第零ー下章
「……姫様、お気をつけください」
「ええ」
……最近はこういうのが多いですね。
わたしは私になって体に力を込めた。
矢を見切って避ける。
そうすると、矢が傍にある壁に突き刺ささった。
「あらまあ、危険なこと」
わたしは矢を見ながら言った。
レイリーが嬉しそうに微笑んだ。
「さすがです、姫様。わたくしが止める必要もありまさんね」
「ふふっ、そうね。ゆっくりでしたから」
傍にある建物の近くで黒いものが動いた。
「恐ろしいですねぇ。レイリー、処罰願えますか?」
「もちろんです姫様」
そう言って、レイリーはパッと姿を消す。傍で驚愕と恐怖の混じった悲鳴が聞こえた。
「姫様に矢を向けるとは、一体どういうおつもりか」
「そ、それは……。な、何のことでしょう」
男は笑ってその場を離れようとする。
……これも、貴族の習性でしょうか。
私は、微笑ってゆっくりと歩いた。
「レイリー、やはり何でもないわ」
「そうでございますか。分かりました。貴様、もう行って良いぞ」
「し、失礼なっ!!」
「あら。貴方は何を言っているのですか?」
剣を抜く。これは相手には見えていない。
スっと動いてから、剣のみを男の首筋に当てた。少しだけ、首から血をたらせてやる。
「大丈夫ですか? 血が、出ていますけれど……」
「はっ……はっ……」
男は息を荒くすると、顔を真っ青にして恐怖の満ちた目でわたしを見る。
「ふふっ、城で手当てをして差し上げましょう。貴方がその姿で主様の元に帰ったら、大変、ですものね?」
わたしが。
「レイリー、連れて差し上げて」
「はい、仰せのままに」
男はまだ、恐怖の目でわたしを見ていた。
今回は少なめです。だいぶ。