一章之弐
そこは絵に描いたような島だった
海岸には砂浜が広がり、すぐ奧にはうっそうとしたジャングルのような森林が広がり、中央には少し山になっている
まわりは海で囲まれているようだ
全貌を知るためにはまだ把握しきれていないが広がる大自然とまったく感じられない人の気配
それらは夏休み最終日を終えようとして憂鬱気味になっていた俺に気力を与えてくれた こんな大自然のなかに俺はいるのだという実感が力をくれたのだ
森林の奧から聞こえてくるセミたちの合唱、あのセミはなにゼミだっけ?
森林の奧から聞こえる鳥の声、あの声は何ていう鳥だろう
耳に入ってくる数々の声を聞いては自分に問い掛ける
ほとんどわからない
ただひとつだけ、懐かしい声がした
ミーンミンミンミン…
ミンミンゼミだった
その騒がしい声を耳にしながら、俺は眠りに就いた
気が薄れていく中、俺はこう思った
この島で一生暮らしたい
まだ太陽は昇り切っていなかった
いつのまにか俺は眠ってしまったらしく記憶が途切れた
目が覚めたら室内だった
そこは暖かいベッド上で
そこには二学期が待っていて
日当たりの悪い部屋で目覚める
すべてが夢で
わけのわからない島にいたことはすべて夢であって
その世界から抜け出したことを後悔しつつ中学への登校をはじめる
いつものような生活が訪れて、あぁ、こんな生活もいいなぁ と思いながら日常を受け入れる
そんな思いがあったのかもしれない
一瞬、目の前の光景を受け入れがたかった
さっきまで受け入れていたこの世界
なぜもとの世界が恋しくなったのだろう
複雑な気持ちのなか、俺は生まれて初めて、一人で島の海岸で朝を迎えた
海岸で迎えた朝は、潮風に吹かれて迎えた
俺はいつ帰れるのだろうか…