別名
別名、アブラムシ。
全力の【ファイアボール】はマザーを覆う油に引火し、一気に火だるまとなった。
目の前のあまりの光景に唖然としてしまう。
マザーは羽を羽ばたかそうとするが、天井で頭を打ち、落下してきたかと思うと、その辺りを這いずり回り、懸命に火を消そうとする。
あ、俺、【火耐性】とっとこ。
そう思い、俺がスキルツリーで【火耐性】lv1を取得したり、スキルツリーを眺めていたりするうちにマザーのHPはどんどん減っていく。
そして、とうとう0になった。
【鑑定】すると、【マザーコックローチの死骸】になっていた。
脳内にファンファーレの音が二回響いた。
『レベルが上限に達しました。進化先を選択してください』
アナウンスの内容に、俺は小躍りした。
進化!
異世界万歳!
そして、表示された進化先は、次の二つだった。
進化先:キッズコックローチ
進化先:ベビーコックローチ《変異種》
(;゜Д゜)。。。
俺は頭を抱えた。
◆◆◆◆◆
悩む。
キッズは間違いなく正統進化だ。
だいたい想像がつくが、サイズが大きくなり、ステータスが上昇するぐらいだろう。
だが、《変異種》はどうだろうか。
どこがどう変異なのかもわからないし、ベビーのままなので、恐らくステータスアップは見込めない。
ギャンブルすぎる。
マザーのような化け物が徘徊する世界で、底上げしていないステータスは死に直結してるといってよいはずだ。
悩んだ末に俺は。。。
《変異種》を選んだ。
コックローチのまま正統進化を続けるのは、人間の矜持が許さなかったのだ。
夏休みをいただいていたので、間が空いてしまいました。