ギルド乗っ取り
まず俺のパーティに加わってきたのは、10名の、比較的ブサイクな顔の男たちだった。
パーティ内で冷遇されていたのは、俺だけでは無かった。
理由は様々だが、主にブサイクが原因だと俺は思っている。
俺はそのブサイク軍団を引き連れて街を歩く。
「リーダー、これから討伐に出るんですか?」
「兄貴、拾ってくれて有難うございます」
「なんだか大所帯になっちまいましたね」
男ばかりで暑苦しいが、俺は平気だ。
そして防具屋の前で足を止める。
「野郎ども! この店で好きな装備を買ってこい。金は全部俺が払う。遠慮は禁止だ!」
「うおおおおおっ!」
こうしてムサイ男たちはピカピカの装備で身を固め、見た目だけはSランク冒険者になった。
そして次に、武器屋の前で足を止める。
「野郎ども! いつかドラゴンをブッ倒しに行く!」
「えっ?」
全員の顔色が変わる。当然だ。ドラゴンはSSSランク、国を滅ぼすほどの災厄だ。
「そのつもりで装備を揃えろ!」
「うおおおおおっ!」
こうしてピカピカの男たちは、やたらとゴツイ装備を揃えた冒険者となった。
最後に俺は、道具屋の前で足を止める。
「野郎ども! 全部買い占めろ」
「うおおおおおお……えっ?」
こうして俺は経済を回した。
◆◆◆
一ヶ月が過ぎた。
買って買って買いまくり。
狩って狩って狩りまくり。
使って使って使いまくった。
ただし、女と酒には手を出していない。
そっちは苦手だ。
毎日大量の素材をカウンターに積み上げる。
受付嬢として正式に採用されたエミリーは、笑顔で仕事をしている。
「はい、お兄ちゃん、今日の報酬です!」
ドサッ!
俺は報酬袋を背中に担ぐ。
その金を、毎日使いまくる。
そして毎日モンスターを狩りまくった。
時々ヤバいくらい強い魔獣も現れたが、そういった場合は俺が引き受けた。
それ以外の雑魚は全て仲間に割り当てた。
装備の差は歴然だ。初期メンバーは最高級の武具を身に着けている。
かなりの強敵にも勝てるようになった。
やがてムサイ男たちは、ブサイクながらも自信に溢れた表情になってゆく。
◆◆◆
二ヶ月が過ぎた。
それを羨んだ冒険者が、一人、また一人と仲間に加わってゆく。
男だけではない。見た目に恵まれない女性冒険者も、少しずつ増えていった。
彼女たちもまた、他のパーティで冷遇されてきた者たちだ。
俺は分け隔てなく装備を与え、依頼を割り振った。
「リーダー、私も戦えます!」
「兄貴、女だからって舐めないでくださいよ!」
彼女たちは男に負けじと奮闘した。
そして俺のパーティは、さらに勢いを増していった。
◆◆◆
三ヶ月が過ぎた。
最後には、全ての冒険者が俺の仲間となった。
ギルド唯一のパーティにして、最大人数の軍団。
俺はそのリーダーとなる。
もう誰も俺には逆らわない。そして俺を見下す者も、罵る者もいなくなった。
俺はギルド前にメンバーを集め、全員を見回す。初期メンバーであるほど豪華な装備、そして強く、ブサイクだった。
俺は仲間に向かって声を上げる。
「今や俺はギルドそのものとなった!」
「俺の意志は皆の意志! そしてギルドの意志である!」
「おおーっ!」
冒険者たちの声が響く。
「俺は皆に適正な分配をしてきた。そして今の諸君の懐はどうだ。温かいか!」
「温かい!」
冒険者たちはうなづいている。
「見ろ! これが今まで稼いだ俺の報酬だ!」
そして俺は稼いだ報酬袋を見せた。
「どうだ、皆と変わらんだろう……なぜなら、俺も冒険者だからだ!」
「最後の仕上げだ。この中で一人、莫大な報酬を得た人物」
「ギルドマスターを追放せよ!」
「おおーーーっ!」
冒険者達はギルドへとなだれ込む。
「なっ何だお前達、何をするっ!」
ギルドマスターの慌てる声が聞こえてくる。
俺はそのまま動かずに待つ。
ギルドの外へとつまみ出されたギルドマスター、バルドスを見下ろす。
「何をする! 私を誰だと思っている!」
そしてバルドスは俺に顔を向ける。
「きっ、貴様! 裏切ったのか!」
「ギルドは頂いた。バルドス、お前を追放する」
バルドスは歯を食いしばり、俺を睨みつける。
「お前はもう終わりだ。後悔させてやる!」
そう捨て台詞を残して、バルドスは去っていった。
奴の言う通り、これで終わりではない。バルドスは貴族だ。
それはつまり、俺は権力者を敵に回したことになる。
だが俺は負けるつもりは無い。
たとえ何が向かってこようとも。
向かってくるものは、全て頂く。その行く末に何が待っているのか。
それは俺にもわからない。だが、とても楽しそうに思えた。




