一章之壱
気がつくとそこには何もなくて ただ広大な自然が広がってて…
今年も夏休みが無駄に過ぎていった
なぜ無駄に過ぎていったのか
わかっている、自分が導いたことなのだ 一日一日を大切にすごそう、そう思っていたはずなのに、俺は結局そうしないのだ
明日やればいい
そんな日が何日も続いた
やっと宿題が終わったと思ったらもう最終日だった
夏休みが始まって以来、毎日が宿題から来る不安があった でも宿題が終わったいま、俺には不安がない
解放されたのだ
だが、残された時間は数時間程度
それしか時間が無いなんて、自分が導いたことなのにこの上ない苦しみに思えてしまう 時間がほしい、ただ気ままに過ごせる時間が、ただ自由に過ごせる時間が…
一心に求めた
神でも天でもなんでもいい だけれども、耳に響いてくるのは神や天の救いの声でなく、ただただ蝉の合唱が続くばかり
それは流れゆく時間が経過していることをゆっくりと、そして残酷なほどたんたんと、メロディにしているだけたった
こんな時に限って、誰からも誘いの連絡が来ない
宿題があるからなのだろうか
ヒグラシが鳴き終わる
もう夜になるのだ…
夜になれば、もう行動は限られてしまう
こんな中坊を夜中に簡単に外出させる親もなかなかいないし、そんな時間に呼ぶ友達もいない
もう俺は、飯を食って、風呂に入って、歯を磨いて寝るだけなのだ
明日目が覚めたときにはもう夏休みは終わって、休み前の生活が訪れるんだ
そう思った
だから……
目が覚めたとき
目の前に広がっているのがうっそうとした森林で、蝉の声しかしない場所だったのには驚いた
そして
うれしかった