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57.拒絶の夜

翌日、陽咲は両親に呼び出され、リビングのテーブルに座らされていた。

窓の外はまだ昼なのに、部屋の空気は夜のように重かった。


「……翔汰くんとは、もう会わないでほしい。」

父の口から放たれた言葉は、鋭い刃物のように胸を切り裂いた。

「どうして……ですか。」

声が震える。

母は目を伏せたまま、かすかに言った。

「あなたの体のことを考えてるの。

 これ以上、負担になることは避けてほしいのよ。」


――負担。

その一言が陽咲の心を深く抉った。

「私は……負担なんかじゃない!」

思わず声が大きくなった。両親が驚いたように顔を上げる。

「翔汰くんと一緒にいるときが、一番私らしくいられるの。

 なのに、なんで会うななんて言うの!」

父は顔をしかめ、机を叩いた。

「まだ子どもなんだよ、お前は!

 将来のことを真剣に考えているとは思えない!」

怒声がリビングを震わせる。

その瞬間、玄関の扉が開き、翔汰が飛び込んできた。

「陽咲!」

陽咲の顔を見た翔汰は、迷わず両親に向かって頭を下げた。

「俺は、本気です。

 陽咲さんを支えて、一緒に未来を作りたい。

 だから――どうか、認めてください。」

必死の声だった。

だが、父は冷たい視線で彼を突き放す。

「君にそんな覚悟があるわけない。

 責任を負うことがどういうことか、分かっていない。」

母もまた、涙を浮かべながら首を振った。

「お願い……もう、やめて。」


沈黙が続いた。

その沈黙の中で、陽咲の心は凍りつきそうになった――けれど、その手を翔汰がしっかり握った。

「行こう、陽咲。」

彼の声は震えていなかった。

「ここで何を言っても、きっと届かない。

 だったら……俺たちで証明するしかない。」


陽咲は一瞬、呼吸を忘れた。

けれど次の瞬間、強く頷いた。

「……うん。私も一緒に行く。」

両親の制止の声が背後で響いた。

でも、もう振り返らなかった。


玄関を飛び出すと、夜風が二人を包んだ。

重く閉ざされた家を背にして、翔汰と陽咲は走り出す。

――それは「駆け落ち」なんて軽い言葉では言い表せない。

これは、二人が選んだ「生き方」そのものだった。

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