私と妹が幸せになる話
私は前世の記憶がある転生者だ。
私が転生したのはとある恋愛小説だ。オーソドックスな古典的な小説で、病弱なヒロインが姉の婚約者の事を好きになり、その婚約者と結婚する事が出来たけど最後は夫に見守られて亡くなると言う悲恋小説だ。
私は妹に婚約者を取られる姉に転生してしまった。
普通なら妹に婚約者を取られない様に色々手を回すだろう。だけど私はそんな事は出来ない。
婚約者の事は嫌いではない。逆に私は婚約者であるライレッド様の事を愛しているのだ。
だけどライレッド様と同じ位に妹であるピーチェの事を愛している。
妹は幼い頃から病弱で、ずっとベッドの住人だった。
五つ年が離れた妹に母親は付きっ切りで看病して、私は寂しい思いを何度も味わった。それでも妹を恨んだ事はないし、仕方のない事だと思っていた。
父は王宮でそこそこ偉い立場にいる人で、私が幼い頃から屋敷に殆ど帰る事はなかった。屋敷の仕事は兄が上手く廻してくれたので特に問題はなかったが、ただ私達がやる事が殆どないので正直偶に私は疎外感を感じる事がないと言えば嘘になる。
どうやら私はやり手の女官だった母親に似て家にいるより、外に出て働く方が好きな様だ。小説の『私』もライゼット様を取られた後は、母と同じ女官として働く様になった。
話が逸れたが、病弱な妹は寝込むだけではなく時に咳き込んだ拍子に吐瀉をする事があった。母やメイドが片付ける事があったけど、偶に私も片付ける事があった。
『もういや……早く死にたい』
年頃の女の子が吐瀉物を吐いてしまうのはとても恥ずかしい筈だ。私の前では泣きながらぐずる妹を見て恨む心などない。
原作通りに仲良くなる二人を見て止める事も出来ず痛む心を堪え、命が短い妹の為にもせめて一秒でも長く二人の時間を過ごして欲しいと思い、私の方から婚約破棄願いを兄を通じてライレッド様の家に伝えて貰った。
伝えた時に兄は渋い顔をしたが、娘の方から婚約破棄を言うのは醜聞だろう。婚約破棄した後は女官になるか最悪修道院に入ると言うと兄には『明日まで待て』と言われた。時間稼ぎのつもりだろうが、出来るだけ早くして欲しいと念を押しに押したので大丈夫だろう。
そして今日が兄が言っていた『明日』。ライレッド様が我が家に来訪した事はメイドを通じて知っているし、私は覚悟を決めて二人がいる執務室に向かう事にした。
……とその前にピーチェに今月分の漢方薬を渡さなきゃ。漢方薬を渡せばピーチェの心も大分落ち着くしないよりマシだろう。
「あら? お母様いらっしゃいましたの?」
「オ、オレア何の用なの?」
ピーチェの部屋に何時もの如く母がいた。ピーチェのベッドの横にある机の引き出しに何か小瓶を仕舞っていた。
「? 新しいお薬が処方されたの?」
「え、ええ。あまりピーチェの体調が良くならないから新しいお薬をブラウ先生から出してもらったの」
「そう。……お母様少し休んだら? 昨晩からずっと看病をしていたんでしょ? 今ピーチェも寝ているから大丈夫よ」
「でも、昨日から熱が出ていたのよ? もし離れた間に肺炎になったら……」
「お母様が休んでいる間はメイド達が見るから。お母様まで倒れたら元も子もないわよ。ほら部屋に戻って」
青白く隈が出来ている母を部屋から出して、母の寝室で寝かしつけた。母が寝たのを確認してから私は覚悟を決めて執務室へと足を進めた。
「申し訳なかった!!!!!!」
扉を開いた瞬間ライレッド様が私に向かって頭を下げていた。
突然の行動に混乱していると呆れ顔で溜息を吐く兄が彼の後ろにいた。
「全く、だからあれ程オレアには事情を話すべきだと言ったんだ。下手に隠すからこんな勘違いを起こすんだ」
「そう簡単に話せる内容じゃないだろ! オレアの傷をなるべく浅く出来る様に俺は必死に考えて……」
「それで嫌われたらざまぁない」
「あの……お兄様どういう事ですか?」
