一年B組レナード先生
入学式の翌日。
そして、授業開始の初日。
イリスたちの教室に入ってきたのはレナードだった。
生徒たちはギョッとした。
「…出席を取りまーす」
ま、まさか、この人がクラスの担任の先生なの…?!
そんな、よりによって?!
終わった…!神は私たちを見放した…!
生徒たちは絶望し、神を呪った。
何人かの生徒のすすり泣く声がした。
「…そんな、あからさまに絶望してんじゃねーよ…。
別にとって食やしねーよ…」
生徒たちの反応に、レナードは少々傷ついたようだった。
「ハァ…、俺だって担任なんかやりたかねーよ。
ただでさえ、あのクソジジイに教員代表なんてめんどくせーこと押し付けられてんのに…」
レナードは頭をかく。
レナードはまたしても不機嫌だった。
この先生は、機嫌が良いことがあるのだろうか?
彼が鼻歌を歌いながらスキップしている様子が、生徒たちにはどうしても思い浮かばなかった。
「ただ言っとくが、俺のせいじゃねーぞ。
このクラスには今年の一年の中のクソ問題児を、全部集めているんだからな…」
レナードはイリスを見た。
イリス、ナナ、マルコは同じクラスに集まっていた。
その他にも、癖のありそうな生徒が何人か。
「どうやらこの学校の職員で、お前らを手に負えるのは俺だけらしい…。
はぁ…、まったく、どいつもこいつも役立たずばっかりだ」
もしかして苦労性なのだろうか…。
生徒たちは少しだけレナードに親近感が湧いた。
「あー…、出席はもういいな、全員いるだろ…。
来てないやつは退学だ」
ひどい!
親近感は消え失せた。
「あー…、今度ある一年生の実技大会のことだが、少々、例年とルールが変わった。
プリントを張り出しておくので、各自で確認するように。
それと…」
イリスは、ギルモアがルールを変えてくれたのだと思った。
さすがお祖父様、昨日の今日で、仕事が早い。
「おいお前ら…、本意でないとはいえ、俺が担任になったからには、だ。
もし実技大会でみっともない試合をしてみろ…」
ゴゴゴ、と音が聞こえ、その場の空気がぐにゃりと曲がった気がした。
さすが王国最強の騎士先生、間近で感じる迫力と殺気が人間のそれじゃない。
「殺すぞ…」
生徒たちは震え上がった。
何人かは漏らした。
「それから地獄の特訓、スペシャルメニューだ…」
こ、殺すのに?!殺すのにですか?!!
生徒たちは心の中で思ったが、とても聞けなかった。
「?殺した後にですか?」
イリスが手を挙げて聞いた。
き、聞きやがったーー!!
あまりにも空気が読めていないイリスの発言に、周りがビビる。
「安心しろ…、死んだ後に蘇らせることのできる魔術師なら、何人か知ってる」
「うーん、なるほど」
な、なるほどじゃねえええええ!!!
レナードの本気さと、自分たちの命の軽さに気づき始めた生徒たちだった。