43.偶然の再会
リハビリ帰りの夕暮れ。
私は少し遠回りをして、人気の少ない並木道を歩いていた。
人混みを避けたい気持ちと、歩くことで考えを整理したい気持ちが入り混じっていたから。
――翔汰といると安心する。
でも同時に、不安も大きくなる。
彼の未来を壊してしまうのではないか。
私の存在が、彼の夢の重荷になっているのではないか。
そんな思いを振り切るように、スマホを取り出して画面を見つめた。
だけど、翔汰に「会いたい」とメッセージを打つことはできなかった。
「……弱いな、私。」
誰にも聞こえない声が風に消える。
同じ時間、翔汰もまた、バイト帰りに偶然その道を通っていた。
胸の奥には、あの日から続く答えの出ない葛藤が残っている。
夢を追いかけたい自分。
けれど、陽咲を支えたい気持ちも嘘じゃない。
――どちらを選んでも、きっと後悔する。
そんな考えが、彼をさらに立ち止まらせていた。
「はぁ……」
ため息混じりに顔を上げた時だった。
前方で立ち止まる人影。
街灯の光に照らされて、肩までの髪がゆるやかに揺れていた。
「……陽咲?」
思わず声が漏れた。
振り返った私の視線が、彼の視線とぶつかる。
胸が跳ねる。
「……翔汰」
自然に声が出てしまった。逃げようかと思った。
けれど、足は動かなかった。
むしろ心の奥で「この瞬間を待っていた」と感じていた。
沈黙が流れる。互いに何を言えばいいのか分からない。
「……偶然だな。」
翔汰が先に口を開いた。
「……うん。私も、ちょっと散歩してただけ。」
ぎこちない会話。
それでも、不思議と心が揺れた。
――逃げられない。
この再会は、きっと何かを変える。
そんな予感がした。
「なぁ。」
翔汰が、ためらいがちに言葉を続ける。
「俺たち、最近……ちょっと、すれ違ってるよな。」
その一言に、胸の奥が痛む。
けれど同時に、安堵のような感情もこみ上げてきた。
彼も同じことを感じていたのだ。
「……そうだね。」
小さくうなずく。
その声は震えていたけれど、確かに本音だった。
街灯の下で偶然の再会は、二人にとって“本音に触れるきっかけ”となった。
次にどんな言葉を交わすかで、きっと関係は大きく変わる。
その予感だけが、胸を強く打っていた。