未だに混乱している私に「取り敢えず座りなさい。ライレッドも何時までも頭下げてないでここに座って事情をオレアに話せ」と急かして私とライレッド様をソファに座らせた。
「まず先に此れだけは言わせてくれ。俺はピーチェ嬢の事はただの義妹としか見ていないし、俺はオレアの事を本当に愛している」
真剣な目で情熱的に愛を語るライレッド様。普段の冷静さとは違う姿に目を白黒させるが、ライレッド様の言葉はとても無視できる事ではなかった。
「では……では、どうしてあの子の所にばかりいるのです?」
「それは俺の指示のせいだ」
「お兄様の?」
「……本当ならば父上が在宅の時に全て話す予定だったが。……父上の部署は人が少なくその人間すら忙しさのあまり人が辞めてしまう、そして忙しくなると言う悪循環の状態だ。国王もそれを問題視しているが……待っていたら時間がない」
厳しい顔をする兄と真剣な顔で頷くライレッド様を見て只事ではない事を察した。
「事の発端は私に新人のメイドがとある相談をした事から始まった」
新人のメイドと聞いて一人思い浮かぶメイドがいた。ピーチェと同い年の子で、それ故に使用人の中では一番仲良くなっている可愛らしい子だ。その子が兄に何を相談したのか?
「彼女から『ピーチェ様は錠剤のお薬を服用してらっしゃるのですか』と。一度吐瀉物を吐いた時に錠剤の欠片が残っていた。だが……」
そうだ。あの子は錠剤は飲めないから処方されている薬は全て粉薬の筈だ。私の漢方薬も飲みやすい様にオブラートに包んであるが、錠剤ではない。
「見間違いでは?」
「俺もパープナーから聞かされた時はそう思った。だが……オレア、可笑しいと思わないか?」
「何がですが?」
「ピーチェ嬢が体調を崩す時は母親である夫人が看病している時だ」
……そうだ。私や他の使用人達が看病している時は元気そうだったのに、お母様が看病した時に吐いたり熱を出したり、苦しそうに咳き込んでいた。
何故気付かなかったの? お母様の時に病気が悪化すれば誰かが疑問に思うはずだ。……理由は分かっている。この屋敷で一番あの子を熱心に看病しているのがお母様だ。そんな人が娘の体調を悪くする様な事を考えない筈だ。
「よくよく観察したりピーチェ嬢と話をしてみれば、何時も服用している薬の他に錠剤を一つ夫人から飲まされている事が分かった」
……だからライレッド様はピーチェと一緒にいる事が多かったのね。いや、今なんて言った? 錠剤をお母様が飲ませている? ……そう言えばさっき。
「あの……此処に来る前にピーチェの部屋に行った時にお母様が、ピーチェのベッドの横に置いてある机の引き出しに何か小瓶を入れたのを見ました」
「「本当か!!??」」
グイっと顔を近づけるライレッド様達。そして互いの顔を見合わせて頷く。
「オレア。実は今まで隠していたが、今日中にピーチェを隣町の療養施設に入院させるつもりだ。ピーチェもこの事を了承している」
「えっ!?」
「提案したのはブラウ先生だ」
「ブラウ先生が?!」
ブラウ先生はこの家の主治医で普段は領地にある医院にいる。ピーチェの薬も彼から処方して貰っている。老人ながらも真剣に患者に向き合ってくれるので評判の良い先生だ。イメージ的にサンタクロースと言えば分かるだろう。
「先生は前からピーチェを病院に入れるべきだと勧めていたが母上が反対してなぁ……先生に錠剤の事を質問したが『処方していない』と言われてから、本格的に二人を離すべきだと三人で決めた。本当ならお前や父上にも相談すべきだろうが、父上は仕事で屋敷にはいないし、お前は母上に隠し事など出来ない性格だからな」
ぐうの音も出ない。確かに前世から私は顔に出るから隠し事が出来ない性分だ。だから兄達が私に今まで隠し事をしていたのにも納得するが……
「兎も角今母上が休んでいる間にピーチェを運ぶぞ。母上に気付かれて暴れられたりしたら堪ったもんじゃない。それに引き出しに隠されている錠剤も気になる。ブラウ先生が来てから連れていく予定だが、変更だ」
