売り組織をぶっ壊せ!【5】
榎が逃げるように出て行ったドアをローズが見つめる。
3発聞こえた銃声。榎はもう殺られた、と信じ込んでいる風を装って、ローズに扮した篠原はドアを見つめていた視線を鉄の床に落とした。
「ローズ。こちらに来なさい」
さほど広くもない部屋。入り口の二重ドア、
それに重ねて窓がないので圧迫感がすごい。
そんな中でボスとふたりきりになったローズは息が詰まりそうだった。
つまづきながらボスの机に再び近づく。
座ったままでローズを見上げたボスは満足そうに頷いた。
「眉根を寄せた顔も美しい。
早速サイトに載せるとするか。
あいつらが戻って来たら写真を撮らせて、」
「あの、」
瞬きを繰り返しながらローズがボスの目を見る。
こうしてみてもボスは普通にその辺りで働いている男にしか見えなかった。
【ボスに関するデータと金銭の出納のデータがまだ見つからないから、聞き出せそうなら聞き出して】
ローズに扮した篠原の耳の奥で鏑木の声が聞こえる。
それに頷くこともできないローズは目を閉じた。
「なんだ」
「俺、なにを。されるんですか?」
美しいローズにボスはご機嫌なのか、うんうんと微笑みながら頷いた。
「何も聞かされてないのか?」
「はい。榎さんに儲かる仕事があるからと」
「ははは。榎のヤツ、筧以外には鬼だな」
ボスがご機嫌なのがローズに扮した篠原にもわかった。
しかしここで調子に乗ると機嫌を損ねるかもしれない。
篠原はあくまでも自分はローズだ、とあらためて自分に言い聞かせた。
「鬼…」
「うちはゲイ専門のサイトをやってる。
お前を買いたいという客に売るんだよ」
「売る?俺、売られるんですか?」
怯えているローズが心配になったのか、ボスが椅子から立ち上がり、ローズを連れて部屋の隅に置いてある長椅子に座らせて自分もその隣に座った。
ローズのガタガタと震えている肩をボスが抱く。
その手が恐ろしいほど冷たいことに、ローズに扮した篠原の背中にイヤな汗が流れた。
「売るといっても時間でな。
その時間内で客の相手をしてくれればいいだけだ」
「俺、実は、金に困ってて」
「だろうな。榎の話にホイホイとついて来たんだからそれはわかってる。
ローズ。お前には3割だ。
3時間働いてくれたら3万。悪い話じゃないだろ?」
3時間で3万。
ローズの取り分が3割ということは客は3時間で10万ほど払うのだ。
それはローズの場合に限ったことなのかもしれない。
商品によって値段は変わるものだからだ。
なんとか売りのサイトをしていることと利用金額のことはボスから聞き出せた。
後はボス自身の情報だ。
警察に突っ込ませる予定なのでそこまで無理しても聞き出さなくてもいいが、警察に提供する情報は多ければ多いほど良いのだ。
「男とヤったことないんですけど、俺にもできますか?」
仕事に乗り気な姿勢を見せたローズにボスは満足そうだ。
さっきよりももっと機嫌が良くなっている。
それを証拠にローズの肩に置いていた手を腕に滑らせてボスはローズを抱き寄せた。
「それは大丈夫。心配いらない」
少し安心したローズの表情をボスは見逃さなかった。
腕に置いた手で優しく撫でるとローズの力が抜けたのがわかる。
ローズに微笑みながらボスは反対の手でシャツのボタンをひとつずつ外していった。
「あ、これ」
数個ある隠しファイルは榎の知っているパスワードで開いたが、パスワードで開かないものがあった。
それを見つけた藤井が隣でパソコンからデータを消去している榎をコピーした筧の肩をバンバン!と叩いた。
「このパスワードしか聞いてないよな」
榎から聞いているパスワードでは開かないファイル。
適当に入れてみるも、もちろん開かない。
おそらくボスに関するものなのだがボスのことを何も知らないふたりはお手上げだった。
「ヤバいな。
捕まったとしてもこれが開かないと苦しいぞ。
篠原の聞き取りを裏付けたいのに」
榎をコピーした筧が唇を噛む。
