プロローグ2
蝉の声が私を呼んでいるようで
残酷な程の暑さから逃げたいようで
私は鬱蒼と茂る木々に導かれるように奥へと進んでいる
怖いという感情はあった
でも私は、人の気配無いこの中で、一番身近なセミたちを求めていた いや、声を… 声を求めて進んで行く
ミンミンゼミがコンサートをしている あぁ、まだ昼間じゃないか、時間はまだある
でも一日でこの島から出られる確証はない あぁ、休んでいる暇はないんだ
…なぜ声を追い掛ける?
あてもない ただ現実を受け入れ切れていないのだろうか こんな環境に放り出されて、こんな世界に迷い込んで、でも身近な蝉の声はして…
それを追い掛けたらまた元の世界に帰れるのだろうか
あぁ、帰りたい この世界から抜け出して、日常の生活で日々を送るんだ
そしてこの蝉の声を、こんな気味悪い木々の中じゃなくて、私のお気に入りの部屋の、お気に入りの机で、勉強に励んだり歌を聞いたりしてその合間にこの演奏を聞く それが日常なんだ
歩いていたはずの私の歩幅はだんだんと大きくなり、今ではもう走っていた
走っても走っても走っても蝉の声はあちこちに響いている まわりは木々で視界が多い尽くされている
見えるのは木と日光と土だけ…
私はどっちへいったらいいの?
そう思った瞬間、目眩がした
取り乱し、直そうと思って無理に顔を持ち上げてもどんどん視野が狭くなり、頭が重くなっていき、その場に倒れこんだ
倒れこんだ瞬間、ヒグラシの声を聞いた気がした
あぁ、もう夕方なんだ…