兄がパンパンと手を叩くと何処からか使用人達が現れた。
「お前達昨日言った通りに迅速かつ静かに任務をこなせ」
「「はっ!!」」
兄の一言で一斉に動き出す使用人達。
オロオロするしか出来ない私にライレッド様は優しく肩を抱いてくれた。
「大丈夫。少なくとも夫人やピーチェ嬢達の悪い様にはならない筈だ」
そう言ってくれたライレッド様の力強い顔を見て彼を信じてみようと、私は決意した。
担架で運ばれていくピーチェはあまりにも小さく、思わず自分の生命力を与える様に彼女の手を握り締める。
「お姉様……」
「元気になった時にまた会いましょう。だから今は別れの挨拶はしないわ」
「はい……今度会う時は元気なお姿をお姉様にお見せします」
私達は固く約束し合い、そのままサヨナラも告げずに別れて行く。
「一体何をしているのです!!??」
騒動に気付いた母が慌てる様に現れた。
相当慌てていたのか髪が少しボサボサしている。屋敷から出たピーチェを取り戻そうと後を追うが、使用人達に止められた。
それから逃れようと暴れる母に兄が無言で近づく。兄の姿を見つけると母は責め立てる様に言葉を荒げた。
「パープナー! ピーチェを何処にやったのです!?」
「母上。当主代理として私の判断であの子を療養施設に入院させました。ブラウ先生も母上に何度も進言したではありませんか? このままあの子を此処で弱らせるよりも、療養施設で少しでも苦しまずに治療させた方が良い事は母上もお分かりでしょう?」
「何を言っているの!? あの子は私がいなければ駄目なの!! 居場所を言いなさい! 私も直ぐに行かなければ……!」
「……いい加減にして下さい!!」
滅多に怒鳴り声をあげた事がない兄が母に初めて大きな声を出した。
「母上分かっているのですが!? 貴女がピーチェに何をしたかを!!」
「な、何を言って……」
「ブラウ先生があの子のベッドの横に置いてある机の引き出しにあった薬を見ました。……先生によるとアレは肺に病を持っている患者になら効果が出るが、健康体の人間が服用すれば逆に病み、下手をすれば命を落とす可能性がある薬だと。……ピーチェには肺の病はなかった筈だ。一体薬は何処から手に入れたのです?」
半分悲しみ、もう半分は悔しそうに母を見つめる兄。私は兄の言っている言葉を一瞬理解できなかったが、徐々に嫌と言う位理解してくる。……嘘だ。あんなに、あんなに妹の看護を、寝る間を惜しんでピーチェの病を治そうとしていた母が、あの子の病の原因だったなんて。それも一歩間違えれば死んでしまう可能性があった?
当の本人は兄の言葉に明らかに動揺して頭を左右に激しく振る。
「ち、違う! アレは只の栄養剤、あの子の病気を少しでも治そうと……」
「ならブラウ先生の間違いだと? ならばあの薬を他の先生に見せましょう。母上とブラウ先生何方が嘘をついているのか。……お願いですからこれ以上ご自分の名誉を損ねる様な真似をするのは止めて下さい」
兄の反論に先程の勢いが急激に落ち、あからさまに動揺する母の姿を見て何方が真実なのか馬鹿な私でも十分分かった。
「……夫人」
今の今まで黙っていたライレッド様がやっと言葉を発した。
「夫人がピーチェ嬢やバープナーやオレアの事を真摯に愛している事は分かっています。ただ……貴女は今心の病気になっております」
「びょ……き……?」
「そうです。夫人は心の病気に掛かっております。それも重度の。きちんと治療すれば治りますが、その為にもまずはピーチェ嬢と夫人を一度離してそれぞれキチンとした治療をしなければなりません。
奥様は今まで十分頑張ったのです。休んでも罰が当たりませんよ」
優しく語り掛けるライレッド様に少しずつ落ち着きを取り戻していく母。まるで憑き物が落ちた様な表情になり床に座り込んだ。
ライレッド様は片膝を付いて母の耳元にしっかりと聴かせる様にある事実を言う。
