4.2
微は教室に入った。何も変わらない喧騒。それに比べ、微は頭痛が酷かった。寝覚めの悪い夢も然りである。昨日のことも思い出される。剛理舞依、能力者の一人、微たちの敵、しかし、彼女には秘密を約束させられた。既に、羅愛は席に着いていた。見もいる。微に気づいて、おはようと言っていた。機械的に挨拶を返す。とりとめのない会話。本の話や、宿題の話、ニュースの話など。デミウルゴスの話題は一切でなかった。昨日の件で舞依の報復を恐れて、話そうとしていないわけではなかった。むしろ、敵愾心と言ったほうが正解に近いだろう。微は舞依との会話で、羅愛と見に対する今の感情に名前をつけた。憎悪だ。人間であって、人間でない存在である羅愛、そして羅愛に異常な関心を寄せる見。どうして、羅愛のように生きている存在がいるのだ。これは恐れ以上の、身体が分裂しそうな激情だった。姉と一体何が違ったのか?姉は死んだのに、羅愛は生きて、のうのうと生活して、それどころかカード集めなんかをしている。遊びをしているかのような茶番に、首を突っ込み、巻き込まれなくてはいけない道理がどこにあるというのだろう。そして、首を突っ込んだ張本人である見。見境のない好奇心、いや、あれは好奇心などではない。妄執だ。もはや狂気に取り憑かれている。人から大切なものをどんどん奪っていったデミウルゴスなどの同類にどうして冷静な分析や情報収拾ができるのだろうか。微には、疑問を通り越して、拒絶、ただそれだけだった。
見と普通に会話をしている。いつも通りに、何食わぬ顔で、平然と………。
微は目の前の机に、突沸した怒りを叩きつけた。部屋から声が途絶えた。
見は突然のことに、目を瞬きさせている。羅愛は頬杖をついて、何も変わらずに窓を向いていた。
「え、どうしたの…………?」
見には一体全体どうして微がこんな行動を取ったのか、見当がつかない。いや、それは確かな表現ではなく、見当がつかないふりをしていたというのが正しいだろう。
微の琴線が触れるどころか、切れた。
「ふざけんじゃねえよ、何で見はあいつとか関わって、平然としてられるんだよ!」
見は視線を逸らした。
「あいつが、同類と思うだけで、もう耐えられないのに、見は、そしてあいつは……」
声が震えてくる。唇を強烈に噛みしめる。爪が平に食い込むぐらいに握りしめた。
微は教室を飛び出した。
残された見。羅愛は相変わらず、外を見ていた。




