トルネとシャンテリオン
イリスとの試合から丸一日が経って。
「はぁー、やっと解放された…」
トルネは校庭のそばの草むらに寝転んでいた。
「あのジジイ…、イリスは無事だって言ってんのに、人のことを牢獄にぶち込みやがって…!
やっぱり慣れないことはするもんじゃないなぁ…。
ろくな事にならん」
トルネは今まで、罪人が入れられる用の牢獄に入れられていた。
その原因は、もちろんあの闘技場の大爆発である。
観客には一人も被害が出ていなかったものの、校長のギルモアが、トルネが対戦相手のイリスを殺したと言い張るので、騎士に捕えられたのだ。
トルネは必死にイリスは無事だと説明したが、激昂したギルモアはまともに話を聞いてはくれなかった。
イリスが無事に目を覚まし、レナードの説得もあって、やっとのことで牢獄から解放されたのだった。
「あの一族は、オレ、どうも苦手だな…。
人の話をさっぱり聞かないから…」
トルネはぐんと伸びをする。
二日かけて行われた、パルキア騎士学校の実技大会は、もう終わってしまった。
トルネの最終的な順位は二位。
一年生の一位は、シャンテリオンという生徒だった。
トルネの起こした大爆発のあと、当然だが闘技場は使えなくなってしまった。
なので決勝戦をどうしようかという話になったのだが、当のトルネは牢獄の中である。
その結果、もう一つの準決勝で勝ち進んだ、シャンテリオンが自動的に優勝となったのだ。
「まぁ、どうせ棄権するつもりだったからいいんだけどね…」
無駄な出費は一回で十分だ。
それに下手に優勝なんかしたら、誰の恨みを買うかわかったものじゃない。
準優勝でも、十分恨みを買っている気がするが。
そういえば、トルネを殺そうとしたナルシスは今頃どうしているだろうか?
本来ならば騎士に捕まってもおかしくない罪のはずだが、そこは貴族。
親のコネで、捕まるということはなかったようだ。
しかし学校を退学になり、故郷には帰らされたらしい。
今度は親族全員で襲ってくるかもしれないな…、夜道には気をつけないと…。
トルネがそんなことを考えていると、後ろから声がした。
「こーんにちは!トルネ!!」
トルネが見ると、そこには美しい白い髪の幼げな少年が微笑んでいた。
制服を着ているところを見ると、この学校の生徒だろうか。
「たしかにオレはトルネだけど…、あんた誰?」
「えーっ!ひどいな!僕だよ!シャンテリオン!!」
「あー、あんたが…」
シャンテリオンは、たしか一年生の大会の優勝者の名前だ。
もっとがっしりした生徒だと思っていたが…。
とても実技大会の優勝者には見えない。
「ひどいなーもー。
戦う予定だった相手のことを知らないなんて!
ちょっと情報不足じゃないの?!」
「オレにはそういう予定はなかったんでね」
シャンテリオンとトルネは決勝で当たるはずだったが、トルネは最初からその前に棄権するつもりだったので、シャンテリオンのことは調べていなかった。
自慢ではないが、無駄なことは一切しない主義だ。
「僕はすっごく楽しみにしてたのにー!トルネと戦うのを!!
だって君の戦い方ってすっごく面白いんだもん!
まるでマジックショーみたいだった!」
「そりゃどーも…」
シャンテリオンは子供のようにはしゃいでいる。
トルネはなんとなく居心地が悪かった。
「とくに最後のあの爆発はすごかったなぁ…!
打ち上げ花火をいっぱい一緒に打ち上げたみたいだった!!
僕びっくりしちゃった!あれを僕のときにやられてたら、きっと僕も負けてたよ!
僕、攻めるのは得意だけど、守りは全然ダメだし」
「あんなこと何回もやんないよ…、出費もバカにならないしね」
出費はともかく、ポーションの素材であるうちのバイトたちが失血死してしまう。
「でも…、僕、どーしても気になることが一つあるんだ。
トルネがアイテムを使わずに、剣だけで戦ったら、本当はどれくらい強いんだろーって」
そう言うとシャンテリオンは、持ってきていた訓練用の木剣をトルネに渡してくる。
ニコニコしながら。
トルネはため息をつく。
「はぁ…、騎士様ってのは、どーしても正々堂々ってのが好きみたいだなぁ…。
よーし、わかった!もうわかった!
気の済むまでやってやろうじゃん」
トルネは、シャンテリオンから剣を受け取ると、見よう見まねで剣を構えた。
プロローグ【魔法使い】の回に、
イラスト「イリスとトルネ」を追加しました。
よろしければご覧ください。