藤井が横で腕組みをしてため息をついた。
「ねえ、大智くん。なんかわかりそう?」
今回事務所でいつも筧がやっている指令を担当している鏑木がうーん、と言って黙ってしまった。
ボスの部屋を出てからそろそろ30分は経つだろう。
用心棒の二人は30分そこらで目を覚ますことはないが、ひとり置いてきたローズのためにも早く警察に通報したいところだ。
【あの、違うかもしれないけど、】
藤井と榎をコピーしている筧の耳の奥で、島山代行事務所に鏑木とともにいる榎の声がする。
たのむ、と筧が小さな声で返すと榎は言いにくそうにした。
「なんでもいいから。頼む。早く」
【わ、わかった。知らないから推測だよ?】
そう前置きした榎が告げたパスワードに隣にいた鏑木が目を見開く。
現場にいる藤井と筧も同じような顔をした。
ボタンを外し、はだけさせたところからボスの手が滑りこんで、指先で舐め回すようにローズの白い肌に触れた。
「力抜け」
「あ、あの、」
「俺が慣れさせてやる。
怖くないとわかればいくらでも客の相手ができる」
初めてだ、とローズが言ったことによりボスはさらに機嫌が良くなった。
しかも怖くないように、と理由をつけてこれからボスとローズは寝るようだ。
わざわざ榎に用心棒の二人を外へ連れ出してもらわなくても二人きりになれたのか、とローズをコピーしている篠原は割と冷静に考えていた。
「さ、さっきから言ってた、」
「ん?」
「筧さんって人にも、こんなことしたんですか?」
今の今までローズの体を弄っていたボスの指がピタ、と止まる。
大きくひとつ息をしたボスが、ローズの胸あたりで止まっていた手でグッとローズの首を掴んだ。
「そんなこと聞いてどうする」
「う…」
絞められるまではいっていないのかもしれない。
しかしかなりの苦しさがローズを襲っている。
絞り出さないと声も出ない。
細くされた気道でローズは一生懸命小さな呼吸をした。
ローズに扮している篠原は、ボスに会ってから変だな、と思っていたことがずっと頭の片隅にあった。
数年前に逃げた筧をボスは執拗に追いかけている。
榎が筧に惚れていることを知りながら、榎を殺してまで筧を手に入れたいと考えている。
本当に筧が商品として売れるからなのだろうか。
それとも小太りの男とタトゥーの男が言っていたように筧を自分のものにするためなのだろうか。
篠原が、筧と寝たのか、という質問をしたのはその疑問から出た言葉だったのだ。
「筧さん、を、ホントに、商品、と、して」
「黙れ」
さっきよりもボスがローズの首を掴んでいる指に力を込める。
目の前が白くなってきたローズはさっきよりも
一生懸命呼吸をした。
「ボスは…筧さん、の、こと、が」
「うるさいっ!!」
あ、と大きくローズに扮した篠原の口が開く。
真っ白になりそうな視界でボスが怒っているというより、悔しそうな顔をしているのがローズには見えた。
悔しい…。筧を逃したことではない。
筧も榎に惚れていることを知ったからボスは悔しがっているのだ。
遠のく意識の中、そう考えていたローズの心はなぜか島山の笑顔を浮かべていた。
「ああそうだよ」
「…」
目をだんだんと閉じていくローズにボスがニヤリと笑う。
ローズの真っ白な肌がピンクに染まり、そして紫色へと変わっていった。
「お前なにもんだ?まあいい。
死んでいくものがなにものでもどうでもいいことだ。
お前の言う通りだローズ。
俺は最初から筧を商品として出すつもりなどなかった」
ひとめ惚れだった。
今まで恋などしたことのないボスの凍りついた心を筧は一瞬で溶かした。
育ちの良さそうな雰囲気、笑うと三日月のようになる筧の目が可愛かった。
今のローズとのように二人きりになって話をした時、売りをしている組織だと筧には言わなかった。
筧に売りをさせるつもりがないことを、自分でも気づいていなかったがボスの中にあったのだろう。
“なんの仕事をしたらいいんですか?”
