まだ慌てる時間じゃない
まだ慌てる時間じゃない。
俺は発狂しそうになるのを、なんとか堪えた。
クールになれ。
クールになるんだ、俺よ!
Be cool!
なんとか冷静さを取り戻すと、俺は深呼吸をして、思考を巡らせる。
目の前にはゴキブリの死骸が二つ。俺が殴り殺したやつだ。
さっきの【鑑定】でも【ベビーコックローチ】と表示されたとおり、良く見ると背中に一本白い線が入っていて、まだ子ゴキブリであることが分かる。
そして、身の毛もよだつ話だが、俺自身もベビーコックローチになっているようだ。
たしかに、自分の手を見てみると、人間のときの面影など無い悲惨な有り様だ。
なんか腕が細いし、毛も生えてるし。
そして、神様が付与すると言っていたスキル。
これは間違いなく付与されているのだろう。
今も、目の焦点を当てると、【ゴキブリの死骸】と文字が表示されている。
【強奪】の発動条件は分からないが、【獲得経験値上昇】の効果でレベルアップしたことも分かる。
カサッカサッ
チート三種の神器は付与されていると見て…
カサッカサッカサッカサッカサッカサッ
ああーっ!うっせーーーー!!!!
目の前の死骸二つに、既に三匹もベビーコックローチが集っている。
これでは落ち着いて思考をすることもできない。
俺は死骸に夢中になっている一匹の後頭部を全力で殴った。
さらにもう一発!
すると、今度は二発で倒すことができた。
……なるほど、これがレベルアップの効果か……
俺はさらに二匹を殴り殺した。
どうやらレベルアップの効果で、攻撃力が増しているようだ。
計五体の死骸の前で、俺は思い付いた言葉を発した。
【ステータスオープン】
すると、【鑑定】と同じようにステータスが表示された。
名前:田中山善光
種族:ベビーコックローチ
HP:4/5
MP:1/2
Exp:10/16
力:2
体力:1
素早さ:10
スキル:【強奪】lv1、【鑑定】lv1、【獲得経験値上昇】lv-
加護:邪神コックローの加護
称号:異世界人、同族殺し
スキルにレベルがあること、称号があること。
【鑑定】よりも情報量が多いこと。
そんなことより、加護だ!
どうなってるんだ!
俺の善行が評価をされたんじゃないのか!
なんで邪神なんだ!!!
どうやら、とっくの昔に慌てる時間だったようだ。
初めての評価をいただきました。
お読みいただきありがとうございます。