「夫人が罹患している心の病は恐ろしい病です。夫人と同じ病に罹った人が子供をころしてしまったり、逆に子供に殺されてしまったケースがあります。……ピーチェ嬢に同じ様な咎を負わせるつもりですか?」
……ライレッド様のこの言葉に母は今まで溜まりに溜まっていた物を解放するが如く、大きな声で泣き出した。
その後、母はライレッド様の勧められた療養施設が近くにある別荘に信頼する使用人を数人連れて住む様になった。
そして父は今の地位を辞退し、兄に家の全ての実権を渡して隠居した。今まで放置してきた母に償う様に母と一緒について行き、母に尽くしているそうだ。
それと別荘に移り住んでから分かった事だけど、母の治療の付き添いに父が来た時にお医者様から父も一緒に診断する様に勧められて受けてみたら、軽度の躁鬱だと判明したそうだ。今は夫婦二人三脚で治療している。
両親と共に暮らしている使用人から『若い頃の様に幸せそうに笑い合う事が多くなった』と涙で文字が掠れた手紙が送られてきた。
父が軽度とは言え躁鬱病に罹患する理由となった部署は解体される事になった。
余りにも退職者が多く、挙句責任者だった父も母の病(勿論ピーチェの件を伏せて)と自分の病を切っ掛けに辞職すると、陛下も流石に放置出来ないと宰相に命じて父の所属していた部署を調査。
それで分かった事だが、父の部署は他の部署から巧妙に仕事を押し付けられていた事が分かり、元々忙しい部署であったけど他の部署からの仕事のせいで余計に負担となり、大量の離職者を出していた。
陛下や王太子殿下、宰相はこの事に大層お怒りになり、仕事を押し付けた者やその部署の責任者達を厳しく罰せられ、解体された部署の仕事を割り振られてする様になった。
お陰で今まで以上に忙しくなったそうだ。何も関係のない人達は可哀想だが、見て見ぬふりをしていた節があったそうだし、割り振られた部署は今まで楽な仕事ばかりしていたそうだから、自業自得として納得して貰うしかない。
父の後を継いだ兄は今まで以上に領地や屋敷の仕事に精を出すようになった。それと王太子殿下直々の依頼で各部署の不正を監視する『監査部』に配属したそう。
無論父の二の舞にならない様にセーブは掛けられているそうだが、兄はもう嬉々として鬼の様に監査をしているとか。
目下の問題はお嫁さん探しだそうだけど、悪い人ではないのだから大丈夫だろう。
ピーチェも療養施設に入院してから劇的にと言う訳ではないが、かなり病状が回復していった。勿論療養施設にいる医療関係者達の手厚い治療のお陰でもあるが、病気の原因が取り除かれたのだからある意味当たり前か。
最近では短時間なら杖ナシで歩ける様になり、あと数ヶ月経てば退院出来る程体調が良くなった。ピーチェと手紙のやり取りをする様になるとは、昔の私はきっと夢にも思わなかっただろう。
『何時かお姉様の様に幸せな家庭を作りたい!』と手紙に書かれた時は、思わず涙ぐんでしまった。
因みに母の件はあの時関わった全員墓場まで持っていく秘密にした。この事が露見しても誰も幸せにならない事位誰だって分かる。
両親の件はある程度のフェイクを入れて話している為、入院している事は知っている。何も知らないピーチェはその事に酷く心を痛めていた。
特に母について『自分のせいで病んでしまったのでは?』と落ち込んでいたそうだが、療養施設の看護師から慰められたそう。……本当の事を余計に言えなくなったな。
そして私とライレッド様は……
「オレアは元々俺が家を継ぐ予定ではない事を知っているね?」
ある日、ライレッド様のお屋敷に訪問した時に彼の方から話してくれた。
「ええ。ライレッド様は三男で、本来の予定では家を出てお医者様になる予定だったと兄から聞いております」
「ああ。だが、長男はあまりに素行が悪く廃嫡、次男はウチよりも上の家柄に婿入りした。迷惑な話だが、お陰でコッチにお鉢が回った訳だ」
