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20.空洞の日々

陽咲の部屋の窓から差し込む光は、やけに冷たく感じられた。

いつものはずのベッド、いつものはずの机。

それなのに、昨日まで当たり前のようにあった温もりが、すっぽりと抜け落ちている。


携帯の画面には、翔汰からの新しい通知はなかった。

――いや、それは当然だ。

昨日、自分の口から「別れよう」と言ったのだから。

陽咲は枕に顔を押しつけて、声にならない嗚咽を漏らした。

「これでいいんだ……これでいいんだよ……」

何度も呟くが、そのたびに胸はえぐられるように痛む。


リハビリに向かう足取りも重い。

理学療法士の先生に励まされても、どこか上の空。

「今日も頑張りましょう。」

「……はい。」

返事はできる。けれど、心は動かない。

まるで、自分の中にぽっかりと空洞ができてしまったみたいだった。


一方その頃、翔汰もまた同じ空虚を抱えていた。

教室の窓際で、彼はノートを開いたままペンを止めていた。

黒板の文字は目に入っているはずなのに、何も頭に残らない。

「……なあ、聞いてる?」

クラスメイトに声をかけられても、反応が遅れる。

「あ、ああ……悪い。」

彼のノートの片隅には、知らず知らずのうちに書き殴られた文字があった。

――陽咲。

それを慌てて塗りつぶし、深いため息をついた。


放課後、いつもの帰り道。

ふと立ち止まる。そこは、よく二人で待ち合わせた場所だった。

横に並んで歩き、笑い合った記憶が胸に刺さる。

翔汰は拳をぎゅっと握り締めた。

「……なんでだよ。」

陽咲が自分を想って別れを選んだことくらい分かっている。

それでも――納得できるはずがなかった。


その夜、別々の場所で同じ空を見上げる二人がいた。

陽咲は窓辺で、翔汰の名前を呼びそうになる唇を必死に噛みしめた。

翔汰はベッドの上で、スマホを手にしたまま、送れないメッセージをただ見つめていた。

――会いたい。

――声が聞きたい。

けれど、その一歩が踏み出せない。

互いの心にぽっかりと空いた空洞は、日ごとに大きくなっていった。

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