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1-3

 打ち上げから日が過ぎて、翌週の木曜日。午後のロングホームルーム。


「はーい! それじゃあ、文化祭の出し物を決めたいと思いまーす!」


 教卓の隣に立ったクラス委員の悠子が、クラス内を見回す。

 すると、クラスの後方で大輔がスクッと立ち上がる。


「うぉおおおおっ! やったらぁああああっ!」


 そして、大音量で雄叫びを上げた。中間テストで全教科辛くも赤点を回避した喜びを爆発させてしまったらしい。

 なお、すぐに「大輔、うるさい!」と悠子にチョークを投げられて黙らされた。

 後ろから二列目にいる大輔の眉間へ的確なスローイング。クラスメイト全員が「お~」と拍手だ。悠子はダーツの天才なのではないか、と思う丈瑠だった。


「というわけで、気を取り直して文化祭の出し物です! 何かやりたいものがある人は挙手して!」


 悠子が話を戻すと、ちらほらと手が上がる。


「お化け屋敷」


「メイド喫茶!」


「占いの館」


「和装喫茶!」


「演劇」


「もう何でもいいからコスプレ喫茶!」


 挙がってくる出し物候補は、文化祭で人気の高いものが多い。やはり定番は強いということだろう。なんだかやたらとコスプレ系喫茶店を激推しする声があるが、まあそこはご愛敬ということで。


「ふむふむ、なるほどね~。他にはなんかない?」


 一通り意見を聞いたところで、悠子がもう一度クラスを見回す。とりあえず出したいものは出し尽くしたのか、さらに手が上がることはなかった。


「それじゃあ、最後に私からも一つ追加で。私は『縁日の屋台盛り合わせ』がやりたいでーす」


 それを見て取った悠子が、自ら手を上げて候補を追加する。

 先週、カラオケに行った際に案は考えてあると言っていたが、それはどうやらこの『縁日の屋台盛り合わせ』のことだったらしい。

 ただ、これって一体……。


「悠子、しつもーん。『縁日の屋台盛り合わせ』って、具体的に何やるの?」


 丈瑠と同じことを思ったらしいクラスの女子が、手を上げて悠子に質問する。

 丈瑠自身は文化祭の出し物として聞いたことがないものだったし、悠子がどんなことをするつもりなのか、具体的なイメージが浮かばなかった。


「うーん、何ていうか、クラスの中にいくつか屋台を作って、お祭りの縁日みたいなことをやる感じ? たこ焼き屋とか綿あめ屋とか、後はゲーム系で射的屋とかもいいかも。一粒で何度もおいしい的な感じにできたらいいかなって思ってる」


 女子からの質問を受け、悠子がアイデアの内容を端的に説明する。

 要するに、この教室の中でさらにお祭りをやってしまおうという感じか。


「ふーん、なんかいいんじゃね?」


「うん。“ザ・お祭り”っていうかね」


「夏祭りの出店とか、めっちゃワクワクするしな」


 悠子のアイデアを聞いたクラス内からも、好意的な声が聞こえてくる。

 アイデアの内容が面白いというのもあるが、それを挙げたのが悠子であるというのも、この盛り上がりの一因だろう。悠子には、『これは絶対おもしろい!』と思わせてしまうカリスマがあるのだ。


「それじゃあ、候補も出そろったことだし、決を採ります。みんな、自分がやりたい出し物に手を挙げてね」


 賑やかなクラス内でもよく通る悠子の声が響き渡る。

 まあ、ここまでの流れを見る限り、結果は火を見るより明らかだろう。


「――はーい! それじゃあ二年三組の出し物は、『縁日の屋台盛り合わせ』に決まりました! みんな、全力で盛り上げていこう!」


「おーっ!」


  決を採り始めて三分後。厳正なる多数決の結果、やはりと言うべきか、圧倒的得票数で悠子の案が選ばれた。

 もちろん、丈瑠たちも悠子の案に手を挙げた。だって、一番楽しそうだから。


「よっしゃぁああああっ! やったらぁああああっ!」


 そして、再び雄叫びを上げた大輔が、再び悠子のチョークによって成敗されたのであった。ちなみに今回は、白、赤、青、黄色の四色乱れ打ちだった。床に倒れ伏す大輔を見下ろした丈瑠は、今度みんなでダーツやりに行きたいなと思った。


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