寮生活 おまけ
翌日。早朝。
「ふぁぁ…、イリス様、こんなに朝早くにどうしたんっスか…?」
ナナがまだ眠そうに、朝早く制服に着替えているイリスに声をかける。
「トルネとお母様を起こしにいってきます…!
不安です、昨日一体トルネがお母様に何をされたのかを考えると…」
見ると、イリスの目の下にはクマができていた。
い、一睡もしてないのだろうか…?
「べ、別にそんなに心配しなくても、セリス様がトルネ君に何かすると決まったわけじゃあ…。
別にとって食べられるわけでも無いっス」
「…そうでしょうか?あのお母様の態度、あきらかにトルネを気に入ってました」
イリスのクマのできた目が鋭くなる。
「お母様は、やると決めたらどんなことでも必ず成し遂げる人…!
それがたとえ犯罪でも、一線を躊躇なく踏み越える度胸と決断力を持っています。
食べられるなんて、まだ生ぬるい…!!
私は今日から突然、トルネがお母様のことを「ママ」と呼び始めたとしても、何も不思議に思いませんよ!!」
◆
セリスの部屋。
「む…?」
もう朝か…、早く商品の仕込みをしないと…って、
「ええええええ??!!」
トルネが目覚めると、ベッドの上で寝ていた。
セリスがトルネに絡みついていて身動きが取れない。
昨日は、マッサージしていたらセリスが失神したので、適当に服を着せて自分はソファーで寝たはずなのに!!
「ん…、んん?朝ですか…?おはようございますトルネさん…」
セリスが目覚める。
「昨日は…、すっ、ごかったぁ…。
私、あんなの初めてで…、子供なのに、テクニシャンなんですねぇ…?」
セリスはトロンとした目つきで話しかけてくる。
「は、はあ、ありがとうございます…。
あの、仕事があるので、解放してもらえます?セリス様」
「いやん、セリス様だなんて…。
私のこと、ママって、呼んでもいいんですよ?」
いや、なんでやねん。
なんだか最近、同じようなことをだれかに言われた気がするなぁ。
「お母様ああああああっらああああッッ!!!!!!」
バゴォォ!!!!
すると突然、イリスが扉を壊して中に入ってくる。
「なぁにがママですか?!いやらしい!!
それに、なんですか?!そのツヤツヤした肌は!!!
昨日よりだいぶ若返っているじゃあないですか?!!
一体昨日、何をしてたんですか!!!」
「…お姉ちゃん、だぁれ??」
「若返りすぎて、私より年下になってる!!?
本当に何したんですか?!トルネ!!」
イリスが驚愕してトルネに聞いてくる。
「なにって、ただのマッサージだよ…」
「ま、マッサージ?!トルネが?!
う、うらやましい!うらやましい!私にもしてください!!!」
清々しいほどにイリスはストレートだった。
「ふん、冗談ですよ、イリス。
それに、私だからこんなものですみましたが、あなたがトルネさんのポーションプレイに耐えられるわけないでしょう?廃人になるのがオチです」
「ぽ、ポーションプレイ?!なんですかそのいやらしい新語は!!!
本当は何をしたんですか?!トルネ!!」
「だからただのマッサージだってば!!!」
イリスはトルネに詰め寄ってくる。
「さて、私は仕事があるので、一度屋敷に戻ります。
あ、それとトルネさん、今日からこの寮の生徒の食事、朝ごはんとお弁当の準備、お願いしますね?」
「ふぁっ?!」
トルネは驚く。
「お弁当は希望者だけでいいですが、朝食はちゃんと全員分お願いします。
食材は厨房のものを自由に使ってください。
ウチの寮生は全員で60人というところですが、アレルギーなどがありますからリストをよく見て。
ちゃんと栄養のバランスを考えて、量は多めに。
朝七時には全員を起こしてくださいね。
夜ご飯は私も作るのを手伝いますが、メニューはお任せします」
「ちょ、ちょっと待って!!セリス様?!ちょっと!!」
セリスは言うだけ言うと、スタスタと部屋から出て行ってしまった。
トルネは愕然とする。
「七時までにろ、60人分の食事…?!イリス、今何時?!」
「え、ええと、五時を過ぎたところですね…」
「や、やばい!!ば、売店の方もあるのに…!!
イリス!!ナナを起こしてきて!!イリスも手伝って!!」
「え、ええ?!私も?!私包丁なんて握ったこともないですよ?!」
「この際仕方ない!ロングソードを握ったことがあるだけまだマシだよ!
…売店の軽食の方は昼までだから、少しくらい遅れても構わないか…!
とにかく、今ある食材の在庫を確認しないと…」
トルネは走って厨房へと降りていく。
この後、トルネとイリスとナナ(主にトルネとナナ)の奮闘により、【ローズバッド】の寮生たちの食事は無事用意されたのであった。
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なんとかそれを糧に書いていきたいと思います。