そして、転生へ……
初投稿です。よろしくお願いいたします。
俺の名は田中山善光。
長きに渡るサラリーマン生活で身体を崩してしまい、実家に帰省中のニートだ。
実家の体面の問題があったので、すっかり引きこもり生活を送っていたわけだが、先日転機が訪れた。
実家の周辺地域を豪雨災害が襲ったのだ。
幸い、我が家は高台の上にあり難を逃れたわけだが、歩いて五分ぐらいの地域が壊滅的な被害を受けてしまった。
高齢地域に、ただ一人のニートの俺。
ボランティアに駆り出されるのに時間はかからなかった。
「今日もありがとうね」
「いえ、やることもないので、遠慮なく申し付けてください」
床上浸水をした家を一日がかりで掃除した俺に、山田のおばあちゃんがお礼を言ってきたので、返事をした。
休職してから、人との触れ合いが少なくなっていた俺は積極的に身寄りのない家の片付けを手伝っていた。
先日など、いきなり手を合わせて拝まれたぐらいだから、いかに役に立っているのかが分かるというものだ。
ひきこもりをしているよりも充実しているので、善光は俄然やる気に溢れていた。
少し休憩するか。
ちょうど目の前に自販機が見えたので、お茶のペットボトルを買い、ベンチに座り込んだ。
ふと目をやると、足元にゴキブリがいた。
黒光りする独特のフォルムを思わず踏み潰そうとしたが、危険を察知されたのか自販機の下に逃げられてしまった。
くそっ。
空振りした足を呆然と見ていたら。
すぐ近くで悲鳴と大きなクラクションが聞こえた。
思わず顔をあげると、すぐ近くにベビーカーを押している母親。そして、襲いかかろうとするトラック。
これはいかん!
そう思うと、俺の身体は勝手に動いていた。
ベンチから跳び跳ねるようにして、母親をベビーカーごと突き飛ばしてしまっていた。
全身を襲う強烈な衝撃。
意識が飛びそうになるが、なんとか目を開けた。
口内に広がる血の臭い、そして激痛。
赤く染まる世界の中で、俺はさっきの母親とベビーカーを隅に捉えることができた。
何か大声で叫んでいるが、命に別状は無さそうだった。
…良かった……。
そう思うと、俺の身体は急速に冷えていき、意識が暗闇の中に落ちていった。
◆◆◆◆◆
ふと気がつくと、真っ黒な世界にいた。
ここはどこだろう?
そう思い辺りを見回すと、ふいに頭の中に声が響いた。
ーやっと目が覚めたかい?ー
「お前は一体?」
ー君たちが神と呼んでいる存在のうちの一人だよー
えっ。まじで。
俺は想定もしていなかった答えに困惑した。
ーいきなりの出来事だから、驚いてしまうのもしょうがないよ。僕が君をここに呼んだのは、一つ御礼を言いたかったからなんだー
「御礼?」
ボランティアで日々善行を詰んでいたとは思うが、神様に評価されるほどのことは……
「ああーっ」
ー分かったかい。君があのときトラックから救った母親だよ。君の行為により救われたお腹の中の命は、君の死後に成長をして、種の進化と呼べるような革新的な存在になるのだよー
神様の発した言葉は、呆然とする俺に時間をかけて、やっと理解をすることができた。
そして、納得することができた。
自分の人生は無駄では無かったと。自分の人生が人類の役に立ったのだと。
「そっか。それを教えてもらえて、成仏できそうだよ。ありがとう」
俺がそういうと、いきなり神様の声は動揺した。
ーいやいや、ちょっと待ってよ。これだけの善行を成し遂げた人間を成仏なんてさせるわけないよ。僕は、君に次の人生を用意してあげたいだー
まさか。
「それは転生ってやつか?」
ー随分と察しがいいね。流石だよ。この世界での輪廻は無理だったけど、別の世界に新しい生を用意できたんだよねー
やるじゃん、神様。異世界転生とは。
「チートは?ハーレムはあるのか?」
ー勿論。その辺のセコい神と一緒にしないでくれよ。チートもハーレムもバッチリ用意したよ。ただ本人の努力に拠るところもあるから、前向きに頑張ってほしいと思ってるよー
よっしゃあっ!俺は思わずガッツポーズをした。
「スキルは?スキルは何を用意したんだ?!」
ーそこを質問してくるとは流石としか言いようがないね。僕も色々勉強してね。【鑑定】、【強奪】、【経験値獲得上昇】。この三つを授けることにしたよー
「うおおおおお」
俺は思わず叫んでしまった。まさかのチート三種の神器。
これは、、、勝てる!!
ーじゃあ、そろそろ準備もできたし、次の生を頑張ってねー
「神様。ありがとうございました!」
そうこうするうちに、俺の身体は光に包まれた。