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TORNE!! ~アイテム屋トルネの冒険~  作者: パノパノ
第一章 騎士学校入学記念セール!在庫一掃大作戦!
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イリス!正義の騎士 前編

前回までの大まかなあらすじ

・騎士団長の娘であるイリスは、森でバジリスクに襲われ死にかけているところを、アイテム屋の少年トルネに、ポーションをもらい助けてもらう。

・その後、イリスを食べにきたバジリスクを、二人は協力して罠にかけ、見事首を斬り落とす。

・その首はイリスが、体はトルネがもらうことになり、トルネはイリスに、春に騎士学校でまた会えると話す。

・イリスの父、ファルコは、娘からトルネの話を聞き、町で噂になっている魔法使いと呼ばれるアイテム職人のことを思い出す。

 

 ここは騎士の町パルキア。

 その名前は、かつて王国を救ったえらーい騎士様からとったとかなんとか。


 その名物は、甘くておいしい、ほっくり芋のパルキア饅頭。

 それと町の中心にそびえる、王立パルキア騎士学校である。


 今日は、騎士学校の入学式。

 入学者用の寮の一室でマキアート家の娘、イリス・マキアートは、緊張した面持ちで鏡の前に立っていた。




 へ、変じゃないかな…?制服…。

 髪型も…、おかしくないよね?


「イリス様ーー!早く行きましょうよー!」


「え、な、ナナ?!ちょっと待って…」


 振り返ると、ナナが部屋の外に立っていた。

 にんまりと笑ってこっちを見ている。


「へぇー…」


「な、なんです?」


「イリス様も、鏡を見たりするっスねぇ…」


「と、当然です!今日は大事な日ですから」


「ふぅ~ん…」


「さっ、さぁ、行きますよ!ナナ!置いて行きますよ」


 なんとなく恥ずかしくなって、イリスは強引にナナの前を通って部屋の外に出た。


「おっと!待つっス!」


 パルキア騎士学校は、全寮制の学校である。

 入学した者は、貴族も平民も、全て割り振られた寮に入らなくてはならない。


 イリスは、昨日のうちに屋敷から荷物を運び込んでいた。

 イリスの荷物は少なく、屋敷もパルキアの貴族町にあるため、それほど手間はかからなかった。

 だが、中には途方もないような量の荷物を運び込もうとする生徒もいる。

 何しろ、王国中から騎士の資格が欲しい貴族のお坊ちゃん・お嬢ちゃんが集まるのである。

 当然、トラブルも多いのだった。


「素直に、トルネ君に会えるからお洒落してるって言えばいいのにー」


 学校まで歩きながらナナが話しかけてくる。


「はぁっ?!そんなことはありません!マキアート家の者として、当然の身だしなみです!」


「イリス様、そんなこといってー…、いっつも稽古だー!修行だー!とかいって、お洒落とは無縁の人間だったじゃないっスか!」


「そ、そんなことは…」


 あるかもしれない。

 イリスは三度の飯より剣術の方が好きな自覚があった。


「騎士団のみんなも、あの見た目であの中身は詐欺だーとか、美少女の皮をかぶったメスゴリラだーって噂してたっスよ」


 ゴズンッ


 石造りの壁に拳がめり込む。


「その話、くわしくお願いします」


「あ…、いやー、冗談スー…」


 ナナは、砕けた石壁を見ながら両手をあげていた。

 白旗のポーズである。


 ナナは、イリスの幼馴染だ。

 パルキアの騎士団長である父の部下の娘である。

 ナナの父が騎士団長の直属の部下であるからか、頑なにイリスに対して敬語を使うのをやめないが、幼い頃から騎士見習いとして、共に遊び、共に学んだ親友である。


「だいたい、ナナは何か勘違いをしています。

 トルネはそういう対象ではありません」


「へー、じゃあどう言う対象なんスか?」


「トルネは、…そう、命を預けあい…、正義のためにバジリスクと戦った…、戦友(とも)ですッ!!!」


 イリスの目は輝いていた。


「あー、センユウと書くタイプの友っスねー…」


 ナナはため息をついた。

 少しはマシになったかと思ったが、イリスが女性らしくなるにはまだまだ時間がかかりそうだった。


 騎士学校の入り口、門の辺りまで来ると、人だかりができていた。

 その中に見知った顔がいたのでイリスは声をかけた。


「マルコ!どうしたの?何かあったの?」


「あ、お嬢、おはようございます」


 マルコは色黒でガタイのいい、本当に同い年かというような、いかにも武闘派といった感じの男だった。

 ナナと同じく、父の部下の息子で、ナナと同じく自分に敬語を使うのをやめない男だった。

 敬語を使われるのは他の年上の騎士団の者も同じことなので、もう気にしなくなった。

 しかし、


「お嬢はやめてっていってるでしょうー!」


 ぐにーっと、マルコの頬を引っ張る。


「いひゃい、いひゃいれす」


「マルコ、それで何があったっスか?」


「あれれす」


 マルコが指差した方を二人がみると、人だかりの中心には、馬車と、倒れこんだ従者と、それを罵倒する男子生徒がいた。


「あー…、ヤバイっスね…、いかにもな感じっス」


「あぁ、ヤバイな…」


 マルコとナナは嫌な予感がした。こういういかにもな場面を見て、黙っていられない正義の権化のような人間を、一人、知っているからである。


「こんなもん、お嬢が見たら…」




「やめなさぁい!!」




 気がつくと、さっきまで二人の側に立っていたはずのイリスは、いつの間にか人混みをかき分け、その男子生徒に叫んでいた。


「「あちゃぁ~」」


 マルコは頭を掻きながら、ナナは渋い顔をしながら、二人は人混みをかきわけイリスの側に駆け寄るのだった。


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