微笑みながら聞いてきた筧に何も答えられなかったボスは、また明日に詳しく話すからここへ来て欲しいと伝えた。
わかりました、とニコッと笑った筧を見てボスは初めて冷えていた胸の奥が温かくなった。
次の日に筧が来たら自分のそばにいて欲しいと伝えよう。
がらにもなくボスは筧を見送ったひとりの部屋で、初めて経験する愛しさに胸を焦がしたのだ。
それなのに…ここが売りを専門とするサイトを出して稼いでいる、と誰かが榎と筧の耳に入れた。
それを聞いた榎はすぐさま筧を逃した。
逃げられたと言って、榎は探しているフリをしていたがボスにはわかっていた。
筧は稼ぎのない榎を助けるために一緒に働こうとしてここへ来たのだ。
そして筧が客を取らされると知った榎は自分の命を賭けて筧を逃した。
二人の関係性がボスに突き刺さる。
切っても切れない榎と筧の絆を見てしまったボスは、ただただ悔しかった。
「俺のところにいたら…一生楽できて幸せに生きられるのに、あんなくだらない榎のような男を筧は選んだ」
遠くなる意識の中でローズに扮した篠原はボスの言ったその言葉に反発していた。
まだ知り合って間もないが榎が筧のことを考えて一生懸命行動しているのは篠原にもわかる。
くだらない男などではない。
それにくだらなかったら筧が惚れるわけがない。
そうボスに言ってやりたかったが、もう声は出なかった。
「心配するなローズ。榎はもうあいつらに殺られた。
あとは筧を見つけ出すだけだ。
お前は榎と筧の仲間なんだろ?筧は行かせてやれないからお前があの世で榎と二人仲良くやっといてくれ」
完全に紫色になったローズの肌。
美しい、とボスの口からうっとりとした声が漏れた。
掴んでいたローズの首にボスがグッと指を食い込ませる。
はあ、と途切れ途切れの息を吐いたローズは次の空気を吸うことをしなかった。
目を閉じた真っ暗な世界。
ローズに扮した篠原の暗闇ではずっと島山が笑っている。
それに篠原も微笑み返した。
ダン!と素早い音がして、ローズの首を掴んでいたボスが体ごと机の方に吹っ飛ぶ。
革靴の硬い踵が命中した前腕を押さえたボスは、あまりの痛さに床でモゾモゾと動いていた。
「うぅ、お前、だ、誰、」
「おい、ローズ。起きろ」
力の抜けたローズの肩を持って揺さぶってるのは慣れない革のブーツを履いた島山だった。
「やべえな。もうちょい早く蹴っときゃ良かった。
タイミングってむずいなぁ。
おい。大丈夫か?ローズ?息できるか?」
ローズに扮した篠原を揺さぶりながら、島山が床にうずくまっているボスを見ると起き上がる気配はない。
ボスがそんな状態でなくても、先にローズをなんとかしないと本当にこのまま生き絶えてしまう可能性もある。
名前を呼びながら島山がローズの胸に頬をつけると、心臓はしっかりと動いている。
ひとまず安心した島山が長椅子にぐにゃり、と倒れたローズを抱き上げた。
「ローズ、イヤだろうけど我慢しろよ」
目を閉じて返事もしないローズの口に島山が口付けて息を吹き込むと、はだけでいたローズの胸が膨らむ。
島山が送り込んだ空気を吐いたローズはすぐに自発的に呼吸をし始めた。
ゆっくりと息をし始めたローズを島山がソファに寝かせる。
汗で冷えてしまったローズの髪を撫でた。
「よくがんばったな。あとは任せとけ」
びくりともしないローズの長いまつ毛に島山はキスをして、まだ床で腕を押さえているボスの方へ歩いて行った、
【筧の名前じゃないかな】
「いやなんで?」
さっきまではわからないけど、と言っていた榎が、なぜか自信ありそうにそう言う。
榎の声が、榎をコピーしている筧とウォッチの藤井の耳の奥で響く。
ボスしか開けられない隠しファイルのパスワードが筧の名前など信じられなかった。
【ボスは筧を商品として出す気がなかったと思う】
「…」
【筧を自分のものにしたかったんだ】
たかだか一度会っただけなのに。
しかし数年経った今もまだ探しているということは、榎の言う通りなのか。
榎の言葉に、榎をコピーした筧は持っていたマウスを握りしめた。
「たとえ捕まったってあいつのもんになるわけないのにな」
【筧…】
「なあ榎。そうだよな?
