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TORNE!! ~アイテム屋トルネの冒険~  作者: パノパノ
出会うひとびと編
21/51

契約は計画的に 前編


 イリスたちがレナードにしごかれている、そのころ。 


「ねぇー?頼むよ〜、トルネっちゃん」


「う〜ん…」


 トルネは困っていた。

 それは、客の来ない売店で、ぼーっとしているところに、

 食堂のおばちゃんが持ってきた「お願い」が原因だった。


「ねずみ、ねぇ…」


「ちょっと大きいのが住み着いちゃったみたいで困ってるのよぉ〜。

 野菜をかじられちゃってるみたいでぇー。

 トルネっちゃんとこ、そういうの専門でしょ?

 ササッと駆除してくれないかしら〜?」


 全然困っているようには見えない笑顔で、おばちゃんが頼んでくる。


 いや、全然専門じゃないけど…。

 アイテム屋を、ねずみ駆除業者みたいに言わないでほしい。

 そりゃたしかに、虫除けポーションだとか、簡単なネズミ用の毒は売ってますけどね。


「そういうの学校の教員とかに頼めないの?」


「え〜、だって、先生って騎士様でしょ?

 話しかけるの怖いじゃないのぉー…」


 …まぁ、騎士様にねずみ追いかけさせるのもな…。

 ほんとは、商品を買っていって欲しいけど、食堂のおばちゃんにはタダで飯を食わせてもらってるわけだし…。


「ま、いいよ。ちょっとネズミ捕りでも仕掛けてみようか。

 場所はどこ?」


「あっりがと〜!食料がおいてある倉庫なのよぉ〜!

 多分、地下室だと思うんだけど〜!

 あ、ハイ!これ!倉庫の鍵ね!!いや〜もうほんと助かるわぁ〜!ホホホ!」


「…はいはい…」


 …どうでもいいけど、こういうモノを頼みに来るおばちゃんって、お願いが断られるということを全く考えていないよな…。

 有無を言わさない威圧感があるというか…。

 鍵なんか持ってきて、最初っからやってもらう気まんまんやんけ…。


 食堂のおばちゃんが、何度も礼を言って帰っていくと、さっそくトルネは準備に取り掛かった。


 ふーむ、どうしようか。


 大きめのねずみだということだが、住み着いたのが、火トカゲや、ゴブリンという可能性もある。

 一応、準備だけはしておくか。

 さっさとすませてしまおう。一銭にもならない仕事だし。


 トルネは手早く準備を済ませると、売店に準備中の札をかけ、食料庫に出かけた。



 ◆



 食料庫は食堂の裏側にあった。


 トルネは、鍵を開け、こっそりと中に入る。


「おじゃましまーす…」


 中は薄暗くて、不気味だった。

 野菜が詰まった袋や、樽が山済みになっており、ふんわり穀物の香りがした。


「これじゃ、ねずみが寄って来るのも無理ないかな…」


 すると突然、首にかけていたお守りが震えて、カチカチと音を立て始める

 このお守りは、この辺りでは魔除けとして一般的に知られているもので、牛や馬の骨で作ることができる。

 モンスターが近くにいると、音を鳴らせてそれを知らせてくれるのだ。


「何かいるな…、ねずみじゃない…」


 トルネは、ナイフを抜く。


 ゴブリン…?

 それにしちゃ、臭くない。

 食料庫の中も、全然荒らされていない。

 …なんにしても、とりあえず調べるだけ調べたら、

 騎士様に報告するしかないな。


 トルネはゆっくりと、地下室に降りていく。


 地下室では、穴の開いた袋から、麦が溢れていた。

 その穴を、トルネは注意深く観察する。

 穴はふちが黒く焦げていた。あきらかに何かに焼かれた跡だ。


「火トカゲ、か…?」


 しかし、こんな周りに火も、炭もないような場所に?

 火トカゲは、焼け残った炭だとか、灰だとかを食べるモンスターだ。

 近くに厨房があるから、寄ってきたのだろうか?


【…立ち去れ!!】


「うわっと?!」


 突然、頭の中に声が鳴り響く。

 トルネは驚いて、ナイフを落とす。


 カラカラカラ…!


 転がっていったナイフの先を見ると、二つの点が怪しく光っている。

 暗い地下室の奥に何かいる。


【立ち去れ!人間!この場所は、我が支配した…!】


 し、喋ってる?!

 言葉が話せるモンスター?!

 トルネは混乱する頭を、必死に落ち着かせる。


 たしか…、たしか永く生きているモンスターは、種族によっては高い知能と魔力を有することがあると、本で読んだことがあるぞ。

 しかし、人語を理解して、頭に直接語りかけて来るモンスターなんて聞いたことがない。

 もしそうだとすれば、とてもオレの手に負えるモンスターじゃない。

 なんとか隙を見て逃げ出さないと…!


【この場所は、未来永劫(みらいえいごう)語り継がれることになる…!地獄の入り口としてな…!】


 …あん?


 なんだかおかしな言い草である。

 この場所に巣でも作る気だろうか?騎士学校の倉庫に?

 いくらなんでも場所が悪すぎるだろう。


 言葉が通じるのなら…。


「…ここに巣でも作るの?なんでまた、こんなところに?」


 トルネは、恐る恐るモンスターに声をかける。


【知れたことよ、この場所には食料が山ほどある…!雨風をしのぐ屋根もある!我が居城にふさわしい】


 …地獄の入り口にしては、ずいぶんと安易な城である。

 だいたい、こんな所にモンスターが巣を作っていると分かれば、当然、倉庫として利用できなくなる。

 食料は運ばれてこなくなり、あっという間に、食料は尽きてしまう。

 そんなこと、少し考えればわかりそうなものだが…。


【しかし、野菜ばっかりというのがどうもな…、新鮮な人の生き血とは言わんが、せめて牛…、いや羊肉くらいは…】


 モンスターの言動に違和感を感じ、トルネが一歩モンスターに近づく。


【ち、近くな!!それ以上近寄ると、消し炭にするがお…!】


 がお?

 なんだか可愛らしい喋り方である。

 あきらかに焦っている様子の声の主に、トルネはずんずん近づいていく。

 

 焦っている相手は追い込む、弱っている相手にはつけ込むのがトルネの信条だった。


「が、がお!!み、見るんじゃない!!」


「なんだ、コイツ…」


 そこにいたのは、小さくて、なんだかよくわからないモノだった。


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