ボーナス
【火魔法】lv1の【ファイア】を唱えると、身体の芯から気力を持っていかれる感覚に襲われた。
気分が悪くなり卵鞘を直視するのも苦労する。
なんとか前を向くと、たしかに火のついた卵鞘があった。
成功した。
今も目の前の種火は勢いを増しているが、デメリットがかなりあることも分かった。
少なくとも、この身動きのできない倦怠感には対策を練らないといけない。
しばらくすると、呼吸も落ち着いてきたので、【ステータスオープン】をしてみた。
名前:田中山善光
種族:ベビーコックローチ
HP:9/9
MP:0/4
Exp:64/128
力:4
体力:3
素早さ:16
スキル:【強奪】lv1、【鑑定】lv1、【獲得経験値上昇】lv-、【火魔法】lv1
加護:邪神コックローの加護
称号:異世界人、同族殺し
たしかに【火魔法】を習得しているが、MPが0になっている。
さっきの【ファイア】で枯渇したのだろう。ある程度MPの余裕があるか、安全な状態じゃないと、なかなか使用できそうにないスキルだ。
そして、HPが満タンになっているので、自然回復があることも分かった。
そうこうするうちに、卵鞘が燃え尽きた。【鑑定】すると、【コックローチの卵鞘の燃えカス】になっていた。
『【鑑定】のスキルレベルが上がりました』
『【堅牢】の【強奪】に成功しました』
突如アナウンスが響いた。
これは幸先が良さそうだ。
【強奪】の条件は分からないが、スキルとして機能していることが分かったのは大きい。
MPを自然回復で満タンにしたあと、卵鞘がベビーコックローチに孵化する前に、物陰から【火魔法】を使う。
その作戦で俺は周囲の卵鞘を経験値に変えていったのだった。。。
無抵抗の卵鞘は、俺にとってボーナスでしかなかった。