好きでもないヤツのもんになるなんか死んでもごめんだわ」
榎は何も言わない。筧の想いが身に沁みているのか。
そう言いながら筧はキーボードに指を置いて画面をにらみつけた。
“osukekakei”
自分の名前を打ち込んだ筧がエンターキーに人差し指を置く。
隣にいた藤井と視線を交わしてから、筧は人差し指でキーを押した。
「開いた」
藤井の声に事務所にいた鏑木と榎が頷き合う。
その時ボスがローズを追い詰めている声が鏑木と榎のイヤホンから聞こえてきた。
【急いで。篠が危ない。咲がいるから大丈夫だと思うけど、とりあえず急いで中身をチェックしてパスワード設定を解除して】
「わかった」
これさえ開けることができたら警察を呼べる。
急いでマウスを操作している筧と藤井が画面に顔を近づけて、ボスの隠しファイルの中身をチェックする。
思った通り金銭の出納や、サイトに関する管理データが出て来た。
「よし。これだけあれば警察も動ける。
大智、通報してくれ」
【オッケ】
パスワードを解除した隠しファイルを、もう誰にでも開けることができるように設定する。
商品となった人たちの名前や、ボスの手下たちの名前は全て削除した。
これで全責任をボスひとりが負うことになる。
みんなボスと用心棒が怖くて脅されていたようなものだ。
出納帳からは、そこまで金が稼げていたわけでもないことがわかった。
あとは警察が来るまでボスを逃さないようにすることで島山代行事務所の仕事は終わる。
今部屋にいる島山にあとは任せておけば大丈夫だ。
【よし。通報した。哉太と筧はすぐそこから出て。
そうだな、第4倉庫辺りで車で待機してて】
「篠くん大丈夫かな?気絶してるんだろ?」
【咲がいるから大丈夫】
鏑木の指示で藤井と榎をコピーしていた筧は、パソコンを残して倉庫を後にする。
入り口のドアを閉める前に、ここからは見えないが一番奥にある鉄製の階段を二人は見つめた。
島山が近づくとボスは腕を押さえてゆらりと立ち上がる。
肩で息をしているところを見ると、まだ島山に蹴られた腕が痛むのだろう。
ボスのこめかみには汗も滲んでいた。
「お前…どこから入ってきた」
榎たちが出て行った鉄製のドアは閉まると施錠される。
用心棒の二人は鍵を持っているが、まだ帰ってきていない。
「さあ、どこでしょう?」
「お前ら、榎の仲間か」
「榎さん?ああ、さっきの人ね。
あの人は関係ないよ。俺はあんたの悪事を暴きに来ただけ」
「筧を…隠してるのもお前らだな」
「人の話聞かないねぇ。てかさ、俺の方が質問したいんだけど。質問、いや…忠告かな」
バッ!と殴りかかってきたボスの拳を島山が避ける。
バランスを崩したボスの背中を島山が蹴った。
「うおっ!」
「革のブーツ履いてんの忘れてた。
痛えよなあ。悪ぃ悪ぃ」
島山に背中を思い切り蹴られたボスが前にあった鉄製の壁で体を打ち、呻き声をあげてそのままずるずる、としゃがみ込んだ。
「好きな人をそばに置いときたいならさ、好きになってもらわないと、だよな?」
「貴様、何が言いたい」
しゃがんでいるボスが体を後ろの島山の方へ向ける。
怒りと悔しさでボスの表情はひどく歪んでいた。
「ひとめ惚れする気持ちはめちゃめちゃわかるよ。
でも肝心なのはそっからじゃね?
