従兄妹同士は結婚できない
「わたし、おおきくなったらとしくんとけっこんするの」
俺に向かってトテトテと走り、両手を広げると俺に抱き着き、ギューッと抱きしめる美和。
「ぼくもおおきくなったらみわちゃんとけっこんするー!」
そう言った後、抱きついている美和の事を抱きしめる。
端から見れば仲の良い小さな子供が抱き合ってる心が和む光景だ。
そこにうちの母から衝撃的な言葉が投げかけられる。
「あらあら、二人共ほんとに仲がいいのねぇ。でも従兄妹同士は結婚できないのよ」
本当に従兄妹同士は結婚できないと思っていたのか、仲がよい二人を揶揄うつもりで言ったのか、それとも結婚させたくない一心で言ったのかは不明だが、間違いなくうちの母はそう言った。
その後は二人共大泣きで、親達が俺達をなだめるのに必死だったが、結局祖母の家にいる間は二人共ずっと泣いてたような気がする。
それ以降二人は『好き』や『結婚する』という言葉を言わなくなった。
年に何度か母方の祖母の家に帰省した時に会う女の子。
歳が2つ下の従妹。
赤ちゃんの頃から俺が祖母の家に行くといっつも俺に着いてきてずっと一緒にいた。
言葉が話せるようになるころになると、とても可愛い女の子になっていた。
「としくんだいすき!」
美和の口癖なのかと思うほど何度も何度も聞いた言葉。
もう少し大きくなると言葉だけではなくて抱きついて感情表現をするようになった。どうやら美和の両親が抱き合ってイチャイチャしていたのを見て影響されたようだ。
どんどん可愛くなる美和の事を俺もどんどん好きになった。
次に会ったときには抱き合うだけではなく、唇に自分の唇を押し付けてきた。美和の両親がキスをしていたのを見たらしい。
唇を合わせると多幸感に包まれた。それは美和も同じだったようで、その後何度も唇を合わせる事になる。
小さいながらも何かいけない事をしているような背徳感もあり、お互いの両親に見られないよう、隠れてキスをしていた。
美和には俺と同級生の兄がいるが、一度その美和の兄にキスをしている所を見られ、告げ口をされたが、子供同士のじゃれ合いなので特に何も言われなかった。
もう少し大きくなると『結婚』という言葉を知り、お互いが大きくなったら結婚したいといつも言っていた。
そうしてお互いが大好きで愛を育んできた所に母のあの言葉だ。俺が9歳、美和が7歳のときの事である。
その後、祖母の家で顔を合わせてもお互いが壁を作り、以前のように仲良くする事もなければ、話さえもあまりしなくなった。
たまにしか会えないが、会う度に美和はどんどん可愛く、綺麗になっていった。
俺が中2のときに祖母が亡くなると美和と会う機会もなくなった。
漫画かアニメか忘れたけれど、従兄妹同士が結婚する話を見たので調べてみた所、従兄妹同士は結婚ができるという事を知った。
その日ほど母親を憎んだ事はない。
俺と同じ高校に美和が入学するという話を聞いた。
何度か顔を合わせる事もあったので話しかけたりもしたが、素っ気ない態度だった。
卒業式の日、離れ離れになってしまう好きな相手に愛の告白をする人達も多い。
俺も告白をするために一人の少女を呼び出した。
「知ってた? 従兄妹同士は結婚できないっていうのは嘘で、本当は結婚できるって事」
「嘘…………?」
「嘘じゃない、本当だ」
目に涙を溜めながら俺の胸に向かって飛び込み、抱き着く少女。
「私、大きくなったら俊君と結婚するの」
俺は抱き着いている美和を抱きしめる。
「俺も大きくなったら美和と結婚する」
父親にエスコートされ、バージンロードを歩いてくる美和を見ながら思い出した。
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