?」

「その日の朝、何を食べたかから始まる」


 私は声を上げて笑った。

 ロラン様は魚へ目を落とし、それからまた私を見た。


「君はそうして笑うんだな」

「ええ。おかしければ」

「婚約中は、あまり見なかった」

「少しは大人しくしておりましたの。縁談がなくなったら困りますから」


 正直に言いすぎただろうか。

 けれど夫は頷いただけだった。


「いい条件だった?」

「とても」

「それはよかった」


 その顔を見て、私はナイフを置いた。


「でも、いただいた条件には書かれていなかったことがございます」

「何だろう」

「魚の骨を取るのがお上手で、ときどき意地悪をおっしゃる」


 彼の目が少し丸くなった。


「私は、その方と結婚できて嬉しいです」


 窓の外から風の音がした。

 ロラン様は何か言いかけ、一度口を閉じた。

 待っていると、彼は自分の前の銀器を見て言った。


「私は君がこの家で笑っていると聞くだけで、しばらく満足できると思っていた。目の前で笑ってもらう方が、ずっといい」

「ええ。私も、聞くだけより褒めていただく方が好きです」


 紅玉の首飾りへ視線を落としてみせる。

 彼はすぐに気づいた。


「よく似合っている。婚礼の夜にも、そう言うべきだった」

「来られなかった二日分は、これから取り返してください」

「三日目からは?」

「そちらは、もう少し多めに」


 私は葡萄酒を飲んだ。

 喉へ落ちる温かさとは別に、頬が熱い。


「アデル」


 呼ばれて顔を上げる。


「君が好きだ。会って話した頃から」


 今度は私の方が、返事を忘れた。


「欲しいものを聞くと、いつもはっきり教えてくれた。私に気を遣って何もいらないと言われるより、ずっと嬉しかった」

「それなら、ずいぶん楽な妻でしょう」

「いいや。今日、何が足りなかったかを知った」


 ロラン様は手を伸ばした。

 私は自分の手を重ねる。

 今夜つけなかった指輪の分だけ、握りやすかった。


「明日も一緒に食べよう」

「明後日も」

「ああ」

「お忙しい日には、書斎へ押しかけます」

「そのときは先に知らせて。二人分の椅子を用意しておく」


 話してよかったと思った。

 けれど、まだ私の方の返事をしていない。


「私も、お慕いしております」


 彼の手に力がこもった。

 私は少しだけ顔を背けた。繋いだ手は離さなかった。

 食後、私は椅子を彼の隣へ寄せてもらった。

 近くで見る火傷の痕は、ろうそくの光で陰影が深くなる。

 顔を覗き込む私に、彼が少し身を固くした。


「何か?」

「どちらからがよろしいかと思って」


 意味が伝わるまでに一呼吸かかった。

 私は待った。宝石をねだるより、ずっと胸が騒いだ。


 彼の手が頬へ添えられ、唇が触れる。

 離れた後も顔が近かったので、私はそのまま上着を掴んだ。


「もう少し」


 夫は、今度はすぐに望みをかなえてくれた。


 ◇


 翌朝、食堂へ来た夫は小さな箱を持っていた。

 私は椅子から身を乗り出した。


「今日の贈り物?」

「そうだ。昨日選んでおいた」


 中には小さな青い石を連ねた耳飾りが入っていた。

 今度の休みに着ようと思っていたドレスへ、きっとよく合う。


「お気に召すとよいのだが」

「とても。明日の午後、お店へ一緒に参りませんか。これに合うリボンが欲しいです」

「三時からなら」

「では三時に」


 私は姿勢を戻した。

 モーリスが二人分の茶を置いていく。

 昨夜も使った銀器の横に宝石の箱を並べると、ロラン様が少し可笑しそうにそれを見た。


「贈り物は、続けていいんだね」

「もちろんですわ」


 私はパンを一つ取り、夫の皿にも一つ載せた。


「贈り物もあなたも、両方いただきます」

「承知した」


 最初の顔合わせでも聞いた返事だった。

 今度は私も、遠慮せずに笑った。


「明日の分は、朝食のあとで。あなたから」


 欲しかったのは、このくらい贅沢な暮らしだ。


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