未知との遭遇
「永遠に覚めない夢の中にね。」
何を言っているんだ!?
俺の思考はそこで止まってしまった。
今日も一日授業を受け、部活をして、家に帰って、どこにでもあるような高校生活を過ごした俺、奥村亮太は就寝しようとしていた。部活のせいだろうか、いつもより深く眠れそうだななどと思いながらベッドに潜り込み意識はすぐに遠くなって言った。
「うっ」
照りつける太陽光で瞼の裏が白くなり俺は目をさました。
もう朝か早いな…
上体を起こし目を開けようとするが、眩しすぎる。
まるで外にいるみたいだ。
それもそのはず俺は本当に外に居たのだ。
照りつける太陽。白い砂浜。青い海。背中には密林。南国の島を描けと言われたら10人中9人が描きそうな景色がそこにはあった。だが、どこか懐かしい。
頭の理解が追いつかない。
確か、俺は部屋で寝て居たはず。しかし、これはなんだ?全く知らない場所に横たわって居たわけだ。
さらに、俺の他に寝ている奴らが4人もいる。肩まで伸びた艶やかな黒い髪の少女。日に焼けた腕は筋骨隆々という言葉を体現しているかのような青年。対して、色白の小柄な少年。最後に短髪で健康的な少女。多分陸上部だ。
事態は飲み込むことができないが取り敢えず4人を起こしてみる。そして全員がおそらく俺が起きたときにしたであろう行動を繰り返すのを眺めた。
「ちょっと待ってくれ。」
青年が手を額にやりながら喋った。
「一体何が起こっているんだ…」
アグリーである。
「いや、俺も正直全くわからないんだけれども、自己紹介…しないか?」
どうにか状況を打開するために切り出してみる。
「そうだね!僕もそれがいいともうな!」
短髪の少女が言う。
この状況でも笑顔で語る少女を見て、世の中にはすごい奴がいるもんだと感心する。
「じゃあ、まず僕から。名前は、白井早織。18歳です。部活は水泳部です。よろしくねっ」
俺の観察眼もあてにならないものだな。
「次は俺でいいか?まぁよしとしてもらいたいんだが、俺の名前は奥村亮太。俺も17歳。部活はテニスをやってます。よろしくお願いします。」
「俺は飯田和良だ。19歳。高校はとっくに卒業して働いてるよ。建築現場で鍛えってから力仕事は任せろ。」
なるほど、どうりで強そうなわけだ。
「えっと…僕は…志野光って言います。15です。部活は…やってません。」
下を向きながら少年は喋る。
どうやら彼は内気な性格らしい。これには自信がある。
「私は宮島静音って言います。年齢は17歳です。部活動は私もやってません。」
黒髪の少女はそう静かに語った。
「しっかし、一体何なんだよこれ。」
「わかんないねー」
「………」
会話は途切れる。見知らぬ5人が急に集められたら確かにそうなるだろう。
「なぁ、」
息苦しさに負けた俺が声を上げる
「密林でも探索しないか?何かわかるかもしれないし。」
「そうだな。」
「サンセー!」
飯田と白井の同意を得る。
「確かに、今の状況では情報を集めるのは重要ですね。」
宮島も賛成のようだ。
志野に目を向けると必死な表情で頷いていた。
「よし、行くか。」
声をかけて立ち上がろうとする。
すると
「その必要はないよ。」
突然、頭の中に直接響くような声がする。誰の声でもない。知らない声だ。
「誰だ!?」
思わず声を上げる。
「上だよ上。空をみてごらん。」
視線を上にやる。そこには全身が白い毛で覆われた”珍妙”と言う言葉がお似合いのサッカーボールサイズの生き物?が浮かんでいた。
「もう少し様子を見てたかったんだけどね、いきなり森に入ろうとするから焦ったよ〜」
「この状況を説明しろ。」
こいつは何かを知っている。そんな絶対的確信が俺の中に存在していた。何よりも先にこの言葉が口から放たれた。
「あれれ、もっとびっくりしてくれると思ったんだけどなぁ。ふふっまぁいいや。いいよ、教えて上げる。今君達がどうなっているかを。」