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37話 私の新しい日常

 夜、私は自室で手紙を読んでいた。

 差出人はアンリ。

 アンリは律儀にアイリの状況を週1回、手紙で私に知らせてくれる。

 私の所在をアンリが知っているのは、兄様が教えたからだろうし、この手紙も兄様が依頼したのだと思う。

 兄様の気遣いに感謝しながら、私は毎週この手紙を楽しみにしている。

 

 手紙によればアイリは相変わらず忙しい日々を元気に送っている。

 第二王子との仲も順調のようで、来週はシャルと共に王太子主催のお茶会に呼ばれているとの事だった。


<もう、本当に私の出る幕はないわね>


 嬉しさ半分寂しさ半分と言ったところか。

 完全ではないけれど、私も妹離れ出来つつあるみたい。

 私がアイリにしてあげれる事なんてもう無いけど、せめて遠くから見守っていければ思う。


 私が兄様の仕事を手伝いだして3ヶ月。

 学園では夏季休暇に入る頃ね。

 手紙によれば、アイリはバンド活動が忙しく、実家に帰るのは長期休暇前半の3週間くらいで戻ってくるらしい。

 馬車での移動なら片道1週間かかるので実家で過ごせるのは1週間くらい。

 大きな国では無いとは言え、辺境伯領は王都より遠いのである。

 

 アイリが忙し過ぎで倒れないか不安でもあるけど、アンリが付いているなら大丈夫ね。


 私は手紙をしまうと、アンリにお礼の手紙を書く為、紙とペンを用意した。

 禄に挨拶出来なかったシャルやエマ、バンドメンバーの娘達にも、お詫びとお礼の手紙を書きたい。

 何度もお見舞いに来て下さったトレーニ様にもお礼を書かないとね。

 ようやく手紙を書く気になるまで、気持ちが落ち着いた。

 3回目の人生だと言うのに、こんなにも心が弱かったのね私。



ーーーーーーーーーーーーーー



 翌日、私は昨日作成した帳簿を兄様に見せていた。 

 

「リリー有難う。完璧だよ」


「一部は父様に送る分です」


「うん。助かる」


 経理も手伝うようになり、出費についても考えるようになった。

 漠然とは判っていたつもりだったけど、帳簿に書くことでハッキリと今まで如何に贅沢させて貰っていたかを数字で見せつけらた。

 その金額に衝撃を受けた。

 贅沢させて貰っているのだから、少しでも領民が豊かに暮らせるようにしていきたいと思うようになった。

 前世の時の様に領民の為に力を使ってもいいけど、出来れば政治で貢献したい。

 とは言え、兄様は立派な領主になるだろうし私ができる事はサポートすることだけだろう。

 いずれ嫁いだ先でもお手伝いできればいいのだけど。

 

「兄様、紅茶をお淹れしますね」


「ありがとう。リリーの紅茶とクッキーは絶品だからね」


「あまり褒めないで下さいまし。本気にしてしまいますわ」


 私の口調に兄様が苦笑した。

 私はいずれどこかに嫁ぐことになるわ。

 だから私はユニスリー家が侮られ無い様、淑女で有る必要があるもの。

 この屋敷に当然メイドはいますけど、わたくしがお淹れする紅茶を兄様は好みますからね。

 

 ……思考は普通に戻そうと思った。




「うん、やはりリリーの淹れてくれる紅茶が一番だ」


 紅茶を一口飲み兄様がほっと一息つく。

 少しでもお仕事の緊張が解れたなら嬉しい限りである。


「ふふふ。有難うございます」


「そういえば、もうすぐ学園は長期休暇だね。リリーは帰省したくないのかい?」


「別々に帰るのは勿体ないですから。それに秘書だけ帰る訳にはいかないでしょう」


 敢えて秘書としての口調で返した。


「秘書が優秀で助かってるよ」


「どういたしまして」


 兄様は王宮騎士団の中でも王族警護を担う近衛騎士。

トレーニ様もだけど、嫡男であり家を継ぐ者である為、騎士ではあるけど名誉待遇としての側面が強く常時王宮に詰めている訳ではなかった。

 王より団長待遇で正式に騎士団へ誘われたのもユニスリー家に男子が1人という理由で辞退している。

 兄様の近衛騎士として仕事は週3日程であり破格の待遇と言える。 

 貴族の家格の高い貴族家の男子が腰掛けで近衛騎士団に入るのはよく有ること。 

 とは言え当然、特別待遇を快く思わない者はいるだろう。

 近衛ともなれば、戦闘能力だけでなく、礼節と教養が必要になるので近衛は自然と貴族の子息が多い。

 でも騎士は武力と正義と勇気の象徴でもあるから、高い武力を持つ兄とトレーニ様は専任騎士達に受け入れられて上手くやっているみたい。

 

「今日の予定はどうだったかな?」


 兄様は全て把握されているはず。

 私の口から言わせたいのだろう。


「本日はお客様が多数お見えになられます。ミケレイ伯爵家ゲディデイ様…(多いので略)…最後に……トレーニ様になります」


「ふぅ、随分と多いね」


「はい。急に兄様への面会の申込みが殺到しまして」



「彼らの目的はリリー、君さ」


「私……ですか……」


「失敗したな。先日同僚達につい口を滑らせてしまったんだ。リリーに秘書をしてもらっているとね」


 あ、なる程、それで私に会うために兄様に面会を。


「兄様、私は下がっていましょうか?」


「いや、リリーには申し訳ないけど会ってやってくれないか」


「兄様がそう望まれるなら従います」


 縁談ならまず、私と挨拶を交わしておきたいのわかるけど、込み入った家どうしの話になるなら私が居ていいのかしら?

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