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TORNE!! ~アイテム屋トルネの冒険~  作者: パノパノ
実技大会!編
23/51

大会当日!!

 

 空は快晴。

 祭りの雰囲気に、パルキアの町は色めき立っている。

 今日は、騎士学校の実技大会の日だ。


 騎士学校の実技大会は、二日かけて行われるパルキアの名物行事だ。

 この日は、他の町からも観光客も大勢くる。

 下町の方では多くの屋台や露店が立ち並び、にわかに活気付いていた。


 そして当然、その中にはトルネもいた。


「さぁ!!安いよ安いよ!!

 ヒドラの尻尾だ!!なかなか食べられないよ!!

 そこのお兄さん、どうだい!!

 一つどうだい!!

 故郷の恋人の、土産話に食べていかない?一個300Gだ!

 どうだい!!」


「バッカ野郎!!故郷に恋人なんていねえよ!」


 客の返しに、周りの客がどっと笑う。


「ありゃりゃー、こりゃ悪いこと言っちまった!

 でも大丈夫、心配なさんな!!

 うちの特製ヒドラの尻尾を食べりゃ、精力増強!気力満点!

 男っぷりがイヤでも上がるってもんだ!

 どうだい?特別に…」


「トルネ!!探しましたよ!!」


 人混みの中からイリスが叫ぶ。


「…ほらね、この通り。

 女の方がほっとかないよ!!」


 周りの客が、またどっと笑う。


 客をかき分け、イリスがトルネの側にやって来る。


「探しましたよ!開会式にも出ずに!

 こんなところで何油売ってるんですか?!」


「何だって売るよ。商人だもの。見てわからない?

 今日は、一番の稼ぎどきなんだ。

 ハイ!お客さん、ありがとうー!一個でいい?おまけしとくよ!!

 ていうか、よくここがわかったね?」


 トルネは客をさばきながらイリスの相手をする。


「それは…、売店にいた、よくわからないあの生き物が教えてくれましたから…。

 あれ、なんなんですか?店員って書いてありましたけど…、どうみてもあれモンスター…。

 って、それよりも!

 今日は、実技大会当日なんですよ!?もう戦う準備はできてるんですか?!」


「うーん、まぁ、なんとなくはね」


「なんとなく!!?…ですか…」


 イリスは何か言いたげである。


 やれやれ、イリスだって自分の試合があるだろうに。

 人の心配ばかりしていてくたびれないのかね。


「大丈夫、勝てるって、信じてていいよ」


「そ、そうですか…!」


 イリスは一瞬で、パアッと顔が明るくなる。

 

 だから、そう簡単に人を信じるなって…。

 まったく、正義の騎士様がこんなに騙されやすくて良いのかしら。

 しかし、こんなどうでもいいことで嘘をつくなんて、案外振り回されている方はオレの方なのかもしれないな。


「ところで、ヒドラの尻尾って、私、初めて見ます。

 へぇ、美味しそうですね」


「食べる?一個500G(ゴールド)


「…さっき言ってたのより、高くなってません?」


 まぁヒドラなんて、オレも見たことないけど。

 これは濃ゆ目に味付けした、デブガエルの足だ。


「じゃあ、まぁ、そろそろ行くかね。

 と、その前に」


 露店の上にかけ上がると、トルネは大声をあげる。


「よーし!!!!みんな聞いてくれ!!オレはこれから、騎士学校の実技大会に出る!!」


 周りの人間がトルネに注目する。

 トルネは持っていた麻袋を上に掲げる。


「こいつは、ウチの店の、この一週間の売り上げだ!!

 こいつをぜーんぶ、次の勝負のオレの勝利に!!!!賭けるぞっ!!!!」


 店の方で接客をしていた、パパルコの顔が真っ青になる。

 周りから大きな歓声が上がる。



 うおおおおおおおおお!!!



「よく言ったぁ!!トルネ!!」


「応援してるぞ!!!」


「騎士なんかぶっ殺しちまえ!!」


「やったれやったレェ!!!!!」



 トルネはみんなに手を振って答えると、金を商売仲間に放り投げ、

 スルスルと下に降りて行く。


「さ、いこか」


「は、ハァ」


 町の大盛況の中、二人は学校へと歩いて行く。


「す、すごい人気ですね…!」


「ま、下町のみんなは、全員オレの家族みたいなもんだしね。

 気のいいやつらさ」


「えーと、トルネの対戦相手って…」


「キース・ガルバード。男。

 王国辺境地方の領主、ガルバード家の長男で、あまり生徒の評判は良くない。

 得意の武器はロングソード。

 魔法は使えず。試験の結果は、実技60点、学力60点でギリギリ入学。

 入学式の日に、馬車で寮の部屋に大量の家具を運び込もうとして騒ぎになり、退学にされかけた」


「…ずいぶんと詳しいですね…」


「最近ずっと、ヒマだったからねー。

 だから一週間の売り上げって言っても、実は大したことはないんだけど」


「えっ?…か、勝てますよね?」


 トルネは、イリスの問いに真剣な顔をして答える。


「イリス…、オレはたとえ、それがたった1G(ゴールド)だろうと…」



「絶対に!!負ける勝負にお金を賭けないよ!!!!」




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