惚れた相手に好きになってもらえるように自分を磨いたり、もっといい男になってやる!って意気込んだり。
閉じ込めたところでさ、好きな人の心が手に入んないと虚しいだけだぜ?」
「うるさい…」
島山はボスから見えない角度でまだ目を覚さない篠原を守るように立っている。
普通に話しているように見えるが、島山は最大限に気を張っていた。
「まともな仕事してさ、一生懸命働いてるとこを見てもらって。
今のあんたには好かれる要素ないだろ。
金に寄ってくるヤツはろくでもないヤツばかりだって、」
「うるさいっ!黙れっ!」
しゃがんでいたボスがバッ!と立ち上がる。
どこから出したのか手には拳銃が握られていた。
そして腕を上げたと同時に島山に向かって発砲した。
「危ないっ!」
パンパン!と乾いた音が鉄で囲まれた部屋の中で大きく響く。
銃口から昇った煙の向こう、叫んだ篠原が島山に覆い被さって二人で床に倒れた。
「まだ生きてたのかローズ。
なんだお前、その男を守るなんて粋な真似するじゃねえか。
ちょうどいい。惚れたもん同士、二人揃ってあの世へ行かせてやろう」
重なったふたりに向かってボスが拳銃を構える。
トリガーに指をかけた瞬間、ブン!と空を切るような音がしてボスの手から拳銃が放れ、くるくると空を舞った。
「うっ!!」
飛んできたのは島山の履いていた革製の硬く重いブーツ。
ボスの手の甲に命中したそのブーツは突き刺さるようにドン、と床に落ちる。
先に床に落ちていた拳銃に、後から落ちてきたブーツが当たって床をすべり、ボスから離れた壁にぶち当たって動きを止めた。
「おい。よく聞けこのクソが。
惚れたもん同士は生きるんだよ。
これから楽しいことがいっぱい待ってんだぜ?
死んでたまるかっ!」
島山が蹴るように足を前にビュン!と素早く出すともう片方のブーツがボスめがけて飛んでいく。
それは見事にボスの横面に当たり、ボスは顔を押さえてまた床に座り込んだ。
【咲。警察がもう倉庫の近くまで来てる。
篠を連れて出て】
鏑木の声に島山が唇を噛み締める。
自分にしがみついている篠原の顔を島山が上げさせると篠原が目を開いた。
「大丈夫か」
「…咲は?」
「俺は大丈夫。お前が守ってくれたからな」
ボスの撃った弾が外れていることはわかっていたが、万が一篠原にかすっているかもしれないと島山は思っていた。
しかし割としっかりしている篠原を見て島山は大丈夫だと確信し、安心した。
「帰るぞ」
うん、と頷いてニコッと笑った篠原に、島山の胸は熱くなる。
篠原を抱きかかえて、ボスの向こう側にある外階段へ通ずるドアを島山は開けた。
「きっちり、罪を償え」
もう立ち上がれないボスは下を向いたままだった。
冷たく硬い鉄で囲まれた部屋はまるでボスの心のようだ。
そして恋の仕方も知らないボスはこの閉ざされた部屋に筧が来てくれることを待つことしかできなかった。
「虚しいねえ」
外階段の上から警察が一階の入り口から倉庫に突入していくのが見える。
アリの行列みたいな黒い影が途切れてから、島山はまた意識を失った篠原を抱いて階段を降りて行った。