ライレッド様の一番上の兄は、ロクデナシの代名詞でもある『飲む打つ買う』の三拍子が揃った人だ。私の兄と同じ様に嫡男として厳しく育てられた筈なのだが、学生時代に借金と女性問題を引き起こしていた。
このまま後を継がせたら家が潰れると、廃嫡にして性根が直るまで修道院に放り込まれた。
二番目の兄が本来なら後を継ぐ筈だが、とある御令嬢に見初められてしまった。一人娘だった為本当ならその恋は結ばれる事はなかった筈だが、御令嬢家がライレッド様の家よりも格が上だった為、結婚した方がメリットがあるとそのまま二番目の兄を婿に出した。
「跡取りになるつもりはなかったから、正直迷惑だったし、両親もそれなりに負い目があったからある我が儘を許してくれた」
「我が儘? どんな我が儘ですか?」
私の質問にライレッド様は顔を赤くし、「うー。あー」と言葉を中々話してくれない。ライレッド様の様子が不思議で私は頭を傾げる。
やっと言う気になったのか、ライレッド様は長い沈黙の末に小さな声で答えてくれた。
「………………好きな人と結婚する事」
「……えっ?」
『好きな人と結婚』? それってつまり……
理解した私は茹で蛸の様に顔を真っ赤にしてしまった。
「……学生時代、パープナーの家に初めて訪問した時に、パープナーの妹達が庭で仲良く話していた。車椅子の妹を気づかいながら花冠を妹の頭に乗せる姉の姿を見て一目惚れしてしまった。
だが、当時の俺は将来自分の飯すら食えるかどうか分からない状態だった。そんな男と結婚しても不幸になるだけだと思って諦めたが……家を継ぐと決めた時にパープナーからオレアが未だに婚約者がいないと聞いた時に……チャンスだと思って……」
段々と声が小さくなるライレッド様を見て愛おしく思い始めた。
「……私、ライレッド様が妹ではなく私に一目惚れして下さって嬉しいです。私もライレッド様の事が好きで、ピーチェとライレッド様が一緒にいる所を見る度に胸が張り裂けそうな思いをしていました」
私の本音の言葉に傷ついた表情を作り、ライレッド様は私に頭を下げた。
「申し訳なかった。夫人の件はオレアとピーチェ嬢の母親だし、まだ確信がなかった。君が傷つく様な事をしたくなかった」
「分かっております。ですがこれからはどうか私に関わる事は、例えどんなに辛く悲しい事だとしても分かち合わせて下さい。夫婦になるのですから」
「ああ、そうだな。約束するよ」
ピーチェが結婚する時には、私達は二人の子供を抱えて参列したのだった。
設定
・名前の由来は色から
オレア→オレンジ
ピーチェ→ピンク
パープナー→パープル
ライレッド→レッド
ブラウ先生→ブラウン
・敏い方がいると思いますが、母親は『代理ミュンヒハウゼン症候群』です。
ピーチェは幼い頃は確かに病弱で母親も看護をしていたのですが、周りからの関心と同情が忘れられず、段々と健康体になるピーチェが切っ掛けに発病した。
結婚前の母親は今で言う所のバリバリのキャリアウーマンだったが、結婚後は貴族の通例通りに家に入る事になった。しかし貴族の夫人としての生活には性に合わず、夫人でも出来る仕事(例えば家庭教師)をしたいと願っていたが、その為には夫の許可が必要だった。
だけど夫は殆ど家に帰る事がなく、帰ったとしても家に寝るだけで妻の話を碌に聞く事がなかった。母親はストレスや不満が溜まっていき、ピーチェの件で爆発した。
・家庭を顧みなかった父親が一番悪いが、弁明するならば彼自身家庭の事を心配をしていた。
しかし王宮の仕事(イメージ的に総務に近い)がかなり膨大でそれ故に人気がなく、人が殆どいなかった。多忙な仕事故に人が体調を崩して辞め、個人の仕事の量が余計に増えて……と言う悪循環に陥っていた。
とても家庭の事など考える余裕もなかった。
・ライレッドは心理学を専門としていた為、最初パープナーから相談された時は代理ミュンヒハウゼン症候群を疑っていた。