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アレクシス4

 僕は森の中へ逃げ込んだあと、持ってきたカゴの中に色んなものを詰め込んだ。木の実に果物、キラキラする石や甘い香りのする花、首飾りにできそうな鳥の羽も。売り物になればラッキー、食べられればラッキー、そんな思いで。


 たぶん、村に帰ったらさっきのおじさんに怒られちゃうだろうな。もしかしたら、もっといっぱい大人が集まっているかも。大人に叩かれたらケガするかも知れないけど、でも悪いのは僕だけだから――母さんに売り物を渡すぐらいは、きっと許してくれるよね?

 父さんが居ないから、少しでも稼いでおかなくちゃあならない。もし僕に何かあったとしても、集めたものまで無駄になると決まった訳じゃあないし。ジェフリーのためにも、まだ売り物は必要だからね。


 ケガをするとしばらくまともに動けないし、ご飯も食べられなくなるだろうな。売り物を探しながら、今のうちに木の実や葉っぱを食べてお腹を膨らませておこうっと。




 売り物でカゴをいっぱいにした僕は、ドキドキしながら村まで戻った。

 大人がたくさん居たらどうしよう、叩かれたらどうしよう。村から追い出されたらいじめられずに済むけど、でも僕1人じゃあ、すぐに死んじゃうよね。


「うーん……」


 パッと上を見たら夕日が出ていて、いつもだったら夕飯のためにお湯を沸かしている頃だった。きっと母さんは帰りが遅いって怒っているんだろうな。それともおじさんから話を聞いて、二度と帰って来るなって思っているかな。


 とぼとぼ森の出入口まで歩くと、村の中心――井戸の近くに、大人の人だかりができていた。やっぱり僕のことで怒っているのかと思ったけれど、大人の中に父さんの姿もあった。もしかしたら魔女が見つかったのかも?


 僕は見つかったら怒られるだろうと思って、コソコソ隠れながら家に帰ることにした。だけど、やっぱり汚れているのと帽子を被っているので目立つのか、人だかりの中心に居た父さんにすぐ気付かれて「おい!」って声を掛けられちゃった。


 一斉に大人たちの目が向けられて、僕は震え上がる。

 すぐに囲まれて叩かれちゃうのかと思ったけれど、不思議なことに皆の表情は穏やかで優しかった。首を傾げる僕のところへ父さんが駆けて来た。今までに向けられたことのない笑顔に、心臓が飛び跳ねる。


 まるでジェフリーを見ている時みたいに優しい顔だ。何だかよく分からないけれど、僕はすごく嬉しくなった。


「――アレクシス、魔女が見つかったぞ」

「……本当に!? すごい、じゃあジェフリーは治るんだね! それで皆嬉しそうなんだ、あ、もっと売り物が要る? 僕もっとたくさん、森で何か採ってくるよ!」

「そんなことはしなくて良い、魔女は秘薬を分けてくれたからな」

「わあ、良かったね!」


 そうか、ジェフリーが治ったから皆こんなに嬉しそうなんだ。だから父さんも優しいんだ。こんなに優しく話しかけられたのは初めてで、僕も嬉しいな。きっと皆ジェフリーのことが嬉しくて、僕とお姉さんのことなんて忘れちゃったんだね。

 父さんはニコニコしたまま続けた。


「アレクシスは、ジェフリーが好きだよな?」

「うん、好きだよ! 弟だからね」

「そうだよな、お前はお兄ちゃんだから当然だ。父さんが留守の間、よくジェフリーを守ったな。これからも弟のために尽くしてくれるか?」

「もっちろん! だって、そうしたら家族皆が嬉しいよね!」


 ジェフリーが元気で幸せだったら、僕がジェフリーのために頑張り続けたら、これからは皆が優しくなるのかな。それってすごく良い。皆が優しくなったら、友達も――ううん、いつか僕のことを本当に好きになってくれる人だって、見つかるかも知れない。


 父さんはにっこり笑って、汚れた僕の肩をぽんと叩いてくれた。


「本当にありがとう、アレクシス……じゃあ弟のために、魔女の()()になってくれるな?」

「――イケニエって?」

「魔女の秘薬の対価、お金みたいなものさ」

「お金……僕が?」


 何を言われているのかよく分からなくて 僕は首を傾げた。父さんの後ろで集まって話していた村の大人が近寄って来て、どこか心配そうな表情で父さんに声を掛ける。

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